富士通、業績上方修正でもなぜか株価判断引き下げ

 富士通は18日、2005年3月期の9月中間期の連結業績について上方修正を発表した。これを受けて、翌19日の同社の株価は終値で前日比25円高の641円と上昇した。ところが、20日付で三菱証券は、富士通の株価判断を従来の「A」から「B」へと2段階(AとBの間にB+というランクがある)引き下げるとともに、目標株価も従来の849円から690円へと引き下げた。この株価判断の引き下げを嫌気して20日の株価終値は前日比15円安の626円と早くも反落した。業績大幅上方修正銘柄の株価判断をなぜ2段階も引き下げなければならないのか。

 富士通は9月中間期の連結売上高について、従来予想比300億円減の2兆2200億円(前年同期実績2兆1419億円)へと小幅ながら下方修正した。第3世代携帯電話用基地局やデジタルAV向けシステムLSI(大規模集積回路)などの需要は好調に推移した。しかし、ソリューション・SI分野における価格低下圧力の継続や携帯電話の売上減少などにより、小幅ながら減額を強いられた。一方、営業損益は従来予想比230億円増で330億円の黒字(前年同期実績179億円の赤字)、経常利益は同340億円増で40億円の黒字(同674億円の赤字)と大きく上方修正した。コストダウンや昨年度の事業構造改善による費用削減などが寄与。金融収支の改善や為替差益の発生なども貢献した。

 三菱証券のレポートによると「中間期業績は増額となったが、会社側が注力しているソフトサービスの収益性が改善しておらず、採算割れ事業の増大が引き続き懸念される。また、半導体事業はシリコンサイクルの下降局面に入り、下期以降の収益性悪化が避けられないと予想される。来期営業利益は減益を予想する」として、従来の業績予想を減額修正し、目標株価を見直した。目標株価は今3月期予想PER 20倍を前提としたもの。

 市場関係者からは、「18日株価の610円は3月23日の年初来安値603円以来の安値圏。この水準は今年の安値圏であり、下げ止まっても不思議ではない。しかし、15日現在の信用買い残株数は1789万株と引き続き高水準で、信用倍率は6倍台。9月17日の1.5倍から取り組みが大幅に悪化している。上値は重く、想定外の好材料が飛び出さない限り当面の上値は限定的」(中堅証券投資情報部)との見方も出ている。

 来週から本格化してくる主力ハイテク企業の9月中間決算を前にして、かなり大幅な業績の上方修正を明らかにしても、アナリストの判断はかなり厳しいうえに、株価上昇のきっかけとなる手掛かり材料が市場に評価されない富士通。これは、4月後半以降6カ月以上も下落トレンドから脱することのできない主力ハイテク銘柄の置かれた非常に厳しい現状を象徴しているようだ。

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