ソニーの第2四半期大幅営業増益も、見通し立たない本業の回復

 ソニーが10月28日に発表した2005年3月期の第2四半期(2004年7〜9月期・米国会計基準)の連結営業利益は、前年同期比31%増の434億円と大幅増益を達成した。しかし、株式市場関係者の多くからは、厳しい見方が投げかけられている。それは、今回の営業利益の大幅増益をけん引したのが、「スパイダーマン2」のヒットなどによる映画部門の好調と、子会社ソニーエリクソンでの携帯電話販売の拡大による持分法損益の改善によるためで、本業であるビデオ、テレビ、オーディオといったエレクトロ部門の低迷が長期化し、さらに深刻な問題となっているためだ。ソニーの下期(2004年10月〜2005年3月期)以降の業績動向と株価の見通しを探った。

 同社の第2四半期の連結決算は、売上高こそ1兆7023億円(前年同期比5.3%減)と減少したものの、営業利益は434億円(同30.6%増)、税引き前利益は633億円(同43.6%増)、純利益532億円(同61.6%増)となった。営業利益の大幅増益に寄与したのは、映画部門の利益改善だった。映画「スパイダーマン2」のヒットなどにより、映画部門の営業損益が、前年同期の46億円の赤字から274億円の黒字と320億円の大幅改善となった。また、携帯電話販売を担当するソニーエリクソンの販売台数が前年同期比51%増の1070万台の大幅増となり、ソニーの連結営業利益の増益に寄与した。さらに、金融部門の営業利益も前年同期比32.2%増の149億円となった。

 こうした大幅増益の決算にもかかわらず、市場関係者からは厳しい見方が多い。国内大手証券のアナリストからは「増益を評価できるような決算ではなかった」との声もあがっている。その背景にあるのが、いわゆる本業とみられる、ビデオ、テレビ、オーディオといったエレクトロニクス部門などの利益が減少を続け、回復の見通しが見えてこないためだ。エレクトロニクス部門の第2四半期の連結営業利益は、前年同期比83.4%減の72億円、ゲーム部門が同22億円悪化の収支均衡となった。さらに、エレクトロニクス部門の営業損益の内訳をみると、オーディオが前年同期比116億円減の23億円の赤字、ビデオが同184億円減の37億円の黒字、テレビは同63億円悪化して61億円の赤字となった。

 下期も含めた2005年3月期通期の連結営業利益についてソニーは、従来予想の1600億円を据え置いた。しかし、同時に構造改革費用について、従来予想の1300億円から1100億円へと200億円の減少を公表しているため、実質的には通期の連結営業利益は1400億円に下方修正したことになる。

 しかし一方では、ソニーの株価が現在も年初来の安値圏で低迷していることを考慮して、やや楽観的な見方もでている。中堅証券の投資情報部では「もともと相当厳しいと予想されていた第2四半期の決算が明らかになったことで、株価面では目先アク抜け感が出たともいえる。会社側がクリスマス商戦に向けて、デジタル家電や、ゲーム機の強力な新商品を投入し、シェアの拡大を表明していることから、現在の株価水準から積極的に売り込む動きは想定しにくい。ただ、クリスマス商線で芳しい結果が出なかった場合は、株価は下方向に水準を切り下げ、3500円水準を大きく割り込む可能性も想定せざるを得ない」としている。

 米国家電協会(CEA)から2004年の米家電業界「殿堂」入りに選ばれたソニーの大賀典雄名誉会長は10月19日、サンフランシスコで開かれた授賞式の後、記者団に対し「ソニーのブランドはかつて一番だったのに、(最新のブランド価値調査で)20位なのはがっかり」と、ソニーの現経営陣に厳しい苦言を呈したという。

 ソニーは昨年4月、その年の1〜3月期の連結決算が未曽有の大幅赤字になったと発表。これに伴いソニーの株価はもちろん暴落。それだけに止まらず、全般相場の下落のきっかけともなり、「ソニーショック」と呼ばれた。それ以降、大胆な構造改革などリストラ策を打ち出したものの、主力のエレクトロニクス部門に目立った回復の兆しは見えてこない。中堅証券のアナリストは「このままだと“ソニー神話”などという言葉さえ徐々に忘れ去られ、普通の大手民生用電機メーカーになりかねない」としている。

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