米最高裁判所は23日(米国時間)、携帯電子メールサービス「BlackBerry」を提供するResearch In Motion(RIM)に対して言い渡された特許侵害訴訟敗訴の判断に対する再審理申請を却下した。これにより、同サービスが広範囲で使用不能になるとの見通しが、また一歩現実に近づいた。
米最高裁は、連邦控訴裁判所の判決について再審理を求めるRIMの申請を棄却した。連邦控訴裁判所の判決は、米国におけるBlackBerryの営業およびサービス活動の大半の停止させる内容だった。
連邦巡回控訴裁判所は2004年、基幹部分が米国ではなくカナダにあるため、BlackBerryサービスはNTPの特許を侵害していない、とするRIMの主張を棄却した。同裁判所は、米国で唯一特許関連訴訟を扱う控訴裁判所だ。
RIMはこれを受け、米最高裁に審理申請を行い、同裁判所による審理の是非が決まるまで下級裁判所の判断延期を求める緊急要請書を提出した。しかし10月、同裁判所が要請を棄却してRIMは敗訴した。
RIMは、最高裁判所への上告が賭けであることを認識していたが、地方裁判所レベルで大規模なサービス停止を回避するチャンスは残っている、と重ねて強調していた。
NTPは2001年にRIMに対する特許侵害訴訟を起した。同社は勝訴し、2003年には米地裁判事のJames Spencerが、RIMによる米国でのBlackBerry端末の販売およびサービスの提供差し止めを認めた。Spencerは、RIMが上告中のため差し止めの判断を延期していた。
控訴裁判所は、この特許侵害の訴えを昨年8月に支持したものの、RIMに対して寛大な内容の判決を下した。
米最高裁が、審理要請と、米国特許法の治外法権の明確化の要請を棄却したことを受け、RIMは戦いの場をバージニア州の連邦地裁に移すことになる。同裁判所では、差し止め命令の審理準備がすでに整っているようだ。今回の裁判を審理する判事は、2月1日までに概略回答書を提出するよう両者に命令しており、審問も数週間以内に開かれて、今後下される差し止め命令の範囲が決まる見込みだ。
NTPは先週、差し止め命令の内容を少しでも明確にすべく、サービス中断まで30日の「猶予期間」を与えることをBlackBerryの顧客に提案した。同社はまた、連邦、州、および各市町村の政府機関に所属するBlackBerryユーザーや、緊急時の初動活動関係者についてはサービス利用の差し止めを免除することも提案した。
RIMは申し立てのなかで、政府関係者向けには提供を続け、一部の顧客に対してはサービスの提供を中断するというのは「不可能ではなくとも難しい」としている。
同社はこれまで数カ月にわたり、この訴訟の争点となっている複数の特許をさけるための「迂回策」が自社にはあると主張してきていた。ただし、この迂回策を実装するにはサーバや端末への新たなソフトウェアのインストールが必要なことから、差し止め命令が下された場合、この迂回策をとったとしても顧客に迷惑がかかるとも述べている。
ワシントンDCにある法律事務所Foley & Lardnerのパートナー、Stephen Maebiusは「RIMにとっては非常に不利な状況だ」と述べている。「しかし、一方でRIMは迂回策を講じる用意があるとしている。そこで問題になるのは、どれほど簡単にそれを実施に移せるかという点だ」(Maebius)
それとは別に、RIMは米特許商標庁に対して、NTPが保有する特許の有効性についても疑問を呈している。一部の専門家らはこの見直しプロセスが完了するまでには数年かかるとしている。しかし、特許商標庁が以前よりも素早い対応をみせるとの可能性を示すいくつかの手がかりもある。同庁は12月に出した「非最終的措置」で、RIMとの訴訟に関連する2つの特許について、NTPの主張をしりぞけた。仮に同庁が、RIMは問題になっているNTPの特許をまったく侵害していないとすることがあれば、この訴訟はさらに別の深刻な展開をみせ、それが新たな訴訟につながる可能性もある。
しかし、一部の金融アナリストらは、RIMのサービス停止は起こりそうにないとの見方を示している。彼らは、両社がこの訴訟の和解に合意することになると期待している。実際、RIMは昨年NTP側に4億5000万ドルを提示していたが、しかしこの提案はNTP側に退けられた。その後両社はさらに交渉を続けている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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