Web 2.0:次世代ソフトウェアのデザインパターンとビジネスモデル(前編) - (page 4)

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2. 集合知の利用

 Web 1.0時代に誕生し、Web 2.0時代にも繁栄を謳歌している大企業は、ウェ ブの力を使って集合知を利用するというWeb 2.0の原則を実践している。

  • ウェブの基盤はハイパーリンクである。ユーザーが追加した新しいコンテ ンツやサイトは、その他のユーザーに発見され、リンクを張られることによっ て、ウェブの構造に組み込まれる。脳のシナプスのように、これらのつながり は反復と刺激によって強化され、ウェブユーザー全体の活動に応じて、有機的 に成長していく。
  • インターネットの最初の目覚ましい成功例となったYahoo!は、カタログ、 あるいはリンクのディレクトリとして登場した。Yahoo!は何千人、さらには何 百万人ものウェブユーザーが作成したウェブページを集めていった。その後、 Yahoo!は事業を拡大し、さまざまなコンテンツを手がけるようになったが、ネ ットユーザー全体の活動にアクセスするためのポータルという役割は、今も同 社の本質的な価値となっている。
  • 検索分野におけるGoogleのブレークスルーは「PageRank」だった。 PageRankは文書の特徴だけでなく、ウェブのリンク構造を使って、よりよい検 索結果を導き出す手法である。この技術によって、Googleは瞬く間に、誰もが 認める検索市場のリーダーとなった。
  • eBayの商品はユーザー活動そのものだ。ウェブと同じように、eBayもユー ザー活動に応じて有機的に成長する。同社の役割は、ユーザーの活動のお膳立 てをすることにある。また、競合企業と比べた場合のeBayの強みは、買い手と 売り手がクリティカルマスに達していることにある。このため、同様のサービ スを提供する企業が現れても、そのサービスはeBayよりもはるかに見劣りがす ることになる。
  • AmazonはBarnesandnoble.comなどの競合企業と同じ製品を扱っている。ど の企業もベンダーから同じ製品情報、表紙画像、目次情報などを得ているが、 Amazonはユーザーを取り組む仕組みを構築した。Amazonには他社の何倍ものユ ーザーレビューが掲載されており、ほぼすべてのページで、あの手この手でユ ーザーの参加を促している。さらに重要なのは、同社が検索結果を改善するた めにユーザーの活動を利用していることだ。Barnesandnoble.comで検索すると、 通常は同社の製品か、スポンサーの製品が表示されるのに対し、Amazonでは常 に「最も人気のある」製品が表示されるようになっている。このデータは売上 だけでなく、その他の要素--Amazonに詳しい人々が製品周辺の「フロー」と呼 ぶものに基づいて、リアルタイムに算出される。他社の何倍ものユーザー参加 が行われていることを考えると、Amazonが売上でも競合他社を上回っているこ とは驚くに値しない。

 ウェブでは現在、この原則を理解し、さらに発展させている革新的な企業が 頭角を現しつつある。

  • オンライン百科事典の「Wikipedia」は、誰でも記事を投稿し、編集する ことができるという思いもよらないアイディアに基づいている。Wikipediaは 信頼に立脚した進歩的な実験であり、「目玉の数さえ十分あれば、どんなバグ も深刻ではない」というEric Raymondの格言(もともとはオープンソースソフ トウェアの文脈で語られたもの)をコンテンツ作成に適用している。 Wikipediaはすでにトップ100のウェブサイトに入っているが、多くの人がトッ プ10入りは時間の問題だと見ている。コンテンツ作成の世界では大きな変化が 起きているのだ!
  • 最近、大きな注目を集めている「del.icio.us」や「Flickr」のようなサ イトは、「folksonomy」(分類学を意味する「taxonomy」の対語)と呼ばれる 概念の先駆者である。Folksonomyとは、大勢のユーザーが自由なキーワード( 一般に「タグ」と呼ばれる)をデータに付加することによって、データをゆる やかに分類していく手法である。従来の厳密な分類方法と異なり、タグを利用 すれば、脳と同じような、複合的で重複した関連づけを行うことができる。た とえば、Flickrに投稿された子犬の写真に「子犬」と「かわいい」というタグ を付ければ、その他のユーザーはそのどちらでも、自分の思考に合った方のキ ーワードで、この写真を見つけることができる。
  • 「Cloudmark」のような協調的なスパムフィルタリング製品は、多数のメ ール利用者の判断をもとに、あるメールがスパムか、そうでないかを判定する。 判定の精度は、メッセージのみを分析する従来の方法よりも高い。
  • インターネット時代の成功企業は自社の製品を広告しない--これは真理で ある。こうした企業の製品は「バイラルマーケティング」、つまりユーザーの 口コミによって広まる。宣伝を広告だけに依存しているようなサイトまたは製 品は、Web 2.0ではないと判断して間違いないだろう。
  • オープンソースの協同的な開発手法は、多くのウェブインフラ(Linux、 Apache、MySQL、ほとんどのウェブサーバに含まれるPerl、PHP、Pythonのコー ドなど)でも採用されている。オープンソースそのものも、インターネットが 可能にした集合知の一例だ。「SourceForge.net」には10万件を超えるオープ ンソースソフトウェアプロジェクトが登録されている。このサイトには誰でも プロジェクトを追加することができ、誰でもコードをダウンロードして、それ を利用することができる。ユーザーが利用することによって、新しいプロジェ クトは周辺部から中心部に移動する。これはほぼ100%をバイラルマーケティ ングに依存した、有機的なソフトウェアの採用プロセスである。

教訓:Web 2.0時代には、ユーザーの貢献がもたらすネットワーク効果が市場 優位を獲得する鍵となる。

参加のアーキテクチャ

 いくつかのシステムは、最初からユーザーの参加を促すように設計されてい る。Dan Bricklinは論文「The Cornucopia of the Commons」の中で、大規模 なデータベースを構築する方法を3つ挙げた。ひとつはYahoo!に代表されるよ うに、スタッフを雇って、データベースを構築する方法である。2つ目は、こ の作業をボランティアにやってもらうもので、オープンソースコミュニティに ヒントを得ている。オープンソース版のYahooともいえるOpen Directory Projectは、その1例といえるだろう。そして第3の方法を提示したのが Napsterである。Napsterはダウンロードされたすべての楽曲が自動的に供給リ ストに加わるような仕組みを構築した。この結果、すべてのユーザーは自動的 に共有データベースの価値の向上に貢献することになった。このアプローチは その後のすべてのP2Pファイル共有サービスに受け継がれている。

 Web 2.0時代の重要な教訓のひとつは、ユーザーが価値を付加するというも のである。しかし、自分の時間を割いてまで、企業のアプリケーションの価値 を高めようというユーザーは少ない。そこで、Web 2.0企業はユーザーがア プリケーションを利用することによって、副次的にユーザーのデータを収集し、 アプリケーションの価値が高まる仕組みを構築した。前述の通り、Web 2. 0企業のシステムは、利用者が増えるほど、改善されるようになっている。

 Mitch Kaporはかつて、「アーキテクチャとは政治である」と述べた。参加 はNapsterの本質であり、基本構造の一部となっている。

 オープンソースソフトウェアの成功には、よくいわれるようなボランティア 精神よりも、参加のアーキテクチャが寄与しているのかもしれない。インター ネット、ワールドワイドウェブ、そしてLinux、Apache、Perlなどのオープン ソースソフトウェアには、このようなアーキテクチャが採用されており、個々 のユーザーが「利己的な」興味を追求することによって、自然と全体の価値も 高まるようになっている。これらのプロジェクトはみな、小さなコアと、明確 に定義された拡張メカニズムを持ち、仕様に沿ったものであれば、誰でもコン ポーネントを追加することができる。これはPerlの作者であるLarry Wallが「 タマネギ」になぞらえて説明した、外側の層を成長させていくアプローチだ。 別の言い方をすれば、これらの技術は「設計通り」に、ネットワーク効果を生 み出しているのである。

 これらのプロジェクトは、参加のアーキテクチャに適したものだったのかも しれない。しかし、Amazonが実証している通り、一貫した努力をもってすれば (そしてアソシエイトプログラムなどの経済的インセンティブを利用すれば)、 このアーキテクチャとはまったく縁がないように思われるシステムにも、参加 のアーキテクチャを適用することができる。

オライリー・ジャパン

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