7月に入って一段と調整色を強める株式相場のなか、セイコーエプソンが5日に業績の大幅な上方修正を発表した。それを好感して翌日6日には、寄り付きから大量の買い物が殺到し、値幅制限いっぱいのストップ高まで買い進まれた。同社は昨年6月に新規上場して以来、わずか1年余りの間に今回を含めて4回もの業績修正を発表しているが、その都度株価が大きく反応するケースが多い。毎度お騒がせのセイコーエプソンの業績修正の背景を探った。
セイコーエプソンは5日、電子デバイス事業などの好調を背景に、今3月期の連結業績を大幅上方修正した。この修正がポジティブサプライズと受け止められ、翌日6日の市場では朝方寄り付きから大量の買い物を集める展開となった。株価は買い気配を切り上げ、大引けで前日比ストップ(500円)高の4320円比例配分でようやく値がつくという強烈な買い人気。最近の全般低迷相場のなか、市場関係者のあいだで「久しぶりの明るい材料」と受け止められたためだ。
上方修正は、売上高が想定を上回って推移しているほか、特に電子デバイス事業において欧州市場などで携帯電話の買い替え需要や、液晶プロジェクターなどの需要が好調に推移、コストダウン効果も功を奏したためだ。この結果、9月中間の連結業績は売上高6910億円(従来予想比1.9%増、前年同期比5.0%増)、経常利益460億円(同2.2倍、同43.3%増)、純利益260億円(同2.4倍、同57%増)と、従来の減益予想から一転して大幅増益が確保できる見通しとなった。この大幅増益予想が大きなサプライズにつながった。
ただ、下期については、大きな変動要因が見込めないとして、今3月期通期の連結業績については、売上高1兆4920億円(従来予想比0.9%増、前期比5.6%増)、経常利益1000億円(同33.3%増、同35.7%増)、純利益580億円(同34.9%増、同52.5%増)と想定している。これは、上期での上乗せ分のみ単純にプラスしただけという慎重な見方で、市場関係者からは「さらなる上方修正の可能性を十分残している」との声が上がっている。なお、三洋電機との液晶事業統合に関しては、「現在事業計画を策定中であるため今期業績予想には織り込んでいない」(セイコーエプソン常務取締役の久保田健二氏)としていることも今後のさらなる上方修正要因だ。
再三の業績修正について、外国証券のアナリストは「プリンタ事業で採算の改善が予想以上に進んでいることに加え、携帯電話などに向けた電子デバイスの供給過剰による価格の下落を大きく見込んでいたものが、値崩れが最小限度に止まったことが主な理由。もちろん、下方修正よりも上方修正のほうが良いに決まっているが、何度も大幅な修正発表を繰り返すようだと、投資家に“狼少年”的なイメージを与えてしまい、信用が低下することにもつながりかねない」と指摘している。
セイコーエプソンは、電子デバイスの好調に加え、プリンタ事業も下期に新製品を投入する予定。液晶テレビ、プラズマテレビの約半分という価格競争力から話題となっているリアプロジェクションテレビでも、今年3月に欧米で、国内では5月からネット販売を開始している。メモリースロット、プリンタを内蔵したパソコン、テレビ融合型の意欲的な新製品なども展開しており、開発力や品質への信頼度は高い。したがって、今後は外国人投資家にとって特に理解され難いとされる「業績見通しをなるべく堅めに見積もって、あとから大幅に上方修正する」という日本的なディスクローズの方法を見直せば、さらに株価は上昇することになりそうだ。
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