「e-Japan戦略は少なくともブロードバンドの接続環境については目標を達成した。しかし、その利活用においては依然低迷している」--12月12日、モバイルブロードバンド協会(MBA)が開催した公開ワークショップの基調講演で、総務省の情報通信政策局長の竹田義行氏は、わが国のブロードバンド環境整備をめぐる実績と今後の課題について語った。
竹田氏は、2001年に策定された国の政策「e-Japan戦略」を総括して、接続環境だけは目標を十分に達成したものの、実際の活用については進んでいないと指摘した。その一例としてFTTHが接続可能な世帯数を挙げ、「すでに1850万世帯でFTTHが接続可能になっているにもかかわらず、実際の契約世帯数はそれよりもはるかに少ない」と、インフラ整備に比べて、その活用が立ち遅れている実態を解説した。
「u-Japan経済波効果は120兆5000億円」と語った情報通信政策局長の竹田義行氏 |
さらに、2003年から追加策定された「e-Japan戦略II」についても解説した。e-Japan戦略の大目標「わが国が2005年までの5年間に世界最先端のIT国家となる」に続き、その実現のためのフェーズ2となるe-Japan戦略IIの「2006年以降も最先端であり続けることを目指す」というビジョンを改めて説明した。
また、2005年までのe-Japan戦略IIに次ぐ次期戦略の基盤として、総務省が推進する「u-Japan政策」を紹介した。「2010年にユビキタスネット社会の実現を目指す」という総務省の同政策が、2006年からの新しい国家IT戦略に対して貢献できるという考えを強調した。
続いてu-Japan政策パッケージの解説では、「2010年までに国民の100%がブロードバンドを利用可能にする」というインフラ面の整備と、同時に「2010年までに国民の80%がICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)を安心、安全に利用でき、なおかつ問題解決に役立つと評価できる社会にする」という、インフラ・利活用の両面における整備を政策の柱として挙げた。
その目標を実現するために、同氏は、「固定ブロードバンドのみならずワイヤレスブロードバンドの拡大を推進し、両者をシームレスに利用できるユビキタスネットワークの整備が不可欠」とした上で、2004年に同省が策定した電波政策ビジョンから遡って解説。電波政策ビジョンの「電波解放政策」によって、2005年の電波法改正が実現し、周波数帯割り当てや電波利用料金の制度改正によってワイヤレスブロードバンドインフラを拡大できる素地を整えることができたと同省の実績をアピールした。
最後に竹田氏は、2010年にユビキタスネット社会がもたらす経済波及効果見通しについても言及した。「u-Japanを推進することで、2010年にはユビキタスネット関連市場は87兆6000億円になり、関連する経済波及効果は合計で120兆5000億円になる」として、活力ある次世代日本のためにユビキタス社会の実現が不可欠として講演をしめくくった。
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