ヤフーの株価は、昨年9月末に1株を2株に分割する株式分割を実施して以降、目立った動きをみせていない。しかし、ここにきて機関投資家などのあいだで、ヤフーの株式を中長期投資対象の「資産株」として評価する流れが広がっているという。最近の同社の動きは、一見すると派手さはないものの、インターネットビジネスの旗手として着実な足固めを進めており、継続的に高い収益を確保できる体制作りが整いつつある。
外国証券のアナリストは「昨年は楽天、ライブドアといったところが、新球団への参入騒動などもあり集中的に話題を集めたが、ヤフーはその陰で着実に収益力を高めている。背景には、ここにきてヤフーの存在自体が一段と広い範囲の階層に浸透し、ひとつの媒体として確立しつつあることが大前提としてある。具体的には、昨年あたりからネット広告のクライアントとして、食品・飲料などの嗜好品や化粧品・トイレタリーのメーカーからの出稿量が増加しはじめているのだ」という。実はこうした業界は、テレビ媒体への広告出稿量が多く、非常に厳しい目で媒体の費用対効果の分析を続けている。このような業界からの出稿が目立ちはじめたことは、「検索サイトやネットオークションとは別に、独立した新媒体としてのヤフーの認知度が進み、ビジネスチャンスがさらに拡大することを意味する」としている。
やや話が横道にそれるが、昨年末のNHKテレビ「紅白歌合戦」の平均視聴率が第2部(午後9時〜11時45分)で39.3%と、初めて40%を下回ったことに対して、「NHKの度重なる不祥事が影響した」との報道もあるが、これは一面的で納得しがたい。実際には視聴者は、単純に面白くないから見なかっただけのことだろう。その理由は、「紅白歌合戦」という番組のコンセプト自体が、もはや手遅れなまでに陳腐化してしまったこと、また、テレビという媒体自体の陳腐化も進行しており、大晦日の当該時間帯にパソコンや携帯電話を視聴していた「ネット視聴率」が高かったのではないのかということなどが推測される。今後、ソフトバンクや楽天のプロ野球参入に伴い、様々なスポーツのネット中継が飛躍的に広まる可能性もある。興味に乏しい内容の番組を延々と垂れ流し的に送りつけられることに視聴者は耐えられなくなりつつあり、自分が本当に興味の持てる適切な情報を入手できる媒体だけが生き残ることになる。
準大手証券の試算によると、ヤフーの今後数年間の連結ベースの純利益は、年率30%程度で成長を続けるものと見込まれている。これに伴い、1株利益も1万5000円水準となり、株価を現在の50万円程度として試算すると、PERも30倍台の前半と従来の割高感は解消され、成長力を伴った「資産株」として評価される条件が整ってくるわけだ。また、もうひとつ注目したいのは、2006年4月の新卒社員の採用人数を、2005年4月入社予定人数の2倍に相当する300人に拡大することだ。これに途中採用予定の400人も加えると、2006年4月時点での従業員数は、2004年4月に比べて2倍強の2000人を超えることになる。
ヤフーは、2003年10月にジャスダックから東証1部に上場してから1年余りしか経過していないが、2004年末の時価総額はすでに3兆7130億円に達し、東証1部の時価総額ランキングで13位にランクされている。これは、ソニーの3兆6809億円(14位)、松下電器産業の3兆9886億円(12位)と完全に肩を並べている。そして、最近は年に2回ずつ1株を2株にする株式分割を実施しており、流動性が増して個人投資家の売買参加が十分可能になったことも、資産株としての条件が整いつつあるといえる。
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