デジタル家電ブームの追い風を一身に受け、まさに「液晶王国」に君臨して好調な業績推移をみせるシャープ。ところが肝心の株価は4月下旬以降、下降トレンドに歯止めのかからない状態が続いている。株式市場はいったい何を懸念しているのか。
シャープには依然として強烈な追い風が吹き続けている。日経新聞が6月1日付から「シャープ どこまで強いか」のタイトルで、液晶に関する技術力の高さから財務内容の健全性に到るまで、4日間にもわたって個別企業のプラス面を追いかけるという異例の連載を行ったかと思うと、今度はNHKが6月5日に放送したNHKスペシャルの「景気回復は本物か(2)デジタル家電」では、勝ち組企業としてシャープの液晶に関する技術力の高さが詳細に紹介された。
もちろん業績も好調そのものだ。2004年3月期の連結決算は、売上高2兆2572億円(前々期比12.7%増)、営業利益1216億円(同22.3%増)、経常利益1116億円(同36.2%増)、純利益607億円(同86.3%増)と、売上高、各利益とも過去最高を記録した。また、期末配当を3円増配して10円とし、これにより年間配当を18円とすることを明らかにしている。さらに、今期の2005年3月期の連結業績は、売上高が前期比12.1%増の2兆5300億円、営業利益同23.3%増の1500億円、経常利益同25.4%増の1400億円、純利益同23.5%増の750億円と、引き続き大幅な増収増益を見込んでいる。
それでは、株価はどのような推移となっているのか。それまで1800円台後半の水準で推移した株価が、決算発表(4月27日)の直前から急騰を演じ、4月26日には年初来高値の2100円をつけた。その後は好業績見通しが明らかになったにもかかわらず反落に転じ、6月3日には1727円まで約18%の下落となった。その後も株価は1700円台での推移と低迷を続けている。
これだけの好業績持続にもかかわらず、なぜ株価は低迷を続けているのか。これについて外資系証券のアナリストは「ひとことでいえば、市場関係者が懸念しているのは、韓国、台湾などで一斉に大型液晶の製造設備に対する投資が活発化している点だ。こうした設備が稼働する近い将来に、大型の液晶パネルが一気に増産されると、需給関係から当然価格自体が大きく下落する懸念がある。これは家電製品の世界では延々と繰り返されてきたことで、株価はそれを織り込んでいる」と述べる。しかし同時に、「シャープもそれは百も承知で、液晶パネルの価格を維持するための新技術の実用化を進めると同時に、IC回路を組み込んだ中小型の“システム液晶”の開発も進めている。また、国策が後押ししているとはいうものの、後発で大規模な設備投資を短期間で実施している韓国、台湾メーカーがコスト面で競争力をみせるのはかなり難しいのではないか」と、強弱観対立の見方をしている。
なお、大和総研(DIR)ではシャープに対し、6月8日付でレーティング「3(中立)」を継続、その中で今後半年から1年程度の目標株価を1600〜1800円に設定した。レポートでは「シャープの中期成長力を考慮すれば、来期予想ベースのPER(株価収益率)22.3倍は、家電セクター平均の約20倍と比べて特段高い水準にはないと考えるが、目標株価についてはやや慎重にみた。DIRは、コア銘柄としての位置付けは変更しないものの、液晶パネル価格が緩やかな下落局面に入ったと考えており、このような環境下では同社の株価上昇が抑えられやすい点を考慮した」としている。
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