デジタルデバイドは本当になくなったのか

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 総括的な統計情報だけを見ていると、デジタルデバイドはなくなったと信じてしまうかもしれない。

 Pew Internet & American Life Projectが2005年3月に行った調査によると、米国の成人の67%がインターネットを利用しており、この割合は10代の若者では87%にもなるという。また、Henry J. Kaiser Family Foundationが2004年9月に発表した報告によると、8歳から18歳までのすべての子供のうち、96%が少なくとも1度はインターネットを使ったことがあり、しかも、この数字は人種別あるいは所得別にみてもほんの数パーセントしか違わないという。

 こうした数字を見ていると、テクノロジーの世界での持てる者と持たざる者の差を心配する必要はなくなったように思える。

 しかし、米国でのインターネットおよびテクノロジーの利用度について詳細に見てみると、まったく違った現実が見えてくる。たとえば、年収が1万5000ドル未満の世帯では、コンピュータを使って学校の宿題をやっている子供の割合は29%に過ぎない。対照的に、年収が7万5000ドルを超える世帯では、77%の子供がコンピュータを使って宿題をやっている。

 しかし、こうした所得ベースの数字でさえ、あまり現実を反映しているとは言えない。こうした数字は、現状のある側面を表しているに過ぎないからだ。インターネットやテクノロジーツールを使用している人の数だけを見て、質的な差を測ろうとするのは無理がある。それは、ドライバーの数を測るのに、運転席に座ったことがあるかどうかだけを尋ねるようなものだ。

 調べる必要のある本当の問題は、テクノロジーが、所得や人種の異なるさまざまなグループ間の不平等を拡大しているのかどうかという点だ。たとえば、エリートたちが新しいテクノロジーを次々に取り入れることで、そうしたテクノロジーに疎い人たち、使い方を知らない人たち、あるいは最新のテクノロジーを利用する経済的余裕のない人たちとの「知識格差」が広がっているのではないかといったことだ。

 実際、テクノロジーの変化が今以上に速くなると、高学歴、高所得で、テクノロジー専門用語を使いこなせる人たちのほうが有利というだけでなく、時間の経過とともにその格差はどんどん大きくなると考えるのが自然だろう。

 こうした格差は数量化できるだろうか。できないのである。とは言っても、24時間インターネットにブロードバンド接続できる人と、自宅にインターネット接続環境がなく、公立図書館で端末が空くのを待つ必要がある人とでは、生活の質に大きな差が出ることは調べるまでもない。

 情報化時代において、テクノロジーの専門知識に乏しくスキルもない人が、いつでもどこにいても、世界中のどこからでも必要な情報を引き出したり書き込んだりできる人と競争するのが非常に難しいことは容易に想像がつく。次世代の職業としてどのようなものが登場するのかは、商務省の報告を待たなくても分かる。新しい職業が創造されるまでには、インターネットのエリートたちがすでにその職についているからだ。

 では、この新しいデジタルデバイドにどのように対処すればよいだろうか。

 まずは、テクノロジーへのアクセスと利用に関して、量的ではなく質的な情報を収集することから始めよう。そうして初めて、知識格差とそれがもたらす不平等に対処する方法を考えることができる。Children's Partnershipが先ごろ発表した「Measuring Digital Opportunity for America's Children(米国の子供たちのデジタルテクノロジ利用度を測定する)」というレポートは、正しい方向への第一歩といえるだろう。

 第二に、そうして得られた質的な情報をもとに、すべての米国人が健全、平等、かつ持続可能な方法でテクノロジーを利用できるようにするためのロードマップを作成しよう。Community Technology Foundation of Californiaというカリフォルニア州のグループが、ちょうどそうしたロードマップを作成している最中だ。

 第三に、IT業界自体が、社会に役立つ形で、テクノロジーの範囲と利用を拡大するために全面的に協力する必要がある。たとえば、カリフォルニア州法では、現在提案されているSBC CommunicationsとAT&Tとの合併によって得られる利益の50%を州に還元することが規定されている。この合併が承認された場合、それによって得られる節約分を、テクノロジーロードマップに示されているデジタルデバイドに対処する真のプログラムを実現するための費用に充ててはどうだろうか。

 最後に、数量化するのは難しいとはいえ、デジタルデバイドのこうした側面は決して今に始まったものではないことを認識しよう。Martin Luther King Jr.が37年前に次のように語っている。「科学や技術の天才たちのおかげで、世界の人たちの距離は一挙に縮まり隣人同士になった。しかし、そこから真の友好関係を生み出すための道徳的な取り組みはまだ行われていない。われわれは、何とかしてそれを成し遂げる必要がある」

筆者略歴
Paul Lamb
コンサルタント、Community Technology Foundation of Californiaフェロー

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