--SunとMicrosoft、あるいはMicrosoftとOracleといった企業提携が発表されていますが、このような提携が今後も起きると思いますか。
提携を発表するのは最も簡単なことです。しかし、これまでに提携が奏功してすばらしい技術を市場に送り出せたという事例は、おそらく片手で数えられるほどしかありません。
--顧客の意見に敏感に耳を傾けるようになった鍵は不況だったとおっしゃいましたが、 顧客の知識が豊富になったことで、あなた方のビジネスのやり方はどの程度変わりましたか。
IT部門の管理者たちは、以前よりもずっと賢くなっていると思います。彼らは、費用対効果や相互運用性に注目するようになってきました。5年前と現在では、ベンダーに対するITマネージャーの要求が違っています。1990年代は明らかに、ITインフラに膨大な投資がなされましたが、結局大きな利益は得られませんでした。
--デュアルコアへの移行を決定したのはそのためですか。
Intelの使命は、新しい技術を市場にもたらすことです。われわれの中核となるビジネスは、 技術革新と技術統合です。断片的な技術でもかまわないのですが、新しい技術が出現したら、それをコアプロセッサに統合します。デュアルコアあるいはマルチコアをひとつのチップ上に統合するというアプローチは、ここ4、5年間、皆が話題にしていたことです。
--デジタル化の機が熟している市場はありますか。どの業界でデジタル化が必要であると思われますか。
ヘルス・サイエンスの分野です。あの業界はGDPのかなりの部分を占めていますが、最新技術の導入という点では比較的遅れているからです。バックオフィス部分の基本的なインフラは備えているにもかかわらず、ヘルスケア業界は、コンピュータ化とコストダウンという点で非常に遅れています。
--エネルギー業界はどうですか。数年前、あなたが代替エネルギーの話をされたとき、世間の反応はかなり冷淡でした。ところが今では、スタンフォード大学が3つの主要研究分野の1つとして、この問題に取り組んでいます。
もし1日だけ大統領になれるとしたらまず何をするかと尋ねると、たいていの人は、エネルギー分野の生態系に関連する何かと答えるでしょう。
ソ連は月へ行くという難題を解決すべく、世界初の人工衛星スプートニク号を打ち上げました。現在われわれが直面している難題は当時とは少し異なっており、われわれを取り巻くエネルギー環境に関する何かだと思います。多くの人が同じように考えていても、私は驚きません。
--PCメーカーが家電分野に参入しようとしていますが、PCと家電の融合は今後どのように進むとお考えですか。
あなたがたはいつも、これを戦いとして描きたがりますね。Consumer Electronics Show(CES)に行けば、ソニーはテレビこそ世界の中心だと主張したと言い、いっぽうIntelはPCこそ世界の中心だと主張したと書き、そうかと思えばソフトウェア企業は「ソフトウェアこそ世界の中心だ」と主張したと伝えたがります。私は、そういう考え方は間違っていると思います。
これらの分野は互いに協調しなければなりません。共通のインターフェースと共通のプロトコルが必要です。各分野の製品が互いに補い合って連動する必要があります。だから、PCj陣営と家電陣営が競合するとは思いません。
--しかし、Dellのような企業が利益を上げているのは、PCをコモディティとして売るための、優れた流通モデルを作り上げたからではないですか。ソニーやサムスンが、巨大な小売り網を構築し、研究開発に莫大な資金を費やしているのとは対照的です。
大手家電メーカーが消えていくとは思いません。サムスンやソニーのような企業は、これからも生き残っていくと思います。ほとんどの家にはステレオがあると思いますが、ケンウッド、テクニクス(パナソニック)、ソニー、サムスンなど、メーカーはさまざまです。私の自宅にある家電製品も、メーカーはバラバラです。おそらく皆さんも同じだと思います。
--Tejas(今年後半に出荷予定だったPentium 4の新バージョン)がロードマップから削除されたため、ノートPC用とデスクトップ用のプロセッサが再統合されるとの予測が出ています。Pentium 4の寿命は予定よりも短くなるのでしょうか。
われわれは、手品師ではありません。マイクロプロセッサを一から開発するには数年かかります。その間に、周りの環境や生態系も変わります。われわれはそれに順応します。自分の立場を固守して、「まわりのことなど知ったことか。われわれはやりたいことをやるだけだ。市場のニーズなど関係ない」などと言っているわけにはいきません。Tejasの開発を中止し、デュアルコア製品の開発を加速させているのは、そうすることがわれわれの持つリソースの最も効果的な使い方であると判断したからです。Peter Druckerもこれには同意してくれると思います。
--あなたがCEOに就任されたとき実現しようと思っていた社風は、思い通りに実現されましたか。途中で思いがけないことはありませんでしたか。
社風という観点から見て最も難しかったのは、この3年間の不況でした。私は入社して30年になりますが、その間に長短さまざまな期間の不況を10回ほど経験しました。しかし、最後に経験した不況は、他のどれと比較しても2倍も長く続きました。Intelの給与体系は非常に柔軟で、そうした景気の浮き沈みにも対応できるようになっています。おかげで、給与削減や大規模なレイオフといったことで社員を驚かせるようなことはしなくて済みました。
そういう意味ではIntelの社風がうまく機能したと思いますが、この3年間の景気低迷には、すべてのハイテク企業が苦しんだと思います。社員の大半はこのような長期の不況を経験したことがありませんでした。90年代の好況期に慣れきっていました。この3年間はIntelにとっても苦難の時期でしたが、われわれが拠って立つ価値観は変わっていません。社内で与えられるさまざまな賞や表彰、年1回の人事考課など、すべてはIntelという企業の価値観に根ざしています。
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