インターネット関連サービスを展開するライブドア(東証マザーズ上場)の堀江貴文社長は6月30日に記者会見し、「大阪近鉄バファローズ」の買収で近畿日本鉄道と交渉に入ったと発表した。堀江氏は会見で買収を表明するに到った目的について「チーム数が減少し、野球界全体の縮小につながる1リーグ制議論に一石を投じたかった。我々が培ってきたベンチャービジネスのノウハウを生かし、球団自体の株式公開や選手にストックオプションを付与することも考えたい。(当面の)負担に耐えられるだけの現金もあり、5年や10年で球団を手離すような弱い会社ではない」と、球団経営に対する新たな取り組みに意欲をみせている。しかし、近鉄の山口昌紀社長は「ライブドアから働きかけがあったのは事実だが、その時点ではっきりと断った。今後も受け入れるつもりはない」と拒否の姿勢を明確にしている。
今回のライブドアの近鉄球団買収表明に対する騒動について市場関係者は、「IT関連業界と株式市場ではすでに“風雲児”として知られていたライブドアだが、今回の件をマスコミが一斉に報道したお陰で一気に全国区の企業となったことは確か。堀江氏は売名説を完全否定しているものの、結果的には数十億円規模の広告宣伝費用と同等の知名度の向上につながったことは確かなようだ」としている。しかし同時に、「株式市場関係者の関心は球団買収の成否ではなく、ライブドアの今後の株価動向に集中している」とコメントしている。
ライブドアの最近の株価動向を振りかえってみよう。同社の株価は、1対10の株式分割の権利を落とした6月25日から29日まで3営業日連続でストップ高となっていた。そこに近鉄球団買収が明らかとなり、30日、7月1日と5日連続のストップ高となった。そして、先週末の2日も一時1205円まで買い進まれ、終値でも1002円と1000円の大台を超えてきた。
ライブドアは6月末現在の株主を対象に従来の1株を10株にする大幅な株式分割を実施した。これにより、分割権利落ち日6月25日の理論基準価格は、前日24日終値の10分の1に当たる520円だった。権利落ち日からわずか6営業日という短期間で株価は2倍に上昇しているのだ。この株価の上昇について中堅証券の投資情報部では「基本的には株式分割に伴う新株が流通する前の品薄期間を見据えた資金による活発な買いがベースにある。また同社の場合、すでに昨年の12月末の株主を対象に1株を100株にする株式分割を実施しており、この従来になかった超大幅の株式分割が市場に大きなインパクトを与える結果となった」としている。その後も同社は、インターネット広告配信のバリュークリックジャパンや、中堅証券会社の旧・日本グローバル証券(7月3日からライブドア証券に社名変更)を相次いでM&Aするなど、事業範囲の多様化を推進している。
株式分割に伴う実際の新株交付は約2カ月後となるため、値ごろ感と需給ひっ迫を背景に、分割権利落ち直後は買いが先行する動きとなる傾向が強い。現在は、小学生でも買える1株1000円の株価となっているが、実際には1人当たりの平均買い株数は約1000株程度とみられている。
なお、前回話題となった100分割の際は、権利落ちを契機に15日連続ストップ高を演じ、株価は一時権利落ち後の基準価格(2220円)に対して約8.2倍の1万8200円まで暴騰したものの、新株還流日にかけては需給悪化懸念からほぼ基準価格近くにまで急落し、いわゆる「往って来い相場」となった経緯がある。多くの個人投資家にとってライブドアのようなネット関連ベンチャー企業の株式を少額で買える意味は大きいものの、今後も継続して高株価を維持するためには、プロ野球の球団に限らず、新たな大型のM&Aなど、わかりやすいかたちで企業価値を高めることが必要条件といえそうだ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」