World Wide Web Consortium(W3C)は5月11日、Mobile Web Initiative(MWI)の発足を発表した。MWIは携帯電話などモバイル機器でのウェブアクセスに対し、使いやすさの向上を目指すグループで、W3Cの“アクティビティ”と同等の位置づけとなる。
この発表は、千葉県の幕張メッセで14日まで開催されている第14回国際World Wide Web会議(WWW2005)の基調講演で、W3Cディレクターでウェブの生みの親であるTim Berners-Lee氏が明らかにした。
講演の中でBerners-Lee氏は、携帯電話など、モバイル機器からのウェブアクセスが急激に伸びており、モバイル機器からのウェブ利用体験を向上させる取り組みが急務だと説いた。
「モバイル機器からのウェブアクセスは、あまりにも長い間、『二の次』的扱いを受けてきた」(Berners-Lee氏)
W3Cでは、これまでにもXHTML Basic、SVG Mobile Profile、SMIL Mobile Profileといったモバイルウェブ領域での標準化に取り組んできたが、こうした標準化はそれぞれ別のワーキンググループで管理されており、全体像の把握や相互連携が難しい部分があった。MWIは、これらの既存の活動を補完するものとなる(既存の活動は、引き続き従来通りのワーキンググループが管理する)。
W3Cディレクター Tim Berners-Lee氏 |
一方で、Open Mobile Alliance(OMA)や3GPPといったモバイル関連の標準化団体が複数あり、モバイル機器からのウェブアクセスに関する標準の統一が必要とされていた背景もあったと関係者は語っている。
W3Cは2004年8月にOMAとモバイル標準規格の技術情報を共有する覚え書きを交わしている。また、今回の発足に先立ち、昨年11月、バルセロナで開催されたW3CのワークショップでMWIの取り組みが検討されていた。
W3Cが現時点で明らかにしているMWIの活動は、「Best Practice」と「Device Description」の2つのワーキンググループだ。前者はモバイル機器で扱いやすいウェブコンテンツの制作指針や確認項目、実践例の策定を目指す。後者はウェブコンテンツと特定の機器との適合関係を示せるようモバイル機器の機器属性の規定を目指す。
MWIの発足では、Hewlett-PackardやVodafoneを筆頭に、France Telecom、MobileAware、Segala M Test、Volantisの6社が中心的役割を果たした。MWIが、W3Cのこれまでのアクティビティと異なるのは、これら6社の創設協賛会員が、MWIの方向性や新しい活動を提案できるMWI運営委員会の委員として参加できる立場にあることだ。
Berners-Lee氏は、MWIをモバイル先進国と言われる日本で発表することを意識していた様子で、講演でも腕時計型PHSなど、日本のモバイル事情を話題としてとりあげた。しかし、MWIに指針を与える創設協賛会員に、日本企業の名は1つも挙っていない。
「今日のモバイル機器でのウェブアクセスは、ユーザーにとってもコンテンツプロバイダにとっても問題が多いが、今後はモバイルウェブをパソコンからのウェブアクセスと同じくらいにシームレスかつシンプルで、信頼できるものにしていき、最終的には1つのウェブ技術としてまとめたい」(Berners-Lee氏)
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