NTTは3月8日、敷設済みの光ファイバに1000波長を多重化する伝送実験に成功したことを明らかにした。波長間隔は6.25Ghz。伝送帯域は2.67Gビット/秒×1000波長で2.67Tビット/秒に達する。5年後には実用化を検討するフェーズに入る。
1000波長の多重化は政府が推進するe-Japanの重点項目である。今回の伝送実験に用いたネットワークは、独立行政法人情報通信研究機構(NICT)が運用する研究開発用ネットワーク「JGN II」である。京都府の関西文化学術研究都市(けいはんな都市)と大阪堂島間の往復126kmで伝送した。
NTT フォトニックトランスポートネットワーク研究部 光伝達処理研究グループリーダ 主幹研究員 工学博士 盛岡敏夫氏 |
波長多重化の背景には、ネットワークのトラフィックが急増しているという状況がある。基幹ネットワークにはすでに光ファイバを敷設しており、光ファイバにより多くの情報を流すための技術として、複数の波長を使って複数の信号を1本の光ファイバに多重化するWDM(Wavelength Division Multiplexing:波長分割多重)を研究中。多重化する波長を増やすことでより多くのデータを伝送できるようになる。
従来のWDMは、波長ごとに独立した半導体レーザーを使い、個々の波長間隔を他の波長に影響を与えないように精密に制御する方法を採っていた。このため、数100波長を超えるWDM伝送は難しかった。波長数が増えれば増えるだけ制御系統が増えるため、個々の波長の制御が難しくなっていくからだ。
今回の実験で使ったWDMのポイントの1つは、スーパーコンティニウム(SC)と呼ぶ多波長光源を採用した点である。SC光源の特徴は、単一の入力信号から等間隔に並んだ1000以上の波長を一括して出せる点である。SC光源を使うことで従来の10倍に相当する1000波長を多重化するとともに、波長と波長の時間間隔を従来の8倍に相当する6.25GHzにまで短縮した。
このほかに、SC光源による波長多重化を実現するための要因として、高密度の多波長を分離する仕組みと、電源制御などにより伝送路に発生する光のノイズを抑圧する仕組みを用意した。
今回の技術の詳細は、3月9日に米国カリフォルニア州アナハイムで開催する光通信国際会議(OFC:Optical Fiber Communication Conference and Exposition 2005)で発表する。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」