「企業に優しい国」を目指すフランス

Michael Kanellos(CNET News.com)2005年05月26日 21時53分

 カリフォルニア州レッドウッドシティ発--フランスが「事業活動が困難な国」というイメージの払拭に取り組んでいる。

 フランスは今でも欧州の経済大国の1つだが、他の国々からは「ほとんどの人間がスト中かあるいは昼食中で、事業活動が困難な国」と見られている。当地で2日間にわたって開催されている「French Tech Showcase」カンファレンスに出席した各国の政府関係者やハイテク企業幹部らは、同国にはそんなイメージがあるとの見方を示した。

 対仏投資庁長官兼対仏投資誘致担当大使のClara Gaymardは、「フランスは時代遅れで、非生産的で、(国民は)生活の質にこだわりすぎていると考えられている」とした上で、「しかし、科学やハイテク分野の資格や技術を有する20〜29歳の若者の割合は米国や英国を上回っている」と反論する。

 フランスは、自国の国際競争力を強化するため、過去2年間にわたり、多国籍企業によるフランス企業への投資や同国内での工場建設を容易にするための様々な改革に着手してきた。現在同国は、国際会議などの場でそれらの改革を必死にアピールしている。

 たとえば、新たに制定された法律によって、雇用者は悪名高い週35時間労働について労働者との交渉が可能になった。また、フランスに転勤になった外国企業の幹部らは、もはやフランスと母国の両方への所得税納税について悩む必要はなくなり、年金システムやビザシステムについても改革が行なわれた。

 売上の大半を研究開発費に当てている新興企業は8年間所得税の支払いが免除される。仏政府は2004年の初めから、合計85の経済改革法案を可決した。現在、21人の国際企業のCEOで構成される仏首相の諮問委員会は半定期的に会合を開いている。

 またフランスは、英語教育にも力を入れ始めている。フランスの大学では、インドや日本といった国々から学生を呼び寄せるため、英語の授業を開始した。さらに、一流大学で行なわれている全授業のおよそ3割は、フランス語が苦手な学生が受講している。

 「10年前は(フランスの大学で学ぶには)フランス語が話せる必要があったが、現在は全くそんなことはない」とGaymardは語る。

 Gaymardは、フランスは依然として世界の経済大国の1つだと指摘する。過去3年間の海外からの直接投資総額を見ても、フランスは米国、中国に次ぐ世界第3位に付けている。また同国は、世界第4位の輸出大国であり、世界の大企業100社のうち同国を本拠地とするところは10社もある。また、原子力発電所の開発を何十年も続けてきたことから、原油価格の影響を受けにくく、実際にイタリアやスペインへ電気の輸出をしているほどだ。

 技術関連の市場についても、フランス政府はナノテクノロジーやバイオテクノロジー、自動車、航空関連の各分野への投資額を増やす意向を示している。1960年代に当時の大統領Charles DeGaulleの肝いりで航空機開発が始められたが、「彼がいなければ、Airbusの成功物語は決して起こりえなかっただろう」とGaymardは語る。

 だが、現代のグローバルな市場でAirbusの成功物語を繰り返すことは容易なことではない。フランス企業は、数々の技術的な偉業を成し遂げた歴史を持つものの、こと営業に関しては決して大成功を収めたことがないと、Partech InternationalというベンチャーキャピタルのパートナーであるVincent Wormsは言う。また国内市場が比較的小さい点も不利な材料だ。

 「これらのハイテク企業にとっては、他社に買収されることが主なイグジットで、しかも買っていくのは米国や日本の企業というのが一般的だ」と、 INRIAという国立の研究機関で技術移転担当のバイスプレジデントを務めるLaurent Kottは指摘する。そうしたなかでも、Yahooに5億7900万ドルで買収されたKelkooは、最も有名な成功例だという。

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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