NTT株価上昇説と、その背景にある「株価上昇キャンペーン」

 これまでIT関連銘柄のなかで、株価の面では最近話題になることが少なかった巨艦NTTだが、ここにきてにわかに市場関係者のあいだで「NTTの株価上昇説」が浮上している。その背景を探った。

 NTTの株価上昇期待の背景について市場関係者は「昨年4月28日に日経平均株価が7607円とバブル後最安値をつけたが、その後反転上昇をみせはじめてから1年間の株価上昇率をみると、主力ハイテク株のNEC、富士通、日立などがいずれも2〜3倍、また日経平均、TOPIXの株価指数も60%以上の上昇率を達成している。だが、NTTは50%の上昇率に止まり出遅れ感がある」としている。しかし一方では、「これまでNTTには常に政府保有株の売却という株式需給悪化懸念がつきまとっており、それが株価の上昇を抑えてきた」との見方が一般的に語られてきた。

 ところが、逆にその政府保有株の売却こそが株価上昇につながるという説が浮上しているのだ。政府は最近の株式市場の活況を考慮して、今秋までにNTT株の売却を実施する方針を明らかにしている。これに関して一部市場関係者からは「政府保有株売却の事務幹事の権利を獲得するために、今後国内・海外の大手、準大手証券が積極的な売買競争を展開することが予想され、それによってNTTの株価が上昇する可能性が濃厚」との指摘がある。

 幹事証券には膨大な引受手数料が入ることから証券会社にとっては大きなメリットになるのだが、過去半年間の売買シェア(関与率)によってその引受シェアが決まるとされている。財政難の財務省は、売却に向けてNTTの株価が上昇し、売却資金が少しでも増えることを望んでいる。さらに個人株主100万人以上が保有するNTTの株価が上昇すれば、景気浮揚・個人消費の活性化を加速する効果も期待でき、参院選挙を控えて政府・自民党としても大歓迎というわけだ。

 また、外国証券のアナリストは「政府はこれまで6回にわたって保有株の売却を実施しており、すでに政府の保有株比率は46%にまで減少してきている。法律により当分の間政府は33.3%の株式を保有することを義務付けられていることから、残りの12.7%(198.8万株)が今回“最後の売却”として一気に放出され、NTT自体の自社株買いに振り分けられる可能性がある。つまりこの最後の売却で、これまで株価上昇への最大の足かせとなってきた株式需給悪化懸念の原因が解消することになるわけだ。これを先取りして売却前から株価が上昇しはじめることは十分あり得る」としている。

 加えて、経費の徹底削減による固定通信事業の収益安定化、株主還元の強化(増配や自己株式取得)も株価見直しの大きな要因となりそうだ。今後、夏から秋にかけて証券各社からNTT買いの推奨レポートが数多く出るなど、政府、自民党、証券会社そろってのNTT株価上昇キャンペーンが展開されることになりそうだ。

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