Microsoftがより積極的にXMLを取り入れれば、顧客が他社製品に乗り替える可能性は逆に少なくなると、Paoliは予想している。これは、XMLベースのプログラムによって生成されたコンテンツを作成/保管/分析するためには、さらに高度なツールが必要になるためだという。また同氏は、Microsoftがこのような機能を提供するのに役立つ立場に自社を位置づけようとしていると考えている。
それでも、Officeと企業システムを統合しやすくするこの柔軟性とオープン性が、同時に競合製品の競争力を増すことになるのも事実だ。
だが、Markhamは、Microsoftがこの事実に気づいていないわけではないと述べている。同社は、一般に公開された標準に基づくファイル形式を導入することで、Wordと同等の機能性を備えた製品を開発するチャンスをライバル企業に与えていることを認識している。しかし、Microsoftでは、このような製品はそれほど簡単につくれないという点を当てにしていると、Markhamは指摘する。
実際、MicrosoftのXML採用は、ライバル企業に武器を与えるのではなく、彼らから武器を取り上げることにもなりかねない。
Burton Groupのアナリスト、Peter O'Kellyは、2006年後半にリリース予定のOffice 12で、XMLフォーマットが導入されれば、同社の競合企業が見込み客に対して、Microsoft製アプリケーションの不便さを売り込み文句に使うことができなくなると述べている。
「Microsoftがこの議論のハードルをあげたことは確かだ。以前は、彼らのファイル形式は互換性がなく、それについて説明した文書もあまりなかった。XML形式を採用すれば、技術的な面でMicrosoftのことを批判することはできなくなる」(O'Kelly)
加えて、Microsoftは、OfficeのXML形式への移行により、同社の製品に対する主な不満を解消することになると述べている。その不満とは、Officeを他のツールと統合できないようにすることで同社が顧客を囲い込んでいる、というものだ。
Microsoftにとってのメリットはそれにとどまらない。顧客は、Microsoftとのライセンス交渉の際に、これまでのようにオープンソースの代替製品を切り札として使うことができなくなるとO'Kellyは言う。
「多くの企業では、これらの代替製品をMicrosoftとの交渉材料に使ってきたが、officeへのXMLフォーマット導入でトーンダウンするだろう」とO'Kellyは述べる。「XMLの採用は、顧客だけでなく自社にとっても好都合なことが、Microsoftにはわかった」
Office 12のファイル形式に関するもう1つの重要な点は、XMLを採用することで新しいアプリケーションの需要が創り出される可能性があることだ。この動きにあやかろうとするサードパーティのソフトウェアベンダーにとって、これはまたとないチャンスだろう。
ForresterのMarkhamは、Microsoftの新しい技術を企業が取り入れると、それによって新しいソフトウェア分野に対する需要が生まれるかもしれないと語る。これには、文書やデータをXMLに変換したり、XMLからその他の形式に変換するためのツールを作成する企業や、より柔軟な文書へのアクセスによって出てくる標準規格への準拠に関わる問題を解決しようとする企業などが含まれる。
「オープンソース市場には、Microsoft製品に対応する製品や、それらの製品を使って作成された文書をサポートするための業界がすでに存在する。(MicrosoftのXML採用によって)この状況がさらに加速するだろう」(Markham)
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