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マルチタスクで人間の知力が低下する?--情報化時代のアイロニー - (page 2)

Alorie Gilbert(CNET News.com)2005年03月31日 10時00分
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--電子メール、ボイスメール、インスタントメッセージなどの技術が、こうした状況を悪化させていると言いましたね。情報化時代に、われわれの多くがADTに苦しむというのは皮肉なことではありませんか。

 その通りです。技術は素晴らしい賜物です。人間の進歩の背景には多くの場合、技術があります。しかし、技術の扱いには注意する必要があります。そうでないと、逆にわれわれを引きずり回してボロボロにすることもあり得るからです。1日中電子メールやボイスメールの応答に追われている人、重要な会議の最中なのにかかってきた携帯電話に出てしまう人、インターネットにはまって夜遅くまで起きている人などは、みな技術に振り回されていると言えます。本当は人間が主となり技術が従となる必要があるのですが、現在はこの関係が逆転しています。われわれは、活動を停止し思考するための時間をとっておく必要があります。

 そうでなければ、脳の生み出す最良の結果を得られなくなります。人間の脳が一番得意とするのは、何かを考えたり、分析したり、細かく調べたり、創造することです。ところが、単に刺激に反応していると、物事を深く考えることもなくなってしまうようになります。

--一部の人間は、マルチタスキング--つまり同時にいくつもの事柄をこなすのが他の人より得意なだけだ、というふうには考えられませんか。

 本当にマルチタスクになれる人間など1人もいません。そのように見える人の場合でも、実は1つの事柄に費やす時間が短くなっているだけの話です。たとえば、あっちのテレビとこっちのテレビの画面を眺めながら、しかも携帯電話で話しているような時には、ある対象から別の対象へと注意を移さなくてはなりません。人間の脳は本当の意味でのマルチタスクなどできません。同時に2つの事柄に注意を向けることは不可能です。ただ、2つの対象の間を行ったり来たりしているだけです。そして、結局はどちらにもきちんとした注意を向けていない、ということになってしまいます。

 世の中には「自分はマルチタスクを行える」という人もいますが、そういう人の場合は実は、そういう状態がとても刺激的だから結果的にうまく行っているに過ぎません。マルチタスクの状態では、アドレナリンが身体中を駆けめぐり、集中力が高まります。つまり、本当は普段より集中していて、何か刺激を受ける度毎にその対象に短時間だけ注意を傾けている・・・ただそれだけのことです。だから、何か1つの事柄に飽きることもありません。

--調和のとれた人間的な職場環境を積極的に実現しようとしている企業の例として、あなたはソフトウェアメーカーのSASを挙げています。SASには、1日の労働時間を7時間としたり、社内に保育所を設けるなどの制度もあるようです。興味深いのは、SASが非公開企業であり、ウォール街のことなど構わなくてもいいという点です。株式公開している企業の大半では、SASのような素晴らしい職場環境の実現は無理でしょうか。

 SASはそれでも、とても儲かっていますよ。業績も堅調です。SASの場合、四半期毎の目標達成にこだわる必要がありません。この点はADTの問題を理解するメタファーのようにも感じられます。つまり、この四半期のことしか考えずに仕事を続けていれば、長期的な戦略を持つことはとても難しくなるということです。また、業績が落ち込んだ場合に、それを乗り切るのも難しいです。四半期から四半期へと追われ続ける経営スタイルは、短期的には成功しても、それが長続きすることはありません。

--目まぐるしく何かに追い立てられるような職場環境に対して、多くの企業が反発していると思いますか。あるいは、この問題は個人で解決すべきものなのでしょうか。

 組織を動かす人たちはいずれこの問題を理解し、対策をとることになると思います。赤信号の状態になると、脳のなかで蒸気が噴き出し鐘や笛が音を立て始め、さらに仕事の生産性も下がり始めます。しかし、われわれはまだそこまでは行っていません。賢い企業は、そろそろこの問題に気付いていると思います。

--すぐに思い浮かぶ例はありますか。

 ニューヨークのある巨大ファンドの経営者と話をしていた時のことです。彼は、従業員に対し、1カ月のうち何日か「考える日」をつくるよう求めていると言いました。従業員はその日になると、職場を離れて、どこか別の場所に行き、ただひたすら考える、というのです。電子メールも携帯電話も持たず、連絡が取りたくても取れないようにするよう従業員に言っているそうです。これは非常に賢明な経営戦略だと思います。

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