北米大陸に野生動物を解き放て--米研究者が提言

Michael Kanellos(CNET News.com)2005年08月22日 13時00分

 コーネル大学の研究者らが、北米の平原地帯で失われた生態系のバランスを回復する方法を見つけたと述べている。その方法とは、野生動物を解き放つというものだ。

 同大学の大学院で生態学と進化生物学を専攻するJosh Donlonらは、この論文の中で、ライオンやゾウ、チーターのようなアフリカ原産の野生動物を北米大陸にある巨大な私有地に導入するプログラムを提案している。

 これらの野生動物は、およそ180万年前にはじまり約1万年に終わった更新世に、巨大生物が演じていた役割を埋めるものになるだろう。

 更新世には、絶滅したアメリカンチータ(Acinonyx trumani)がプロングホーンを餌にしていた可能性が高い。プロングホーンとは、捕食者がいない時代に繁栄していた足の速いレイヨウ(羚羊)の一種。更新世の北米大陸には、ほかにも野生馬、野生ロバ、フタコブラクダ、ライオン、アジア/アフリカ像などが生息していた。

 このプログラムにはいくらかの明らかな危険が伴うものの、同時に数多くのメリットが得られる可能性もある。たとえば、全世界の大部分の地域では、狩猟や文明化により大型動物がほぼ姿を消してしまったが、このプログラムが実現すれば、そうした動物の消滅に歯止めをかける効果が期待できる。

 「このアイデアについて説明する時間が10分しかなければ、われわれは皆から正気を逸していると思われるだろう」と、コーネル大学で生態学と進化生物学を教えるHarry Greene教授は述べる。「だが、われわれの話を1時間も聞くと、人々はこれまでそれほど多くの事柄を考えたことがなかったことに気付く。現在、人類は大型動物の生存に関して、アフリカという1つの大陸にすべての期待を託している」(Greene)

 また、捕食動物を野生に返すことが、環境のバランスをリセットすることに役立つ可能性もある。これまで、捕食動物の消滅が種の多様性を損なう変化につながった例は多い。たとえば、米国ではオオカミやクマが絶滅したために、ヘラジカが爆発的に増加した。そして、ヤナギの木を食料とするヘラジカの増加が、ビーバーの急激な現象につながったが、これは、ビーバーがヤナギの木を食料とするほか、それをつかってダムを作っているからだ。

 さらに、コーネルの研究者らはこれらの動物を放し飼いにすることで、いくつかの州では観光関連でかなりの数の雇用を創出できると説明している。

 同プロジェクトでは、ニューメキシコ州にある私有の牧場にBolson種のカメを解き放ち、この提案の有効性を実証したいと考えている。最大で45キログラム程度にもなるこのカメは、かつてアリゾナからニューメキシコ、テキサス、メキシコにかけての一体に多く生息していたが、現在ではメキシコ北部のごく狭い地域で生き残っているにすぎないという。

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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