8月26日、『日本とシリコンバレーで築くキャリア』と題したセミナーが恵比寿で開催され、CNET Japanでコラムを連載する梅田望夫氏ら3名のパネリストが、50名を超える学生や20代のビジネスマンを中心とした若手参加者と共に、プロフェッショナルとしてグローバルに活躍する方法について熱い議論を交わした。主催のJTPA(Japanese Technology Professional Association)は、シリコンバレーで活躍する日本人を中心に組織されたNPOで、パネリストの3名も推進メンバーに名前を連ねている。
司会の梅田氏は、英語圏で日本人が活躍するには「日本人であることを最大限活かしたキャリア」と「日本人であることを捨てたキャリア」の2つの可能性があると指摘した。前者は日本の人脈やマーケットに精通していることを強みとし、後者は純粋に自らの専門スキルを売りとする戦略だ。この観点から捉えると、共にシリコンバレーで活躍してきたパネリストの大澤弘治氏(Global Catalyst Partners)と中村孝一郎氏(NTTフォトニクス研究所)は極めて対照的なキャリアを経てきたと言える。
![]() 写真左より、大澤弘治氏、梅田望夫氏、中村孝一郎氏 |
大澤氏は三菱商事での事業開発経験を活かして独立。現在は自ら創設した投資会社でベンチャーキャピタリストとして活躍している。まさに、日本の大企業に勤めることで自らの市場価値を高めてきたタイプと言えよう。一方の中村氏は、大学で研究していた光学分野の技術開発を契機に、シリコンバレーのベンチャー企業からスカウトされた経験を持つ。学問と産業の橋渡し的なポジションで、専門分野を武器に理想的なエンジニアのキャリアを描いてきた。
日本人であることを活かそうとする場合、企業名や人脈で信用を得ながらも常に「個人の名前で仕事をしている」という意識が大切だと大澤氏は語る。この点においては「学歴、人脈、企業のネームバリューは最初の一歩で役立つにすぎない」と梅田氏も同様の見解を示した。続けて「Result Oriented Meritocracy(結果志向型実力主義)」というシリコンバレーの基本原則を掲げた上で、ビジネスの実績を積むことで得られる名声や信頼こそが成功のための最も重要な要素であると説く。
その一方で、日本人であることを意識しないキャリアを構築するには「高度な専門性を極めるか、徹底して英語力を磨くに尽きる」と述べた。中村氏のようにテクノロジーのスペシャリストとして活躍するキャリアパスはもちろん。それに加えて、ネイティブレベルの英語力さえあれば日本人特有の几帳面さを武器にオペレーション管理などのマネジメント職を十分に狙えるのだという。
いかにも戦略的な視点で語られた本セミナーだが、変化の激しい現代のビジネス環境において「唯一」「絶対」と呼べるキャリア・デザインなどは存在しない。今回のパネリスト達がそれぞれ開拓してきたキャリアパスも、まさに三者三様のオリジナルと言える。
セミナーの冒頭で梅田氏は「当時(30代)の自分としては客観的に考えて判断してきたつもりだったが、44歳の現在になって考えると今までの意思決定がいかに危ないものであったかに気付く」と、自らの過去を振り返った。若さゆえの先入観や未熟さから、かつて描いた緻密な設計図には限界もあったという主旨の発言だ。こうした自身の経験を踏まえて、若い頃から考え過ぎるあまり「リスクを恐れて何もやらない」よりも、試行錯誤を繰り返すことの重要性についても言及した。
JTPAは今後、日本国内での啓蒙活動にも力を注ぐ方針という。イベントやセミナーの最新情報はJTPAメーリングリスト(登録無料)から入手可能。
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