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グーグルの理想と中国のウェブ検閲について

文:Charles Cooper(CNET News.com)
翻訳校正:坂和敏(編集部)
2006年02月14日 20時22分
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 Googleの経営陣が、中国政府と一悶着起こすことを避けるために、自らの主義を曲げて妥協路線を選択した。

 ウェブの検閲という厄介な問題をめぐって、世界で最も有名なあの検索会社が中国という抑圧的な国家にへつらうと聞いて、ショックを受けた人もいるに違いない。しかし、Larry PageとSergey Brinが理想論を捨てて現実的な策をとったことは一応良しとしよう。言論の自由を主張していても飯は食えないことを彼らは知っている。

 「このような結論になるとは思っていなかった。しかし、理想には遠く及ばないにしても、今までよりは多くの情報を中国の人たちに提供できるなら良いのではないかという結論に達した」と、World Economic Forumに出席したBrinはReutersの質問に対してそう答えていた。

 別の言い方をすると、たとえ半分でもあったほうが何もないよりはましであり、現実路線をとれば利益がでるということだ(ただし、自身の主義主張を貫いたとしたら、何が得られていたかという問いには彼は答えなかった)。中国側に譲歩しておけば、とりあえずは、中国の検索サイトを運営し続けることができる。もっとも、電子メール、チャット、ブログといったサービスは提供できない上、政治的影響のある言葉はブロックするという代償を払うことにはなるが。

 もちろん、この行為はGoogleという会社の理想からはかけ離れたものだ。PageとBrinは、株式公開に際して、「邪悪に身を落とさない」という威勢の良いモットーを掲げた。「なのに、この体たらくは何だ」と批判するのはやめておこう。そんな批判は誰にでもできる(なにせ、英語のヘルプセンターのページには、「コンテンツを検閲しないのが我々のポリシーである」と明記されているのだから)。今回の件は、単にGoogle1社が自ら掲げた青臭いモットーに従って行動できなかったというだけではない。もっと根が深いのは、どうしてシリコンバレー全体の視点でこの問題を考えることができないのかという点にある。

 残念だが、Google以外のコンピュータおよびインターネット関連企業が同じような立場に置かれたら、間違いなくどの企業もGoogleと同じような妥協策をとっただろう。こと中国に関しては、あきらめるにはあまりにも市場が大きすぎる。今では、言論の自由擁護者や人権活動家たちが、IT企業が中国と手を組んでも驚かなくなっている。

 つい最近も、Microsoftが歯に衣きぬ着せぬ辛口な論調で知られる中国人ジャーナリストのブログをMSN Spacesから削除したということがあったが、この時同社は各国の法律を遵守したに過ぎないと説明していた。また2005年には、中国のMSNポータルサイトで「freedom」や「democracy」といった単語を検閲の対象とすることに同意していた(この件については、Microsoft社員のRobert Scobleのブログで是非取り上げてもらいたいものだ)。

 忘れてはならないのは、中国人ジャーナリストのShi Taoが、国家機密を漏らしたとして懲役10年の判決を受けた事件だ。「国境なき記者団(Reporters Without Borders)」によると、中国当局はShi Taoのメールアカウントおよびコンピュータ宛に送信されるメッセージを監視していたが、その情報を提供したのはYahooだという。当時、Yahooの共同創業者Jerry Yangは次のように語っていた。「このような結果になったことは残念だが、法律には従うしかない」(Yang)

 中国側に妥協して検閲を受け入れるか、中国市場をあきらめるかという選択を迫られれば、当然、妥協策をとったほうが株主利益につながる。IT企業は星の数ほどあるが、中国市場を捨てて主義主張を貫く会社など1社もない。そんなことをしても、すぐ近くにいる競合他社が利益を持って行くだけだからだ。

 中国の検閲に対抗して第一歩を踏み出す企業は出てきそうもないことから、IT企業各社の間で業界のガイドラインを採択してはどうかという動きがある。この案はしばらく前から各企業の間で話題になっている。そしてTechNet やInformation Technology Association of Americaといった団体には、それを実現させるための業界内のコネクションがある。この案が実現すれば、人権や言論の自由に関してわれわれと全く相容れない考えを持つ中国政府に対して、毅然とした態度をとるきっかけにはなるだろう。

 中国のような抑圧的体制が、自国の利益になると見なす行動をとらないなどというおめでたい考えは捨てたほうがよい。とにかく、最初の一歩を踏み出さないと何も始まらない。

著者紹介
Charles Cooper
CNET News.com解説記事担当編集責任者

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