Yahooが検索エンジンを自社開発した理由 - (page 2)

インタビュー:梅田望夫、撮影:Rick English
編集:瀧口範子、山岸広太郎(CNET Japan編集部)
2004年05月24日 10時00分

サーチエンジン戦略の方向性

梅田: ところで、Yahooは買収した4社の技術をどのように生かすのでしょうか。Yahooの強みを生かした戦略というのはどのようなものですか。

Vish: Yahooの強みはすでに多くのアセットを持っているということです。Yahooは今までにオンラインビジネスの17のカテゴリーでトップ3に入る成功を収めています。

 これらのサービスを使うためにYahooに来るユーザーもいれば、検索をするためにYahooに来るユーザーもいます。我々は検索結果のリストを提供するだけではなく、サーチと既存のアセットを統合して、ユーザーの目的に合ったソリューションを提供していきます。

梅田: パーソナライゼーションで差別化するという意味ですか。

Vish: いえ。パーソナライゼーションだけではありません。ユーザーを理解するということです。パーソナライゼーションも重要な部分ですが、ユーザーがどんな意図を持って検索をしているのかを理解することが最も重要です。

 我々はこの問題にさまざまな方法で取り組んでいます。例えばサーチと地域情報を統合して提供しています。我々は地域情報の分野ではすでにリーダー的地位にありましたが、他の分野でも似たようなアプローチを進めています。ユーザーにとって検索をより身近で意味のあるものにするのです。

梅田: 具体的に言うとどういうことですか。「ソリューション」という言葉を使った意味は?

Vish: 例を出しましょう。私はサンフランシスコに住んでいます。そして、私の妻がサンフランシスコの近くにあるサンノゼ空港に飛行機で向かっているとします。私は妻を迎えに行くため、A)フライトが定刻通りか、B)サンノゼ空港に行くにはどうしたらいいか、という2つの質問をサーチエンジンで調べます。

 そして、私は検索キーワードを2回入れるだけで、両方の答えを知ることが出来ます。検索結果の一覧に表示されたサイトをクリックして見て回る必要はありません。YSTはフライト情報と行きたい場所への地図を提供します。これがソリューションです。

 確かに、ウェブサイトやそのコンテンツの関連性を分析しランク付けすることはソリューションを提供するのに必要不可欠ですが、それだけでは足りません。我々が実現しようとしているのは現実世界の普通のニーズを満たすことです。Linuxのモジュールを作るのに必要な情報ではなく、飛行機の発着情報や空港への道順を案内する地図のような情報こそが普通の人々の生活にインパクトを与えるのです。

YahooとGoogleの哲学的な違い

梅田: なるほど。こういう話を聞いていて興味を持つのがYahooとGoogleの哲学的な違いです。Yahooはディレクトリーから発展し、Googleは徹底したサーチエンジン志向で成長してきました。YahooとGoogleの哲学的な違いは人間を関与させるかどうかについての考え方にあるのではないかと思うのですが。

Vish: 別にYahoo社内に人間の方がコンピューターよりも優れているという思想があるわけではないと思いますよ。

 私の考えでは、初期のウェブが発展していく課程においては、サーチエンジンでは不十分でした。だから人間がウェブ上に何があるかを整理する役割を果たしたのです。

 そして、ウェブが現在のような膨大な大きさになって、いよいよサーチエンジンの時代がやってきました。人間はウェブの成長に追いつけなくなったのです。

 だから私としてはYahooが人間的で、他の会社が機械的ということではないと思っています。Yahooは創業当初から常にユーザーが何を探しているのかに集中してきました。Yahooは人がやった方がユーザーの満足度が高くなるところに人を配置します。これが他社との大きな違いなのだと思います。人間がやっている全ての仕事が機械で置き換え可能だとは思いません。

梅田: なるほど。Googleは人間がやることをどんどんなくして全自動化していこうという信念をもっているのではないかと私は思うのですが。

Vish: それは間違いないですね。

 Yahooは世界で最もスケーラブルで最も優れた水準のシステムを作り上げる技術力を持っています。しかし、Yahooはユーザーの満足度を高めるためであれば人間の力も使うのです。我々にとって最も重要なのはインターネット上で最も優れたサーチを提供することであり、人間がやるか機械がやるかということではありません。

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