マイクロソフトの本当の姿

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 マイクロソフトの製品開発はいつも出足が遅い。しかし、絶対的なお守りのごとく機能するこの戦略には何かがある。同社はこれまで何度も、最初は月並みだった製品を最終的には大ヒット商品に仕立て上げてきた。

 同社のこのやり方は今では芸術の域に達している。これはビジネスの手法なのだろうか。それとも単なる愚行なのだろうか。おそらくそのどちらでもあるというのが本当のところだろうが、それについては後で触れることにする。

 マイクロソフトは先ごろWindows Media Center の最新バージョンをリリースしたが、この製品にはデジタルエリートも一応の評価を与えている。Media Center OSの最初のバージョンの設計の悪さに比べると、今回のリリースは大変な進歩を遂げたといえる。それと同時に、このリリースはマイクロソフトという企業の仕事のやり方も示している。

 マイクロソフトはこれまで、ある企業イメージを慎重に築き上げてきた。それは、同社が思考能力の高さと革新的な技術開発力の点でライバル各社を上回っているというものだ。確かに、同社は業界で最も優秀な人材を何人かは採用している。たとえば、Microsoft Researchが技術関連特許の数でIBMに次いで2位につけているのも、Rick Rashid の優れた手腕によるものだ。

 このように数字の上では素晴らしい結果を出している同社だが、その結果が果たして優れた設計や実装につながっているだろうか。この問いかけに対する答えは否だ。同社の業績を見ればそのことがわかる。実のところ、マイクロソフトの成功の秘訣は、優れた発想というよりも投入した労力の多さに負うところが大きい(ときには、Tony Soprano ばりに優秀なエンジニアに金を渡してひそかに激励したこともあるに違いない)。

 マイクロソフトがWindowsの開発にどれだけの時間をかけたかを思い出してみよう。同OSのバージョン1.0 はお粗末な代物で、同じ頃Digital Researchが発表したGEMグラフィカルユーザインタフェースと大して変わらなかった。Xerox PARCが開発したインタフェースの二番煎じであるとこきおろされたのも当然だった。数年後にリリースされたWindows 2.0も、やはり月並みな出来映えだった。そして、1990 年にリリースされたWindows 3.0で、ようやくメモリ管理の仕組みが改良され、286 および 386プロセッサの機能を活かせるようになった。それでも、Windowsが実際に使えるものになったのは 3.1からだというユーザも多い。

 Windows NTも同じような道をたどった。NTはメモリを大量に消費するOSだった。1993年当時はまだメモリが相当に高価だったことを思い出してほしい。マイクロソフトはその後まる3年を費やして、NTにWindows 95と同じようなインタフェースをかぶせ、管理機能をいくらか強化したが、NTが各企業のIT部門で普及したのは後者によるところが大きい。

 ブラウザの世界でも、Microsoftは(IEの)バージョン3になって、やっとNetscapeの製品に追いついた。この間に、同社が弱い者いじめを続けていたが、あまりに度が過ぎて仕舞いには司法省と事を構えることになってしまった、というつもりはない。

 数年前、私は当時マイクロソフトの重役だったPaul Maritzの逆鱗に触れてしまった。マイクロソフトはきちんと顧客の声に耳を傾け、足りない部分を補ったが、しかし決して顧客を「あっと言わせるような」技術を開発したことはない、とあるコラムに書いたからだ。これを読んだMaritzは怒って私に抗議してきた。

 しかし、私の書いたことはそれほど的はずれだっただろうか。

 Maritzは自尊心を傷つけられたかもしれないが、私にすれば、あれは褒め言葉のつもりだった。マイクロソフトは、顧客のフィードバックを組み込んで既存の製品を改良するという仕組みを完成させた。同社が業界トップになった理由も、これでうまく説明できる。そして、同社が打ち出そうとしているイメージ、つまり優れたツールを次々に生み出す最先端のIT企業がシアトル近郊にあるというのは単なる作り話に過ぎない。

 Xboxは、店頭に並んだその日から大ヒット商品だった。その一方で、Microsoft Bobの出来は本当にひどく、相当にこき下ろされたが、それも無理からぬことだった。ただし、私はどちらのケースにもあまり興味がない。この両極端ともいえる事例の中間に、マイクロソフトという会社の本質があると考えているからだ。

 Media Centerはまだ未完成の製品だが、これまでのところマイクロソフトは問題点をうまく処理してきている。Media Centerの累計売り上げ数は100万本を超えており、またパートナー企業の数も昨年の2番の約100社になったという。しかし、マイクロソフトがデジタルホーム市場を席巻するには、Appleをトップの座から引きずりおろす必要がある。そして、それを実現するのは無理ではないかと私は見ている。これについては、またいつか書くつもりだ。

筆者略歴
Charles Cooper
CNET News.com解説記事担当編集責任者

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