マーケティングや営業がシステム部門と緊密に連携
顧客情報の管理には、ITが不可欠だ。一般的には、コールセンターとそれに関連するCRMシステム、Webサイト、顧客分析ツールがある。
auの場合、通信料金の請求につながる課金シテムなどが必要だ。大山氏は「商品やサービスの提供を開始する際、営業やシステム部門と協力しないことはありません」と言う。言い換えれば、マーケティング、商品開発、営業、システムの各部門が密に連携しなければ、新商品や新サービスが提供できないことを表わす。
KDDI au事業企画本部マーケティング統括部ブランドマネジメントグループリーダー 大山淳子課長補佐 |
たとえば、同業他社が新サービスを開始した場合、営業部門としては1日も早く対応したいと考える。その際、課金等のシステムが絡むので、システム部門と協議する。仮に新サービスの提供が全社で合意された場合でも、「システムを対応させるまで1年かかる」では、他社に遅れをとってしまう。大山氏は「マーケティングの立場からすれば、新しいサービスについて社内でGOサインが出れば、最適なタイミングで始めたいと思います。ですが、システムが対応するには、どうしても時間やコストがかかることがあります」と打ち明ける。
とは言えauでは、これまでシステムがボトルネックとなり実現できなかったサービスはない。コストやスピードの問題も徐々に改善されているという。たとえば従来は、顧客データの統計分析に数時間かかっていたが、それが短縮されてきた。システム部門と利用部門の間で運用ルールを作ったことで、無駄な分析が減った。同時にシステム性能や構成を見直したため、結果としてスピードアップにつながったのだ。
すべての顧客接点を洗い出し対応力を向上させる
デザインに定評のあるauの携帯電話 |
auでは、これまでブランドマネジメントをしてこなかったわけではない。従来から各部門で、「お客様対応を向上しよう」とか、「商品デザインを磨こう」という動きはあった。ただ、それぞれが個別に動いており、au全体で統一されていなかった。
「インフォバーを発売した時、各方面から『auはブランドが上がった』と評価されました(写真参照)。しかし、ブランドは商品だけで築き上げるものではありません。たとえば、いくらデザインが良くても、肝心のネットワークがよく切れるようでは、お客様は満足しないでしょう。ブランドの向上には、(1)広告、(2)商品、(3)通信環境、(4)携帯電話専門ショップ店員、(5)社員、(6)Webサイトなど、すべての顧客接点を見直す必要があるのです」(大山氏)と説明する。
通常、ブランドと言えば(1)や(2)といった対策を思いつくが、その他の対策は見過ごされがちだ。auでは、(3)〜(6)も細大漏らさず、かつ同時にレベルアップを図っているというのだ。
たとえば(3)について、auショップでは「CSアワード」を実施し、顧客満足度が最も高かった販売店を表彰する。また、ショップスタッフの顧客対応を向上させるため、2004年末から「Smile! WIN」キャンペーンを展開。店員自身が自然な笑顔で対応することで、エンドユーザーが笑顔になることを狙っている。「Smile! WINは、笑顔がキーワードです。ショップスタッフが笑顔を作るには、自分に自信がないと無理です。それは商品知識だけでなく、お客様に対する真摯な気持ちが必要なのです」(大山氏)。
Webサイトを開設し社内向けにもブランディング
(4)の社内向けにも、ブランドマネジメントを進めている。まず、社員一人ひとりにauブランドについての意識調査を実施。それと平行して、(5)のauブランド専用Webサイトを開設した。ここでは、au各部門トップが考えるブランド力向上に対する取り組みに加え、「そもそもブランドとは何か?」や「auとしてのブランド活動とは?」について解説している。
大山氏は「『売れればブランドは上がる』という一側面だけで考える社員は意外と多いのです。そこで、ブランド力を向上させるために必要なことを浸透させる必要があったのです」とサイト開設の意義を話す。
auブランドのWebサイトはまだ緒についたばかりで、課題も多い。その1つがBBSだ。大山氏は、掲示板を設置したものの、まだ充分に活用されていないと言う。今後はさらに社内コミュニケーションを充実させ、当面は2006年に向けてauブランド価値を一段と向上させていく方針だ。
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