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カカクコムに見る、成功するハンズオン(育成型)投資の実例

永井美智子(CNET Japan編集部)2004年12月07日 10時00分
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セッション1-a
「ICP ハンズオン投資のケーススタディ(カカクコム)」

インターネット分野に特化したベンチャーキャピタリストとしてユニークな投資戦略を取るアイシーピー。資金を提供するだけではなく、取締役を派遣するなど経営に積極的に関与するハンズオン(育成型)投資の成功例として、アイシーピーから投資先のカカクコムの経営者に転じたカカクコム代表取締役社長兼CEOの穐田誉輝氏と、アイシーピー代表取締役社長の石部将生氏がハンズオン投資の特徴や成功の鍵を語った。モデレーターはグロービス・キャピタル・パートナーズ パートナーの仮屋薗聡一氏が務めた。

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ジャフコ、光通信を経てアイシーピー設立。一貫してベンチャー投資に関わる。ジャフコ在籍時の投資実績としては、パーク24、Peopleが株式を上場。アイシーピーにおいては、複数社の投資先取締役として、事業運営を支援。実績としては、サイバーコム(デジタル・アドバタイジング・コンソーシアムに売却 現アドマーケットプレース)、カカクコム、アソシエントテクノロジーなどがある。

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1969年生まれ。千葉県出身。青山学院大学経済学部卒業。1993年、ジャフコ入社。ベンチャー企業への投資・育成業務、市場調査業務を担当。1996年、ジャック入社。新設のダイレクトマーケティング部門の責任者に就任し、インターネット流通の仕組みを構築。1999年、アイシーピー設立。代表取締役就任。2000年、カカクコム取締役就任。2001年、同社代表取締役社長兼CEO就任。2001年、同社店頭上場。

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三和総合研究所でのコンサルティング、グロービスのベンチャーキャピタル事業設立を経て、1999年よりAGP(現:GCP)にてメディア、インターネットサービス、エンタープライズアプリケーション関連の投資を担当。慶應義塾大学法学部卒、米国ピッツバーグ経営大学院修士課程修了(MBA)。担当先企業として、ネットエイジ、リアルコム、フィスコ、GDH、ベンチャー・リンク コミュニケーションズ、ワークスアプリケーションズ、ビズシーク等。
同じ視点を共有できる経営者の存在が重要

仮屋薗:アイシーピーの投資判断基準はどういった点にあるのでしょう。

石部:同じ目線を共有できる経営者がいることが重要です。これまでの事例を見ても、「こうでなければならない」といった基準はありません。会社設立当初からお手伝いしている会社もありますし、カカクコムのようにある程度の規模になってから投資した企業もあります。ただ、自分たちが手伝うことで価値を高められるところという基準です。

穐田:私の場合は経営者を見て、この人を手伝いたいというところですね。それから、マーケットが大きいところがいいです。市場が小さいと競争が激しくなりますから、成長市場であることです。

仮屋薗:カカクコムの場合はどうでしたか。

穐田:カカクコムにはこれまで2回投資を行っています。最初のときは創業者の槙野光昭氏の魅力と、カカクコムという事業の可能性、この両方がすばらしいと感じました。2回目は2001年、槙野氏から経営を譲りたいという話を受けました。カカクコムが多くの人から愛されるサービスであること、価格あるものすべてを比較するというマーケットの大きさを見て投資を決めました。

仮屋薗:投資家から経営者になることへの躊躇などはありませんでしたか。

穐田:ベンチャーキャピタリストは一生やりたいと思っていましたが、自分のキャリアを考えたときに経営者としての経験がないことがネックだと感じていました。タイミングがちょうど良かったですね。

カカコクム買収は想定外

仮屋薗:ファンドとしての勝算はどの程度だったんでしょうか。

穐田:最初から買収しようという計画があったわけではありません。槙野氏がほかの企業に売却を前提に話を進めているという話が出てきたとき、他社に売るのはもったいないと思ったんです。上場を狙っていけばいいじゃないかということで、他の投資家を僕自身が最初探していたんです。しかしその時にちょうどネットバブルがはじけたこともあって、あまりいい値段をつけてくれるところがなかった。値段を下げるくらいなら、この値段で自分が買えば企業価値を上げる事が出来るという自信は100%ありました。

仮屋薗:アイシーピーが追加投資を行うかどうかを見極める基準はどこでしょう。また、どういったタイミングで追加投資を行うのでしょうか。

石部:投資先は全部で30社ほどありますが、このうち4社に追加投資を行っています。我々はかなり早い段階から売却整理を進めていまして、投資後1年以内に売却に動いたケースも結構あります。会社としてのストーリーをまず描いた上で、売却を進める形ですね。

穐田:1つは僕らの意思に関係なく売れた場合というのがあって、楽天やGMOなどの大手ベンチャー企業に買収されるパターンがあります。それから、経営者自身がこれ以上お金を預かっていても仕方ない、といってあきらめてしまうケースもあります。がんばっている企業に対して無理やり売却するというのはあり得ないですね。

仮屋薗:穐田さんは経営者という立場になられて、人を見る目というのは変わりましたか。

穐田:いえ、同じですね。11月19日にフォートラベルという会社の買収を発表しましたが、ここの代表の津田全泰氏がカカクコムの槙野氏とよく似ているんです。

 1つ目は、事業の到達点がはっきりしていることですね。カカクコムならば価格あるものすべてを比較していくんだというもの、フォートラベルは全ての旅行者のためのサイトを作っていくんだという気持ちがある。すごくシンプルで、目的が明快です。2つ目は第三者の協力を得るのがとてもうまい。ついお手伝いしたくなる愛すべきキャラクターだということ。3つ目はきちんとしたビジネスセンスがあって、資本効率を考えた上できちんと黒字を出していく。こういった点が似ています。

サービス業に競争優位性は存在しない

仮屋薗:カカクコムのビジネスモデルは、決して参入障壁は高くないですよね。市場は大きいけれども競争も激しい。その中で競争優位性はどこにあるのでしょう。

穐田:カカクコムに限らず、サービス業に競争優位性はないと思っています。その中で勝ち抜いていくのは経営そのものだと思います。

 根本的に、シンプルなものが一番強いと思っています。ぶれないですし、波及効果も大きいですから。それから変数が3つ以上ある場合は考えないようにしています。計算するだけもったいないので、やってしまおうとなる。やる前に思い描くよりもやってしまって気づくほうが早いですし、自分の身になりますから。

仮屋薗:ハンズオン投資の今後の戦略について聞かせてください。

石部:カカクコムの件で一番感じたことは、ハンズオン投資によって自分たちが会社を育ててきたことで、株を売りたくなくなってしまうということです。これからはファンドではなくて自己資本投資に変えていきます。

 ハンズオン投資については本当に厳選して、担当者1人につき1社程度に絞り込んでやっていこうと考えています。

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