メディア革命の旗手らと手を組む既存の大手企業--米でメディア関連のイベント

John Borland(CNET News.com)2005年12月02日 12時32分
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 カリフォルニア州センチュリーシティー発--Disney-ABC Television Group社長のAnne Sweeneyは、おそらく実情よりも時代の風潮に合わせるかのような楽観的な言葉で講演の口火を切った。

 「わが社の素晴らしいところは、無秩序な状態が大好きなことだ」と、同氏はセンチュリーシティーの優雅なホテルの大宴会場に集まったIT、映画、音楽の業界幹部らを前にそう述べた。「われわれは人生に変化はつきものだと考えている」(Sweeney)

 同氏は「ロスト(Lost)」や「デスパレートな妻たち(Desperate Housewives)」をApple ComputerのビデオiPod向けに提供した張本人であるため、その口から出る「変化」の言葉には重みがある。音楽業界が過去5年間に歩んできた苦しみの多いデジタル化への道を、テレビ/映画業界も徐々にではあるが着実に進もうとしている。

 しかし、今週MGM本社のお膝元で開催されている「Digital Entertainment and Media Expo」カンファレンスの会場にいると、この5年間にすっかり状況が変わってしまったことが手に取るようにわかる。前回のイベントには、時代遅れの旧メディアから主導権を奪い取ろうと意気込む技術者らが中心に集まり、参加した数少ないレコードレーベルの幹部らはおびえた様子を見せていた。

 だが今では、無秩序や変化であろうとも、この技術サイクルの主導権は自分たちにある、と古参メディア側は感じている。同カンファレンスにはSweeneyのほかにも、各映画会社やレコードレーベル各社、そして各テレビ局から何人もの幹部が参加している。未来の市場を明確に把握していると断言する人はほとんどいなかったが、参加した新興企業や技術企業が、こうした大手メディアとの友好関係次第で自社の未来が決まると感じていることは確かだ。

 iSeeTVの社長Conrad Teranもそう感じる1人だ。この新興企業は、だれでもビデオコンテンツをオンラインで配信できるようにする技術を開発している。こうした企業はここ6カ月の間にますます多くなっている。Teranによると、このような代替チャネルがあれば、実験やアマチュアビデオの制作者が参加できるようになるほか、専門家も市販を狙う各種の番組を、ネットワーク局の支援を受けずに試験的に放映できるようになるという。

 同氏はまた、広告や広告主、あるいは資金の有無をすぐにクライアントに尋ねている。ラジオ局のClear Channelは、同氏にとって最初のクライアントの1つだが、同社では音声放送からビデオへの切り替えを進めている。

 「古参の大手企業は依然として強い影響力を持っている。彼らが舞台から去ることはない」(Teran)

 テレビやビデオの業界はいま、さまざまな部分で、音楽業界が2000〜2001年に直面したのと同様の難問に直面している。消費者がコンテンツのデジタルダウンロード版を試し始めており、また「アーリーアダプター」といわれる人々はすでに、コンテンツ企業が提供したいと考えているものをはるかに超えるサービスを期待している。

 映画やテレビ番組のファイル交換は広く行われている。だが、デジタル音楽ビジネスの黎明期のように、テレビや映画会社がオンラインコンテンツの提供に消極的であるため、MovielinkやCinemaNowといった正規ダウンロードサービスには満足できるものがない。

 AppleのiTunesは、正規ダウンロードサービスの将来の可能性を示しているが、十分な種類のコンテンツが揃っているわけではなく、品質もDVDに比べるとお粗末なものだ。

 2000年には、このような状況が消費者の反抗につながった。手早くコンテンツを入手できるNapsterなどのピアツーピア(P2P)が登場したことによって、デジタルコンテンツを望む鬱積した感情がネット上で爆発し、音楽業界が自らの未来に抱いていた幻想に大きな 打撃を与えた。

 しかし今回は事情が異なる。コンテンツ企業はここ5年間に裁判所からの支持を獲得している。レコードレーベル各社や各映画会社は、個人のファイル交換利用者に対して数千件の訴訟を起こしている。たとえファイル交換利用者らを直ちに阻止できなくても、著作権で保護されたコンテンツを無許可でダウンロードするのは違法というメッセージが保護者や潜在的なファイル交換利用者に明確に伝わっている。

 米最高裁がそうした判決を下したことで、P2Pネットワークは守勢に立たされており、大半の運営者はコンテンツ企業との和解を模索している。IT起業家は、メディア配信に革命を起こすはずだった多数のドット・コム企業が、レコード会社、映画会社、テレビネットワークの支持を得られず破綻したことを思い出すだろう。

 ただし、だからといって古参メディアのビジネスが好転するわけでもない。

 音楽ビジネスの転換がTower RecordsやSam GoodyなどのCD販売店のビジネスを苦しめたように、テレビや映画の配信に変化が予想されるため、頂点のハリウッドまでがその苦しみを感じつつある。

 DisneyがAppleのiTunesで人気テレビ番組を販売し始めたことに、広告主の各企業では不安を抱いている。こうしたものが増えれば、それだけ視聴者に到達する力が弱まると彼らは感じている。また、Disneyの会長Robert Igerは、映画の劇場公開とほぼ同時にDVDを発売したり、インターネットからオンディマンドで観られるようにすることに積極的だが、今週「 National Association of Theater Owners (NATO)」というイベントに集まった劇場主らは、そうした見通しに対して激しく抵抗している。

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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