携帯電話のGPS標準搭載は千載一遇のチャンス--ナビタイム

永井美智子(編集部)2005年10月18日 20時32分

 auの特徴的なサービスの1つに、歩行者の道案内をする「EZナビウォーク」がある。いわばカーナビゲーションシステムの人間版だが、GPSを利用して目的地までの道のりを音声付きで案内するこのサービスは、最大で月額315円と有料ながら、約50万人の利用者がいる。このシステムを提供しているのが、ナビタイムジャパンだ。同社は10月18日、東京都内で会見を開き、今後の事業戦略を説明した。

 ナビタイムは2000年に代表取締役社長を務める大西啓介氏によって創業されたベンチャー企業だ。経路検索エンジンを開発し、企業にライセンスしているほか、自社でも「NAVITIME」という名称で携帯電話向けの経路検索サービスを提供している。同社のエンジンを利用したサービスとしては、ヤフーの「Yahoo!ビジネストラベル」やJTBの「スパなび時刻表」などがある。なお、ナビタイムは検索エンジンを手がけており、地図や時刻表などのデータはパートナー企業から供給を受けている。

大西氏は「経路の信頼性がユーザーの継続利用につながる」と話す

 同社のサービスには、目的地などをユーザーが入力する経路探索サービスと、GPSによる位置情報を利用したナビシステムの2つがある。経路検索サービスについては、徒歩だけでなく電車や車などの移動も組み合わせた「トータルナビ」を提供できるのが強みだと大西氏は話す。たとえば六本木ヒルズからお台場まで移動する際に、車と電車のどちらで行ったほうが早いかということを、渋滞情報も踏まえた上で検索して案内できる。

 もう1つのGPSを利用したナビシステムは、同社が最も期待を寄せる成長分野だ。今後、GPSを搭載した携帯電話端末が世界中で増えることから、大きな需要があると見ている。警察に通報する際に携帯電話が多く使われるようになっており、各国政府は通報の位置特定のために、携帯電話にGPS機能を標準搭載するよう求めているのだ。

 例えば日本では、総務省が2007年4月以降に発売されるすべての第3世代携帯電話(3G)端末についてGPSの搭載を義務づける方針を掲げている。同様の動きは海外でも起きており、米国では2006年1月以降に発売される携帯電話の95%以上にGPSを搭載するよう連邦通信委員会(FCC)が求めている。欧州でも欧州委員会(EC)がGPS搭載の義務化を検討しているという。

 同社はすでに、KDDIのほか、NTTドコモ、中国のChina Unicom、タイのHutchにGPSを使ったナビシステムを提供している。大西氏によれば「通信事業者への提供としては、シェア100%だ」という。

 9月からはKDDI向けに、携帯電話をカーナビとして使える「EZ助手席ナビ」も提供している(関連記事)。月額利用料金は315円で、別途通信料がかかるが、「1カ月に週末2回ずつ使うとしても利用料金は2年間で約2万円だ」(大西氏)と低価格を武器に市場を開拓する考え。現在、カーナビ搭載率は約50%と言われており、特に若年層のカーナビを持っていない層に受け入れられるサービスと見ている。10月末からは同様のシステムをChina Unicomにも提供していく方針だ。

 米国ではまだ携帯電話でGPSを使った商用サービスをするためのAPIが端末メーカーから公開されていないためにサービスを開始できていないというが、大西氏は「2006年にもAPIは公開されると聞いている」として、早期の米国展開に意欲を見せる。

 「ナビエンジンで世界のデファクトスタンダードを目指す。世界中の人が、1つの携帯電話で世界中のどこでもナビシステムを利用できるようにしたい」(大西氏)

 今後は、カーナビシステムの企業が携帯電話に参入してくることも考えられるが、他社との差別化については、「早くからサービスを始めたことで、さまざまな要望がユーザーから寄せられている。ニーズに応えたサービスの開発という点では他社の先を行っている。また、ユーザーがそのナビシステムを使うかは正しいルートが検索されるかという信頼性の問題が重要になるので、ここに注力していく」(大西氏)とした。

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