Googleの共同創業者Sergey BrinとLarry Pageは、2005年12月にそれぞれ1億6000万ドル以上に相当する自社株を売却した。
この金額は、一般の人々にとっては宝くじで1等を当てたような大金だ。しかし、数十億ドル相当のGoogle株を保有する2人は、過去1年あまりの間に毎月このような売却を続けてきている。
Thomson Financialの見積もりによると、Googleが2004年8月に株式公開を果たして以来、Brinはおよそ650万株を売却し、16億8000万ドルを手にした一方、Pageも約580万株を売却し、14億ドルを手にしたという。さらに、株式公開前にGoogleに加わっていた現CEOのEric Schmidtも、210万株以上を売却し、5億200万ドルを超える金を手に入れている。
無論、急成長を続けるハイテク企業の経営陣が自社の株式公開後に持ち株を処分して巨額の富を手に入れるというのは、とくに目新しい話ではない。MicrosoftのBill Gatesが世界一の大金持ちになったのは、手取りの給料が高かったからではない。また、OracleのLarry Ellisonも自家用ヨットで世界のあちこちに出かけているが、その費用を確定拠出型年金から得た資金でまかなっているわけではない。
それでも、Googleの経営陣が保有株式を売却するペースの速さや、その売却で手にした目の飛び出るような金額に対して、一部のコーポレートガバナンスの専門家は眉をひそめている。「経営者が自社株を売却すれば、それは自社に投資するよりも有利な運用方法が他にあることを認めることになる」と、デラウェア大学のWeinberg Center for Corporate Governanceでディレクターを務めるCharles Elsonは述べている。「企業のトップが大量の自社株を売却することは、他の株主に対して特に強力なメッセージを送ることにはならないと思う。私は経営者の自社株売却を好ましいこととは思わない」(Elson)
同様の意見を持つ者はほかにもいたが、Elsonは特に批判的だった。それに対し、Wall Streetの株式アナリストらは、17カ月の間に株価が400%近くも上昇し、Googleに早くから投資していた人々が十分な見返りを得たという事実に満足している。
Piper JaffrayアナリストのSafa Rashtchyは、われわれの問い合わせに答えた電子メールのなかで、「企業関係者による自社株売却が、株価に肯定的な影響をもたらすことはなく、ときにはそれが危険信号となる場合さえある」と述べている。「Google経営陣の自社株売却については、それ自体が大問題になるとは思えないが、確かに金額が桁外れに大きいように思えるし、いくぶん気がかりな部分もある」(Rashtchy)
Rashtchyがこの件をあまり心配していないことは明らかだ。同氏は数週間前に、Google株式の上限予想をそれまでの445ドルから600ドルに引き上げている。
売却はとうの昔に計画済み なぜ、それほどのんきに構えていられるのか。考えられる答えの1つは、Google経営陣が何か不可解なことをしたり、自分たちの利害と他の株主の利害を切り離したりしていると考える理由がいまのところはない、というものだ。彼らはすでに途轍もない額の金を儲けており、Googleがこれまでのようなペースで成長を続ければ、さらに多くの金を手にすることになる。
実は、Googleの経営陣は、同社が株式公開する前から、株式売却に関する計画を注意深く練っていた。株価の下落を予想した企業の幹部が、実際に下落する直前に売り抜けた場合はインサイダー取引として非難されるが、Google経営陣の場合はそれとは事情が異なる。彼らの株式売却は、はるか昔に決定されていた。彼らはあるスケジュールに沿って売却を進めているが、このスケジュールでは、特定の数の株式を一定の期間にわたって売却するよう予め調整されている。
「10b5-1」と呼ばれるこのプランを使えば、経営者は一定の間隔で自社株を売却し、それが株価の変動に対応したものには見えないようにすることができる。Google経営陣は2004年にこのプランを採用すると発表したが、BrinとPageが売却するのはそれぞれ全体の20%以下で、またSchmidtの場合は15%強だった。つまり、この売却プランの完了時点では、2人の創業者は当初の持ち株の80%以上を、Schmidtは85%弱を持ち続けることになる。1月9日時点でBrinはいまだに3240万株を直接/間接的に保有していたことから、株式公開時に保有していた株式の約17%を売却した計算になる。Pageの保有株式数も同時点で3290万株となっており、全体の14.5%を手放したことがわかる。さらに、Schmidtが直接/間接的、さらに有限パートナーシップや信託を通じて保有する株式数は1270万株で、全体の14.5%をすでに売却している。
Googleの2人の創業者は、それぞれ1年に1ドルしかサラリーを受け取っていないが、同社の株価が急上昇したことで、米国で最も富裕な人々のリストの上位に名を連ねることになった。雑誌Forbesの推定では、BrinとPageの資産はそれぞれ110億ドル(2005年9月時点)で、同誌の長者番付で2人は第16位にランクインしていた。また、自分のサラリーをやはり1ドルにしたSchmidtは資産総額40億ドルで、52位に入っていた。なお、1位にランクインしたBill Gatesの資産総額は510億ドルだった。
Googleの幹部らは、この件に関して以下の声明を発表しただけだった。「Googleが株式公開したのは1年以上前のことだが、その時に上級幹部全員が10b5-1プランに加入することを求められた。Eric、Larry、Sergeyの3人が行った株式売却は、いづれもこのプランの単なる結果だ。彼らは当初保有していたGoogle株式の大部分をいまだに持ち続けている」
株式公開後に大手インターネット関連企業の幹部が株式売却で手にした金額を比べてみると、Google経営陣がこの17カ月間に手にした額が他社の幹部のそれをはるかに上回っていることがわかる。Thomson Financialによると、たとえばYahooを創業したJerry YangとDavid Filoは、1996年の株式公開後1年半にわたってまったく自社株を手放さなかったという。また同社の元CEO、Tim Koogleが売却した株式の数も30万株弱(1060万ドル相当)に過ぎなかった。
eBayでは創業者のPierre Omidyarが170万株の自社株を売却し、2億7400万ドルを手にしている。また、同社CEOのMeg Whitmanは90万株を売却し、1億3700万ドルを手に入れた。一方、Amazon.com創業者のJeff Bezosはわずか18万株(2300万ドル)しか手放していない。
しかし、Google経営陣がいまだに大量の自社株を持ち続けていることから、彼らの株式売却による悪影響の可能性は大幅に軽減されていると、コーポレートガバナンスの問題を研究するThe Corporate Libraryのシニアリサーチアソシエイト、Paul Hodgsonは述べている。
「Googleの創業者が株式を売却することに異議を唱える者はいないと思う。彼らがすでにこれほど大量の自社株を持っているからだ」とHodgsonは述べ、さらに「彼らがGoogleに賭けていることはいまでも非常に明らかだ」と付け加えた。
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