ラスベガス発-- Cisco Systemsは、あるセキュリティ研究家がこれ以上同社のルータ用ソフトウェアをハッキングしないようにするための法的な措置を講じた。
米国時間27日に、CiscoとInternet Security Systems(ISS)は共同で、Michael Lynnおよび「Black Hat」セキュリティカンファレンスの主催者に対して一時差し止め命令を求める訴えを起こした。この動きは、Lynnがあるプレゼンテーションのなかで、Ciscoのルーターを乗っ取る方法をデモしたことを受けたもの。Lynnによると、この問題によりインターネットが麻痺する可能性があるという。
カリフォルニア州北部地区連邦地裁に提出されたこの訴状のなかで、両社は「LynnとBlack Hatに、CiscoとISSに帰属するプロプライエタリな情報をこれ以上公開させない」ようにすることを同裁判所に求めていると、Cisco広報担当のJohn Nohは述べている。
「われわれは、Lynnが今朝Black Hatで明らかにした情報は違法に入手されたものであり、われわれの知的所有権を侵害していると考えている」とNohは付け加えた。
Lynnは、自分の研究のためにCiscoのソフトウェアを逆コンパイルしたが、この行為が同社の権利侵害にあたるとNohは述べた。
CiscoとISSは、Lynnが同日午後に当地で開催中の「Black Hat」セキュリティカンファレンスで講演を行ってから何時間も経たないうちに、この訴えを起こした。ISSで研究者として働いていたMichael Lynnは、その職を投げ打って、同社が中止を決定したプレゼンテーションを行うことにしたと、この講演に集まった聴衆に語った。『The Holy Grail: Cisco IOS Shellcode and Remote Execution(聖杯:Cisco IOSのシェルコードとリモートからの実行)』と題するこの講演は、同会議の膨大な議事録からは削除され、空白のままになっていた。
Lynnはこの講演のなかで、CiscoのIOS(Internetwork Operating System)に存在するセキュリティ上の既知の脆弱性を突いた攻撃コードの実行方法についての概要を説明した。IOSは、インターネットのインフラを構成しているCisco製ルータ上で動作するソフトウェアで、IOSに対して広範な攻撃を展開した場合、インターネットを麻痺させることが可能になるとLynnは説明した。
Lynnが攻撃に利用した脆弱性そのものは、以前にCiscoに報告されていたもので、最新のIOSではすでに修正されていると、Black Hatに参加した専門家は語った。
Lynnが所属していたISSの研究チームは、このプレゼンテーションの中止を米国時間25日に決定していたと、ISSの最高技術責任者(CTO)、Chris Roulandは述べ、その理由として「準備不足」を挙げている。Lynnは27日午前にISSを辞め、このプレゼンテーションを強行したとRoulandは付け加えた。
なお、この講演の中止を希望したのは、ISSでもLynnでもなく、Ciscoだったと、Black Hatに近い情報筋は述べている。この情報筋の話では、Lynnは、プレゼンテーションの内容をVoIPセキュリティに関するものに変更することを迫られていたという。
しかし、ISSのRoulandは「VoIPに関するプレゼンテーションなど存在しない」とし、27日の講演は完全に中止する予定だったと述べた。
「この研究は非常に重要で、またその基礎となる作業も重要だ、しかし、われわれとしては、Ciscoと共同で影響の大きさを見極める必要がある」(Rouland)
この件に関するCiscoからのコメントは得られていない。同社は過去にIOSで発見された複数の脆弱性を修正するパッチを公開している。2004年、CiscoはIOSのソースコードの一部が盗まれたことを明らかにし、セキュリティ上のバグが多く発見されることに懸念を表していた。
27日のデモでは、インターネット越しのリモート攻撃ではなく、直接接続したルータに攻撃を加える様子が示された。「自らの使うルータを停止させることはできるがリモートにあるものはできない」(Rouland)
Lynnのプレゼンテーションを目にしたある参加者は、これに感銘を受けたという。「こんなことはまだできないとたくさんの人がいっているが、彼は実際にあの場でそれをやってみせた」とあるセキュリティ研究家のDarryl Taylorは言う。
ISSは現在Lynnに対する法的措置の検討を進めているとRoulandは語った。
Lynnはプレゼンテーションの終了後に、参加者の前で自分の経歴書を取り出し、現在求職中であることを明らかにした。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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