家庭用ゲーム機「PlayStation」の次期バージョンに搭載されるCellプロセッサの最新詳細情報が、ソニー、IBM、東芝のエンジニアによって、間もなく明らかにされる見込みである。この件に関して、同プロセッサに詳しいアナリストに話を聞いた。
Cellについての詳細は米国時間7日、サンフランシスコで開催中の「International Solid-State Circuits Conference」の会場で発表される予定だ。だがこれに先だって、米Microprocessor ReportのTom HalfhillがCellの特許やその他の詳細に関するドキュメントを入手し、調査している。Halfhillによると、同プロセッサには数々の新技術が搭載されているという。この新技術が、ゲーム機器から携帯電話まで、あらゆるデバイスに搭載されているコンピュータの処理能力を劇的に向上させると、同氏は述べる。
業界大手Intelなどはすでにデュアルコアチップの開発に着手しているが、Cellはその数歩先を行く製品で、各演算ユニットには自律性が備わっている。現行のマルチコアチップでは、1つのタスクを分割して各演算ユニットで実行するのが普通だ。しかしCellチップで、それぞれの演算ユニットが完全に別個の作業を独立して行うことができるのだ。
Halfhillは、「Cellチップは、自律コンピューティング機能を兼ね備えるだけでなく、分散コンピューティングを実現するものだ」と述べている。
Cellは、ネットワーク上で処理を分散するグリッドコンピューティングも実現してくれる。これは近年企業から注目を集めつつある技術で、ネットワークに接続された複数のコンピュータが、高い処理能力を要求されるタスクを分担して行うというものだ。「PlayStation 3」では、ネットワーク上の別のコンソールから使用されていない処理能力を借りて、例えばビデオのストリーミングなど負荷の大きいタスクを実行できるようになるかもしれない。
「Cellアーキテクチャは、より身近なグリッドコンピューティングを実現するだろう。処理能力の分配機能が、設計の前提となっているのだ。こうしたチップを搭載するマシンがネットワーク上に数台あれば、ネットワークを越えてタスクを分散できる」(Halfhill)
Halfhillによれば、Cellではチップ自体にセキュリティ対策が施されていて、特に著作権保護対象コンテンツを無許可で複製したり、配布したりすることが難しくなるという。こうした機能は通常、チップ上のソフトウェアを使って実現される。だがCellはセキュリティ機能をハードウェアレベルで実現し、メモリを安全と思われるアプリケーションタスクにだけ割り当てるといった新技術が提供されるのだ。こうすることで、保護されたコンテンツには、正規のアプリケーションしかアクセスできなくなる。
「大半の著作権侵害技術は、あるアプリケーションを利用し、本来のアプリケーションがアクセスするのと同じメモリ領域を参照することで成り立っている。ところがCellでは、これが不可能になる。本来のアプリケーションでしか、メモリにはアクセスできなくなるからだ」と、Halfhillは述べた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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