あるオープンソースのプログラマが、先ごろドイツのハノーバーで開催されたCeBitトレードショーに脚を運び、MotorolaなどLinuxオペレーティングシステム(OS)を利用する13社に対して、同OSのライセンス条件に違反していると告げた。
プログラマのHarald Welteによると、これらのベンダーが自社の製品にLinuxを組み込んでいながら、そのソースコードをリリースしていないという。Linuxの利用条件を定めるGeneral Public License(GPL)ではソースコードの公開が求められている。同氏はCeBitの広い会場で13社のベンダーに異議申し立てを行おうとしたが、そのうち3社はこれを拒否したと、Welteは電子メールでのインタビューのなかで述べている。
CeBitで展示された製品のうち、同氏がGPL違反と考えている製品の多くは、ネットワーク関連機器だという。また同氏はこれまでの調査で、セットトップボックスやカーナビ、特殊用途のソフトウェアのなかにもGPLに違反しているものを見つけている。
GPLの条件遵守については、もともとGPLを起草したRichard Stallmanが運営する「Free Software Foundation」が監督にあたっている。しかし、GPL違反をもっと迅速に、公の場で解決したいと考えているWelteにはすでに立派な実績がある。
netfilter/iptablesというネットワークソフトウェアを開発し、これにGPLを適用したWelteは、仕事の時間の4分の1をGPL Violations Projectの運営に当てている。
このプロジェクトが「ワンマンショー」だというWelteは、自分の信念を貫くために根気強く闘っている。同氏は、これまで25件の問題を解決し、法廷でもSitecomに対する訴訟で2度勝ったことがあるという。
ソフトウェアビジネスの世界に、共有や協調といったどこか異質な概念を導入したオープンソースソフトウェアは、プロプライエタリなライセンスが主流のコンピュータ業界でなかなか受け入れられなかった。いまではLinuxやApache、Firefoxようなプロジェクトの成功によって、オープンソースソフトウェアはより身近なものになったものの、Welteはまだまだ啓蒙活動が必要だと考えている。
「究極の目標は、GPLがパブリックドメインでなく著作権ライセンスだという認識を高めていくことだ。ただし、GPLの場合はライセンス料を支払う代わりに、ソースコードを提供し、ユーザーにライセンス条件を引き継ぐ点が異なるが」(Welte)
幅広く利用されているこの法的枠組みは、現在見直しが進んでいる。GPLは誰でもプログラムを利用/修正/配布できると定めているが、同時にソフトウェアの配布者にはそのソースコードを提供することも求めている。
Welteによると、今回問題となった企業のなかには実際にソースコードをリリースしようとしながら、結局この要件を守れていないところもあるという。「最後にチェックしたのは3日前のことだが、少なくともその時点では、このソースコードは壊れているか、不完全か、あるいは最新のファームウェアと一致していなかった」(Welte)。ファームウェアとはネットワークカードやネットワーク機器などの製品に組み込まれたソフトウェアのこと。
Motorolaのケースについては、「WA840G」という無線ネットワークアクセスポイントがGPLの違反にあたるとWelteは述べている。
これに対し、Motorola広報担当のPaul Alfieriは、Welteの指摘に対する具体的な情報がないとした上で、同氏の指摘が正しいものであればMotorolaはこれに対応すると述べた。
このほか、Welteは Acerの無線ネットワーク製品「GW-300」と「WLAN-G-RU2」も問題視している。Acerにコメントを求めたが、すぐには応じられなかった。
Welteはソフトウェアをリバースエンジニアリングして、それがGPLを適用したものである証拠を見つけている。ソフトウェアが人間ではなくコンピュータ向けに書かれていることを考えると、これは簡単な作業ではない。
「リバースエンジニアリングにはとても長い時間がかかることもある。おそらく自分にとってはクロスワードパズルのようなものだと思う」(Welte)
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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