元マッキンゼーコンサルタントが語るデルの拡販戦略 - (page 2)

Michael Kanellos (CNET News.com)2004年12月09日 10時00分

--消費者にAppleのiPodではなく、Dell Digital Jukeboxを選んでもらうためには何が必要なのでしょうか。Macではなく、Dell PCを選んでもらうためには、どんな変化が必要なのでしょうか。

 その答えは私にも分かりません。それに正直なところ、我々は音楽プレイヤー市場にあまり重点をおいていない。音楽プレイヤーは当社の基準に達していないからです。この市場は決して大きいとはいえません。中小企業にとっては大市場かもしれませんが、当社にとっては、今後も大市場となることはないでしょう。市場首位になりたいかといわれればもちろんですが、この市場に関する限り、私はApple Computerを手放しで賞賛します。Appleはすぐれた製品とすばらしい音楽サービスを作り上げました。

--Dellの家電製品を購入した人のうち、DellでPCを買った経験のある人はどのくらいいるのでしょうか。また、何割は新規顧客によるものなのでしょうか。

 この数字には我々も少々驚いています。家電市場に参入した当時、我々はDellの家電を買う人のほとんどは、過去に当社からPCを買った経験のある人だろうと予測していました。細かい数字は出せませんが、先日、音楽プレーヤーやテレビといった新分野に関する調査を実施したところ、こうした製品の購入者の52%は新規顧客であることが分かりました。まだ断定的なことはいえませんが、これらの顧客はかなり高い確率で、その後、DellのPCも購入しているようです。つまり、当社にとっては二重のうまみがあるのです。

--このような顧客は職場でDellのPCを使っていたのでしょうか。

 そうかもしれませんが、そこまでは分かりません。当社のデータベースから分かることは、これらの顧客が過去に、DellからPCを購入したことはないということです。

--この調査の結果は、新製品のマーケティング戦略、特に広告の出稿場所や内容に影響を与えていますか。

 当社の重要な広告媒体の1つに、新聞の日曜版の折り込み広告があります。

 当社にとって、折り込み広告は非常に効果の高い媒体です。最近は、広告の表紙にテレビや音楽プレーヤーを掲載するようになりました。半年前なら、表紙にはPCを載せていたでしょう。ところが、テレビを表紙に載せるようになってから、PCを表紙に載せていたころよりも多くのPCが売れるようになりました。テレビを売ることも重要ですが、当社としては、PCの売上を伸ばすことが重要です。

--テレビがPCの需要を掘り起こしたということですか。

 消費者の関心を引くことができたのです。Dellの折り込み広告を、人々が見慣れてきたのかもしれません。PCに縁遠かった人々の目を、テレビが引きつけたのです。

--Dellの最大の売りは、やはり価格ですか。

 我々はPC市場で大きな成功を収めました。その秘訣は、低価格PC市場でのシェアはかなり低いものの、ハイエンドPC市場では圧倒的なシェアを獲得したことにあります。IDCなどの第3者機関のデータによれば、小売店の主流となっている500ドル以下のPCの市場では、Dellのシェアは約3%にすぎません。しかし、1500ドルのPCの市場では50%から75%のシェアを持っています。

 つまり、当社がハイエンド家電市場で成功を収めつつあるのは当然なのです--同じ顧客を相手にしているのですから。また、PCに2000ドル以上をつぎ込む顧客の大半は、家電購入時にDellの製品も検討します。こうした人々はデジタル・ライフスタイルを最も早く取り入れる人々でもあります。

--テレビの価格設定に関して、「スイートスポット」はどのあたりにあるのでしょうか。

 実例を挙げましょう。30インチの液晶テレビは当社の大ヒット商品となりました。2999ドルで売り出したときもある程度の手応えはありましたが、価格を2499ドルに引き下げると、大きな反響がありました。そして先日、ついに2000ドルを切る製品を発売したところ、爆発的な反響を呼んでいます。

 この経験をもとに、プラズマテレビでは少し違う戦略を取りました。3499ドルのプラズマテレビは、ある意味で999ドルの液晶テレビに相当します。液晶テレビと同じ価格戦略を採用していたならば、プラズマテレビには4499ドルという値段をつけていたことでしょう。しかし、我々は「最初から1999ドル相当の価格で行こう」と考えました。プラズマテレビ市場を制するためには、何よりも価格が重要だと判断したのです。

--ところで、スパイウェア対策はどうなっていますか。

 スパイウェアはこの業界が直面している深刻な問題です。当社のサポートセンターにかかってくる電話のうち、スパイウェアに関するものは14カ月前は2%未満でしたが、現在は20%に達しています。

 サポートセンターに電話をかけてくる人々は、自分のPCがスパイウェアに感染していることに気づいていません。最悪の場合、OSを再インストールしなければならないこともあります。今後はPCの利用者を教育し、PCにスパイウェア対策を施したり、スパイウェア駆除ツールをインストールしたりすることの重要性を訴えていくつもりです。

 Dellのサイトではスパイウェア診断ツールを無料で配布しているほか、スパイウェア対策ツールを使わなければトラブルに巻き込まれる可能性があることを周知するようにしています。現在ではPC所有者の実に90%がスパイウェアに感染しています。

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