Cisco Systemsは今週、同社の製品にサービス拒否攻撃(DoS)を誘発する可能性のある複数の脆弱性が発見されたことを明らかにした。
Ciscoは米国時間12日、同社のIPテレフォニーネットワーク技術の中核的なコンポネントで、通話信号および通話ルーティングに用いられる「CallManager」ソフトウェアに欠陥が見つかったことを明らかにした。この脆弱性がハッカーに悪用されると、ネットワークに障害が起きるおそれがあるという。
Ciscoでは、この脆弱性を修正するパッチをすでに同社のウェブサイトで公開している。またInternet Security Systemsは、この攻撃を防ぐソフトウェアをリリースし、ユーザーがCiscoのパッチをインストールして試用するのを支援している。
今回発見された脆弱を悪用することで、攻撃者はCallManagerの重要なプロセスにおいて、メモリのオーバフローを引き起こすことができるという。その結果、DoS攻撃が誘発され、CallManagerサーバがシャットダウンされたり、再起動が必要になる。CallManagerサーバに問題が生じた場合、攻撃者が通話を転送したり盗聴したりできるようになり、さらにはCiscoのVoIP(Voice over Internet Protocol)製品を動かしているネットワークやマシンに対し、不正にアクセスすることが可能になる。
この脆弱性が存在しているのは、CallManager3.3およびそれ以前のバージョン、そして同4.0および4.1である。Ciscoの広報担当は、この脆弱性を悪用した攻撃の発生は、まだ報告されていないと述べている。
iDefense Labsのディレクター、Michael Suttonは、この脆弱性はネットワークの内側からでなければ悪用できないため、この問題の深刻度は「緊急」レベルとは言えないと説明している。
企業は、VoIP技術を利用することで、電子メールなどのデータ転送に使用しているインフラを使って音声データをやりとできるようになる。VoIPはここ数年、コスト削減や従業員の柔軟性の向上に効果があるとして人気を集めてきている。市場調査会社Gartnerの調べでは、2007年までに、北米で設置される新しい電話システムの97%がVoIPベースになるか、もしくは従来の電話回線とVoIP技術を組み合わせたものになるという。なおCiscoは、これまでに世界で約500万台のVoIP電話機を販売したとしている。
セキュリティ専門家らは、VoIPは容易に利用できるが、背後にある技術は非常に複雑で、しばしばセキュリティの問題が生じると指摘している。
Internet Security Systemsでアドバンスリサーチチームを率いるNeel Mehtaは、「VoIPソフトウェアはまだあまり成熟しておらず、ほかのテレフォニーシステムと比較すると安全性に問題がある」と述べている。「VoIPプロトコルの設計にも、懸念を抱かせるような問題が存在している。こうした弱点は、まだ実際にはハッカーに悪用されていない。しかし、VoIPの導入は急速に進んでおり、今後は攻撃者の格好の標的となっていくだろう」(Mehta)
Ciscoは5月にも、同社のIPテレフォニー製品をクラッシュさせるおそれのある脆弱性につて警告を発していた。この脆弱性は、Domain Name Server(DNS)プロトコルの動作するCiscoのIP電話に関連するものだった。DNSはドメインネームをIPアドレスに変換する作業を行う。DNSサーバはインターネット上の複数の箇所に配置され、この変換作業を行うほか、IPパケットを想定した相手に正しく送り届ける役目を果たしている。Ciscoはこの脆弱性が最初に報告された際に、それを修正するソフトウェアパッチを公開していた。VoIPネットワークは従来のデータネットワークに比べて、一般的にセキュリティ面が弱いと、Forrester ResearchアナリストのElizabeth Hurrellは述べ、その理由として音声データのトラフィックは遅延に敏感であることから、パケットの中身を精査する従来のファイヤウォールが使えない点を挙げている。電子メールの場合、パケットが遅れて到着してもとくに問題は生じないが、それに対して音声パケットの場合には、転送に遅延が生じると通話が途切れがちになるなど、許容できない問題が起こる。この問題を緩和するためには、一部のポートを開放したままにするといった手立てが考えられるが、それが原因でネットワークが攻撃にさらされる可能性も生じてしまう。
「VoIPには特有のセキュリティ対策が必要だが、そのことに気付いていない企業も多い」とHurrellは言う。「VoIPを導入する場合、企業はセキュリティについて別の考え方をする必要がある。従来のセキュリティ・ソリューションでは、ネットワークを十分に防御できない可能性が高い」(Hurrell)
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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