こうしたサービスは決して絵に描いた餅などではない。さまざまな業界で主導的役割を果たすことのできる企業がいくつか存在する。そうした役割を果たす企業に必要なのは、セキュリティ、サービス、顧客サービス、販売に関するそれぞれのスキルと、それらを支える月単位の課金システムである。
こうした条件に照らして、最も可能性が高そうな候補としては、まず既存のセキュリティ関連ソフトウェアメーカーが考えられる。なかでもSymantecとMcAfeeの両社はその最有力候補だ。どちらも手持ちの製品を組み合わせて、一般ユーザ向けのホームセキュリティ用「ブラックボックス」をつくり、それを今ある小売りチャネルで販売できる。また、両社はすでにサービス提供機能も確立している。
これに対し、Computer Associates International、Fortinet、Jupiter Networks、 NetScreen、WatchGuardといったセキュリティ関連企業の場合は、それぞれ製品とサービスはあるものの、流通チャネルが欠けている。
Belkin、D-Link、Cisco SystemsのLinksys部門、Netgearなどの家庭用ネットワーク機器ベンダもセキュリティ、流通、サービスに関する専門技術を備えているので、何らかの役割を果たせる可能性がある。これらの企業は、ホームセキュリティサービスのプロバイダとして最適とは言えないが、少なくとも必要な技術基盤を提供してくれることは間違いない。
もちろん、特定のブロードバンドプロバイダが、他社に先駆けてホームセキュリティサービスを提供し、ビジネスのルールを実質的に書き換えてしまうという可能性もある。たとえばVerizonなら、セキュリティ技術ベンダと提携して、共同でサービスの展開とサポートを行うビジネスモデルを開発した上で、既存の業務とマーケティング力を活用して、ブロードバンド契約者に目的のサービスを販売し、さらに毎月料金を徴収していくといったアイデアが考えられる。また、セキュリティサービスで他社に差をつけ、新規顧客を開拓することさえ可能かもしれない。
ただし、これを実現するには、ある程度のリスクをとる覚悟が必要で、また戦略的ビジョンも持ち合わせていなくてはならない--概して保守的で、将来への見通しを欠くきらいのあるCATV事業者や電話会社にとって、これはいささか荷の重い仕事かもしれない。
ブロードバンドユーザーは、目的のセキュリティサービスさえ提供してくれれば、誰がどのような技術を使用しても一向に構わない。セキュリティ対策のための厄介な作業から永久に解放されたいだけだ。そして、それが実現されるのなら、月10ドル程度の料金は喜んで支払うだろう。こうしたホームセキュリティサービスを実現する適切なビジネスモデルを最初に考え出した企業が、たちまちこの分野のリーダーとなり、莫大な利益を上げるようになることは間違いない。
筆者略歴
Jon Oltsik
Enterprise Strategy Groupのシニアアナリスト
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