「退屈な車」しか作れないという病気。それは、米自動車業界が直面する多くの難題とは別に、GMやFord Motorが抱えるもう1つの問題でもある。
米国の自動車メーカーが作る車は、Cadillac、F-Seriesのトラック、Corvette、それにMustangを除くと、いささか面白みに欠けるものばかりだ。そのような彼らが、どうすれば面白い車を作ることができるのだろうか。馬力を上げればよいのか。いや、最近の車はどれも既に十分な馬力を備えている。しゃれたデザインを採用すればよいのだろうか。いや、それも違う。派手な車は、さまざまな規制や訴訟の対象となり、燃費も悪いため、既に過去のものになっている。必要なのはそうしたものではない。米国の自動車産業は、かつては技術革新の最先端に位置し、その地位を他国のメーカーに譲ることは決してなかった。エキサイティングで魅力的だったかつての米国車が持っていた輝きを取り戻すには、その地位を再び目指すしかない。
米国の自動車メーカーは、20世紀には新しい技術を次々にもたらしてくれていた。オートマチック車、エアコン、自動減光ハイビーム、半球形燃焼室、シーケンシャルテールランプ、WonderBarラジオ、そして、少なくとも試みは賞賛に値する、あの古くさいV-8-6-4エンジンなど。これらの新技術は、米自動車メーカーによってもたらされた。
しかし今日、「ハイテクカー」といえば、ほとんどの消費者が想像するのは日本車かドイツ車だろう。
米自動車産業はもう一度、技術革新の最先端という地位を取り戻す必要がある。自動車の潜在的な顧客層ともいえる人たちは、テクノロジー製品の購入に多くの時間とお金を費やしている。週末ともなれば、彼らが向かうのは家電量販店Best Buyだ。少し出てきた腹回りには、勲章を無数につけた昔の軍人よろしく携帯機器が身につけられている。彼らの口からは、「iPod」やデジタルカメラ、HD(高品位)テレビ、ブロードバンド接続、スマートフォン、「TiVo」など、ハイテク製品のスペックはスラスラと出てくるが、米国車のことを尋ねても、おそらく何割引で購入したかくらいしか出てこないだろう。
米自動車産業は、ハイテク好きのアメリカ人に合わせて再編成される必要がある。そして、そのためにはまず以下に挙げる最新技術(ちなみにこれらはすべて米国製)を真っ先に導入しなくてはならないが、これは十分に実現可能なことだ。
HD(高品位)ラジオ
2つの米国企業が合併して設立されたIbiquityが開発したHDラジオは、周波数はそのままで、既存のアナログラジオ放送をデジタル放送に変えてしてしまう。デジタル化されることで、FM放送はCDなみの、またAM放送はFMなみの音質になる。また、局ごとにサブチャンネルも提供される。ラジオは、米国ではテレビやインターネットよりも広く浸透しているメディアである。ラジオ業界は一丸となってHDラジオの普及を進めている。
交通情報提供機能付きカーナビ
ダッシュボード組み込み型のナビゲーションシステムが役に立っているとは思えない。しかし、リアルタイムで交通情報を提供してくれるとなれば、交通渋滞についての不満も少しは減るのではないだろうか。リアルタイムで交通情報を提供できるダッシュボード組み込み型ナビゲーションシステムを生産している自動車会社は数社しかない。FordとGMがすぐに動いて、データセンサー基盤技術の改良に注力すれば、先を越すことができるだろう。こうしたナビゲーションシステムについて知りたいなら、パイオニアの新型ナビゲーションシステム「AVIC Z-1」をチェックしてみるとよい。学習機能が付いている点も見逃せない。
優れた操縦性
私は、BMWの「iDrive」、Audiの「MMI」や「Infiniti Controller」を搭載した車を運転してきた。米国の自動車会社は、かつてコラム式のPRNDLを標準化したことがある。あのときと同じように、操縦用インターフェイスの不統一を解決できるはずだ。ちなみに、FordからスピンオフしたVisteonという会社が、パトカー向けの「TACNET」という車種で、面白い操縦用インターフェイスを提供している。一度チェックしてみて欲しい。
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