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恐ろしくてクールな韓国版「未来のデジタルホーム」

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 韓国・ソウル発--パソコンモニターが浴室の鏡の中に見えないように埋め込まれ、センサーやカメラが至るところに設置されたデジタルホーム。それは、多くの人々にとって、尊厳と誇りを脅かすものである。

 しかし、いくつかのデモを見てしまうと、正直なところ、そのコンセプトが格好いいように思えてくる。

 韓国政府と大企業数社は、すべての家電製品をインターネットに接続するための技術開発を積極的に推し進めている。韓国はブロードバンドの普及率が他国より高い(さまざまな調査の平均値によると、普及率は71%)ことから、8-3-9という名の戦略のもと、未来の家電製品の実験室、ひいてはサプライヤとしての役割を確保しようとしている。

 同国の 情報通信省(MIC)によってセットアップされたユビキタスコンピューティングのデモは、こんな感じだ。大画面テレビに朝刊の仮想バージョンが映し出される。一方では、無線ICタグ(RFID)タグを使用したシステムが、カートの中の食料品の価格を集計し、携帯電話の支払口座に代金を請求する。

 ネット接続された車には、液晶パネルが装備され、後部座席のコンピュータで自宅のハードディスクに格納されている音楽を聴いたり、映像を再生したりできる。駐車場の空きを探したり、橋の通行料金を支払ったり、会社にいる他の社員とテレビ会議を開くこともできる。

 サムソンのデモ用デジタルホームには、トイレに健康管理モニタが装備されており、血圧や血中酸素濃度といった健康に関する基本情報を、トイレに座ったまま医者に送ることができる。ホームネットワークには、インターネット制御可能な炊飯器、玄関の訪問者が映し出される寝室のスクリーン、電話が着信すると相手の電話番号が即座に表示されるテレビセットなどが設置されている。

 「政府の目標は、2007年までに1000万世帯を(完全な)ホームネットワークに接続することだ」とサムソン高度先端技術研究所のバイスプレジデントYong Duk Yoonはインタビューで語った。

 この種のホームネットワーク技術を目にすると、たいていのアメリカ人はゾッとする。プライバシー擁護論者たちは、RFIDタグを使用すれば、企業がひそかに個人情報を収集できることを示唆する。インターネット対応のホームビデオカメラは、セキュリティシステムから、一般家庭のスパイ用システムに変貌してしまう恐れがある。

 さらに言えば、こうしたデジタルホームはテクノディストピア(技術暗黒郷)をもたらすかもしれない。テクノディストピアとは、無味乾燥なひどい娯楽や秘密裏にすすむ監視体制の中で、人間が生涯を費やす世界だ。

 しかも、この技術は現時点では決して安価ではない。一般家庭の電力線を利用したサムソンのベーシックなデジタルホームパッケージは、建築業者に約2000ドルで販売されている。インターネット対応の冷蔵庫やカーテン、照明、オーブンなどを備えたもっと高度なパッケージになると、約1万ドルにもなる。しかも、この価格には大画面のテレビといった娯楽用機器は含まれていない。

 韓国は、デジタルホーム技術の実験場としては、まさにうってつけである。韓国では、実際に建設が始まる前に分譲マンションの契約書にサインするのが一般的だ。このため、電力線ネットワークなどのような付属装置は、受け入れられやすい。

 それでも、デジタルホームの概念は、どの国でも避けられないものになってきているようだ。それには次のような理由がある。

• 時間: 人々はもはや忙しくて用事を済ませる時間がない。医者に行けば半日会社を休むことになる。病院側も、脈拍や血圧などの基本的な検査のために人員を確保したがらない。むしろ遠隔治療を利用した方が、医者は、患者の健康状態をより正確に把握することができる。その際、誰も移動する必要がない。

 カナダ西部のある州では現在、サムソンと協力して、家庭医療の実験を進めているとYoonは述べる。また別のところでは、家庭の暖房費を節約するための実験も行っているという。スペインやオーストラリアでも同様の実験が行われている。

• 交通事情: 帰宅した後に買い物に行くのは、子供のいる共働き夫婦にとっては大きな負担である。確かに、インターネット対応の食料品注文/配達システムを利用すると、あなたがViennaソーセージ好きであることをハッカーに知られてしまうかもしれないが、一方では、帰宅する前に牛乳が傷んでいないか確認することもできる。

 韓国でこうしたシステムが早期に普及する可能性が高い理由の1つとして、交通事情の悪さが挙げられる。エアコンの効いた自宅やオフィスから一歩外へ出ると、ものすごい排気ガスと埃、何マイルも続く渋滞が待っている。この国で携帯電話がこれほど普及した背景には、移動することの煩わしさがある。

• 経済発展: 韓国では、RFIDの普及に伴うプライバシーの侵害を心配する声をあまり聞かない。むしろ、RFIDの利用が遅れていることに対する不満の声を聞くことの方が多い。MICによると、8-3-9戦略の最終目標は、国民1人当たりのGNPを、現在の年間12000ドルから、2010年までに20000ドルに引き上げることであるという。ハイテク分野は、この目標を達成する絶好の機会なのである。

 「RFIDは複雑な技術ではない。韓国は日本に若干の遅れをとっているが、この分野の開発に全力を注ぐつもりだ」と情報通信大臣のDaeje Chin(サムソンの前CEO)は述べる。彼には、技術系の学生の数を増やし、VoIPやデジタルTVの普及を促進する任務もある。価格の下落傾向が続く限り、中国やそのほかの国も、韓国に追随するだろうという焦りだってある。

• 現状: 考えが浅はかだと言われるかもしれないが、ワイヤレススピーカーやロボット掃除機、ペンで書くことができる大画面モニタの魅力を無視するのは難しい。声に反応して、浴室の鏡に埋め込まれた画面にニュースヘッドラインが表示される様子は、なかなかのものであった。(プライバシー擁護論者がこうした技術を嫌うのは、もしかすると、自分たちがOld Navy(GAP系の洋服チェーン店)で買い物をしていることを他の人間に知られたくないということもあるのかもしれない。)

 その一方で、自動化には、何かしら人の心を不安にさせるところがある。サムソンのデモ用デジタルホームに据え付けられた本棚には、装飾用の皮表紙の本がずらりと並べてあった。その中には、Charles Darwinの『Descent of Man』(人間の系統)の全4巻も含まれていた。

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