「ソニー子会社連動株式」という耳慣れない銘柄が東京株式市場で、大型連休を挟んで短期間に急騰をみせている。2005年4月26日の終値で1238円だった株価が、5営業日連続のストップ高などを含む買い一色の展開となり、5月12日には一時、3060円の高値をつけ、新規上場直後の2001年6月20日につけた上場来高値3050円を更新するなど異常な上昇ぶりをみせている。
株価が上昇するきっかけとなったのは、ソニーが4月26日に「東証に上場しているソニーコミュニケーションネットワーク(SCN)を対象とした子会社連動株式の上場を終了し、同社の普通株式の公開を検討する」と発表したことだ。
そもそも子会社連動株式とは、その価値が発行会社の特定の経済価値に連動するように設計された、普通株式とは内容の異なる種類株式(※)の1つだ。ソニー子会社連動株式の場合は、ソニーの100%子会社であるSCNの経済価値と連動するように設計されている。
ソニーは、SCNの経営権を100%保持しつつ、証券市場から機動的な資金調達を実施しようという狙いで、2001年6月に東証に日本初の試みとして子会社連動株式を上場した。しかし、当初の目論見に反して、子会社連動株式の内容が多くの投資家に理解されず、2005年1月の大発会には1000円の上場来安値まで売り込まれるなど、株価、出来高ともに長期低迷していた。そこで、ソニーは、SCNについて普通の子会社上場に切りかえることで、資本市場での資金調達の機動性をより高めることに踏み切った。
SCNの普通株上場が承認された場合は、従来の同連動株式は(1)現金による一斉消却、(2)ソニー株への一斉転換、(3)SCNの普通株交付による一斉消却――のいずれかの方法で終了することになるが、この終了方法をめぐって市場関係者のあいだに様々な思惑が発生して株価が短期間に急騰する大きな要因となっているようだ。
まず、(2)の場合は「ソニー株に一斉転換された場合、かなりの有利なプレミアムを付加した株数が割り当てられるのではないか」(中堅証券)との思惑が浮上している。
さらに、(3)のSCNの普通株交付による一斉消却が採用された場合について、外国証券のアナリストは「市場関係者の間では、いまのうちに子会社連動株式を手に入れておけば、新たにIPOしてくるSCNの新規公開株を抽選なしで入手できることになる。SCNはすでに東証マザーズに上場して会員制医療専門サイトなどで製薬会社の営業支援などを手がけるソネット・エムスリーの発行済み株式の75%(時価約760億円)を保有、さらに、同じく東証マザーズに上場してインターネット上におけるオークションやショッピングサイトの企画・運営などを手掛けるディー・エヌ・エーの発行済み株式の25%(時価約350億円)も保有している。この2社の保有株だけでもSCNの時価総額約900億円を大きく上回っている。もちろんこれにSCN自体の時価総額もプラスされるため、上場後の株価はかなりの高値が期待できそうだ。こうした思惑が先行して、子会社連動株式株価が急騰をみせているのではないか」としている。
もっとも、市場ではすでに「買うから上がる、上がるから買う」といったマネーゲーム的な様相が強まっていることも確かで、値動きの良さから短期間での値幅取りを狙った資金がかなり流入しており、株価の急上昇を裏付ける明確な根拠がなく思惑先行となっているだけに、今後の株価が乱高下する可能性は強い。
すでに米国では、子会社や特定の事業部門の業績に株価が連動すること狙ったトラッキング・ストックが1980年代の半ばから導入されており、すでに40銘柄程度が発行されている。資本関係は実際に分離しないものの、部門の独立性が高まり、会社分割や子会社の公開に類似した効果を狙えるものとして定着しつつある。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス