中国携帯電話事情--面倒な漢字変換を助ける便利な機能とは?

包 偉(メイプルカンパニー)2005年12月01日 16時54分

 「華流ITマーケットウォッチ」では、中国・瀋陽に合弁会社を設立し、オフショア開発や中国市場調査を行うメイプルカンパニーの包偉(バオ・ウィ)が、中国のIT事情を紹介する。今回は、同国の携帯電話事情についてレポートする。

 中国では今、携帯電話がものすごい勢いで普及している。中国情報産業部の発表によれば、9月末時点の携帯電話契約件数は約3億8000万件に上ったという。また、中国報告在線の調べによると、携帯電話生産台数も2004年には2億3344万6000台に達し、同時期における世界の総生産台数6億6450万台のうちの約3分の1を占めた。ただし、端末の料金は決して安くない。国家統計局によると、2004年には中国都市部における労働者の平均年収が1万6024元(11月30日現在における中国元の対円レートで計算すると、23万7000円)だったのに対し、人気の高かったモトローラの「V220」という機種は1500元(約2万2000円)前後もした。それでも、3カ月ごとに機種を変更するユーザーも珍しくなく、なかには月収4000元(約5万9000円)のサラリーマンが、半年間貯金して5000元(約7万4000円)の携帯電話を購入したという話も聞く。さらに、21万元(約310万円)もする機種さえ売り出されている。このように、中国では携帯電話がステータスシンボルになっている。

中国の携帯電話市場 主なデータ

   加入者数:
     約3億8000万件(2005年9月)
中国情報産業部調べ

   生産台数:
     2億3344万6000台(2004年)
中国報告在線調べ

   都市部の労働者平均年収:
     1万6024元(約23万7000円)
中国国家統計局調べ

   人気機種の価格(モトローラ「V220」):
     1500元(約2万2000円)


   キャリアの市場シェア:
     チャイナモバイル(約6割強)
     チャイナユニコム(約4割弱)
新浪科技調べ

面倒な漢字変換は、「手書き入力」におまかせ

 中国でも日本と同様に携帯電話の多機能化が進んでいる。なかには、中国だからこそ広く受け入れられる特有の機能もある。その1つが「手書き入力」機能だ。市場調査会社のチャイナサーベイが2005年3月上旬に行ったオンラインアンケート調査では、回答者の約8%が、手書き入力機能付きの携帯電話を利用していると答えている。

左:NEC N600 右:レノボ G901

 手書き入力機能が便利なのは、短信(携帯電話同士でテキストを送受信するショートメッセージサービスのこと。利用者は、携帯電話番号を利用して相互に情報を送信し合う)を打つときだ。手書き入力機能の精度にも機種によってバラつきがあり、利用者はファッション性を重視するのか、あるいは実用性を重視するのかで、購入する端末を選り分けているようだ。例えば、市場には、正確な筆跡でないと文字を認識できないもののデザインがおしゃれな機種(NEC N600など)があったり、逆に、多少筆跡がきれいでなくても文字認識が可能な機種(科健K519)があったり、あるいは手書き文字の認識速度が速い機種(聯想-レノボ--G901)などがあったりして、それぞれが独自の特徴を売り込んでいる。

 通常、携帯電話に文字を入力する時には、日本語の仮名漢字変換に相当する「ピンイン入力」という機能を使うが、ピンイン入力を使うと、変換可能な漢字の候補があまりにたくさん出てきてしまって漢字を決定するまでのプロセスが面倒なのである。中国で手書き入力機能が受け入れられつつある背景には、こうした事情がある。

それでも、若者の多くは、指先で器用に文字をピンイン入力しているが、やはり高齢者となると手書き入力機能に頼る人が多いようだ。

携帯電話の購入方法

 中国では、SIM (加入者識別モジュール:Subscriber Identity Module)カードを差し込んで携帯電話を使用するのが主流である。SIMカードとは、携帯電話会社が発行するICカードのことで、ここには契約者の情報や電話番号などが記録されている。利用者は、SIMカードを差し替えることで複数の携帯電話端末を利用できるわけだ。

携帯利用者のニーズに合わせたキャリアの動き

 中国の移動体通信市場は2社が独占している。市場の1番手が中国移動(チャイナモバイル)。そして2番手が中国聯通(チャイナユニコム)だ。

 チャイナモバイルは携帯電話市場の6割以上に相当するシェアを有し、チャイナユニコムは4割弱のシェアを獲得している。オンラインメディア新浪科技が報じたところによると、2005年7月時点で、チャイナモバイルの総加入者数(GSMとGPRSを含む)は約2億3000万人、チャイナユニコムの総加入者数(GSMとCDMAを含む)は約1億2千万人だという。

 チャイナモバイルが提供するサービスの通信方式はGSMとGPRSである。同社が提供する携帯番号は135、136、137、138、139で始まる。一方のチャイナユニコムは通信方式がGSMとCDMA。CDMA方式については、ネットワーク設備や通話の音質などが大幅に向上し、通話可能エリアは大陸部の99.9%をカバーすることが可能だといわれている。GSM方式の利用者には130、131,CDMA方式の利用者には133で始まる電話番号が割り当てられる。ここまで読んで勘の鋭い方はお気付きかもしれないが、中国の携帯電話番号は「13」で始まる。

 この2大キャリアは、利用者を獲得するために、様々なコンテンツやサービスをユーザーに提供している。多様化する利用者ニーズに応えるため、2005年1月にはチャイナモバイルが上海において、携帯電話向けにテレビ番組の配信するサービスを始めた。ユーザー数は、サービス開始当初の2005年初め頃には500人だったが、今では10倍の5000人にまで達している。利用者が増えた理由としては、テレビ番組のコンテンツ量が増えていることが挙げられる。同サービスにコンテンツを提供している上海文広新聞伝媒集団(上海メディアグループ)の担当者によると、携帯電話テレビのコンテンツは当初6チャンネルだったが現在ではその数が12チャンネルにまで増え、内容もニュース、金融情報、娯楽、スポーツ、映画など多岐にわたっているという。

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