セキュリティソフトウェアメーカー各社は、Microsoftによるスパイウェア対策ツールの無償提供計画を当面の脅威と見なしておらず、またアナリストらは同社がセキュリティ市場で一大勢力となるまでにはまだ時間がかかると指摘している。
セキュリティ業界の大手各社は米国時間16日、MicrosoftがRSA Conference 2005で行った発表を受け、同社が各種の既存製品に対抗する技術を提供できるかどうかについて疑問を呈した。Symantec最高経営責任者(CEO)のJohn Thompsonは15日に、同社の製品はMicrosoftが投入するどのようなセキュリティソフトウェアも「圧倒」すると語ったが、他社でもこれと同じような反応を示している。
Microsoftは、スパイウェアなど各種の有害ソフトに対抗する便利なアプリケーションを素早く用意できるものの、同社がこの分野の経験を積むには何年もかかるという点で、Microsoftと新たに競合することになった各社の意見は一致している。
セキュリティソフトウェアメーカーMcAfeeの社長、Gene Hodgesは、「Microsoftが、この分野の経験豊富なベンダー各社と本当に競争できるようになるまでには、相当時間がかかるだろう」と語った。
しかし、調査会社Gartnerのアナリストらは、個人および法人向けの市場への参入など、Microsoftはセキュリティソフトウェアに対する包括的な取り組みに着手したばかりだと述べている。
GartnerアナリストのNeil MacDonaldは、今月はじめに発表した調査レポートのなかで、「Microsoftは自社のデスクトップ用ウイルス/スパイウェア対策製品を今年中に出荷するが、ただしこれは、5年以内にデスクトップとサーバの両OSに対応する包括的なホストベースのセキュリティプラットフォームを投入する、という同社が進める多角的な戦略の一部に過ぎない」と述べている。
Microsoftが、スパイウェアだけでなくセキュリティ市場のさまざまな分野に進出するなか、このような取り組みが一段と幅広い分野のセキュリティ企業や技術の脅威になる可能性があると専門家らは指摘する。
MacDonaldの試算では、Microsoftの動きによって、多くの既製製品の価格やウイルス対策ソフトウェア/サービスのライセンス更新コストが下がるため、競合するセキュリティソフトウェアメーカーに対する影響は非常に大きなものになるという。
McAfeeのHodgesは、スパイウェア対策製品市場におけるMicrosoftの潜在力を過小評価すべきではないが、McAfeeを含む競合各社は追い越すのが困難なほど優位な位置にいる、と語った。同氏はまた、すでに市場に製品を投入済みのベンダー間で非常に激しい競争が繰り広げられていることも指摘した。
「Microsoftが手強い競争相手になることは間違いない。しかし、強敵という点ではSymantecもそうだし、またネットワーク分野におけるCiscoもそうだ」とHodgesは述べ、「これ(RSAカンファレンス)はMicrosoftに対する『歓迎パーティ』といえる。しかし、実際のところ、大規模なインフラを持つ顧客に向けた製品は、現時点ではひとつもない」と指摘した。
「Microsoftもいずれは、どれだけ優れた製品やサービスを提供できるかで競争しなくてはならなくなる。その点ではどの競合他社とも変わらない」(Hodges)
競合メーカーのなかには、Microsoftの参入発表に対して、さらに攻撃的な反応を示したところもある。消費者が対応に苦慮しているスパイウェアやセキュリティ問題の多くは、もともとMicrosoftに責任がある、とこれらの企業は主張している。セキュリティ専門企業のWebroot Softwareで研究部門のバイスプレジデントを務めるRichard Stiennonは、RSAカンファレンスでMicrosoft会長のBill Gatesがスパイウェア対策ソフトを発表した際、たくさんの出席者が「目をまわした」と述べている。
「セキュリティ市場が生まれた責任は、突きつめるとMicrosoftにある。同社はこの市場を利用しようとしているのだから、自分たちの大きな失敗のひとつを解決する製品を無償で提供するというのは筋が通っている」とStiennonは述べ、さらに「それとは別に、タダでもらえるものは所詮その程度の中味しかない、という点も忘れてはならない。MicrosoftがGiant買収で手に入れた製品は中途半端なものだった・・・これからもっと経験を積むことになるだろう」と付け加えた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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