高音質(High-Definition:HD)ラジオ放送の実現に向けた長旅は、2、3のバラマキから始まる。
このHDラジオ関連のビジネス展開を目論む大手ラジオ局やチップメーカーらが、まもなくHDラジオ推進キャンペーンを開始する。HDラジオとは、既存のアナログ放送と同じ周波数帯を利用してデジタル放送を提供する技術だ。
オーディオメーカーのBoston Acousticsらは、5月31日から台北で開催されるコンピュータ関連の展示会、台北国際電脳展「Computex Taipei 2005」でHDラジオを披露する。HDラジオは現在も400ドルで限定販売されているが、年内には卓上用HDラジオが150〜250ドル程度で発売される。
また、クルマのダッシュボードに取り付け可能なHDラジオも発売される。大手カーステレオメーカーのアルパインは8月に自動車用HDラジオを発売する予定だ。
各メーカーにHDラジオのライセンス供与を行なっているIbiquity Digitalの最高財務責任者(CFO)、Patrick Walshによると、自動車メーカーのBMWは2006年秋にHDラジオを搭載したモデルを発売するという。いずれはMP3プレイヤーや携帯電話にもHDラジオが組み込まれることになるだろう。
従来のラジオ放送では、電話を掛けてきた視聴者に景品を進呈するといった宣伝活動が行なわれているが、HDラジオ推進計画でも一部で同じような手法が取られることになりそうだ。Walshよると、National Public Radioに加盟するラジオ局は、今年秋に行なう加入者獲得キャンペーン中に、ラジオを無料で提供する可能性があるという。
各社がHDラジオを推進する背景には、新たな商機を生み出したいという思惑とともに、何とか生き残りたいという必死の思いもあると、Walshらは認めている。HDラジオでは、従来ラジオ局1社に割り当てられていた周波数帯を最高8社の独立したラジオ局で共同利用することが可能だ。その結果、各放送局は、関連番組を複数のチャンネルで提供することができようになる。たとえば、クラシック専門の放送局は室内楽やオペラにそれぞれ特化した放送を流すことができる。各社はこれをリスナーや広告主の増加につなげたいと考えている。
「マルチキャスティングは(HDラジオの)キラーアプリだ」と語るのは、ラジオ放送局Bonnevilleのサンフランシスコ局担当シニア・リージョナル・バイスプレジデント、Chuck Tweedleだ。これらの新しい放送局では、無料あるいは月額1ドルといった低料金で聴ける放送を提供しようとしているが、これが実現すれば、衛星ラジオサービスの競争力は低下することになる。
放送事業者にとって、HDラジオには、チャンネルを追加する場合にも従来のアナログ放送を終了する必要がないという利点もある。その結果、リスナーもHDラジオへの買い替えを強制されることはない。
米大手半導体メーカーのTexas Instrumentsもこの動きに乗り遅れまいと、HDラジオ向けのチップ販売を計画しているが、決して親切心からの行動ではなく、あくまで利益追求が目的だ。
米国の一般家庭の平均ラジオ保有台数は7台だが、従来型のラジオは窮地に立たされている。SiriusならびにXM Satelliteという2大衛星ラジオ局では、それぞれ加入者数が増加しており、たとえばXMは前四半期中に50万人以上も加入者数を増やしている。この結果、同社の加入者総数は年末までに550万人に達する見込みだ。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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