Apple Computerは今週、RealNetworksからの「戦術的同盟」の申し入れに冷ややかな態度を示したが、このことから改めてAppleの「我が道を行く」戦略に注目が集まっている。
AppleはMacintoshに関して、オペレーティングシステム(OS)をプロプライエタリなままにとどめ、ごく稀な場合を除いてはこれをライセンスせず、自社でハードウェアとソフトウェアの両方を管理する方針をとった。このアプローチのおかげで、Appleは記録型DVDドライブなどの新機能を他社に先駆けて採用することができたが、その一方でWindowsが支配するパソコン市場において、Macintoshをニッチな製品としてしまう結果につながった。
RealNetworksの最高経営責任者(CEO)Rob Glaserをはじめとする業界関係者のなかには、Appleがソフトウェアやハードウェアを公開しないという方針に固執していれば、同社はデジタル音楽市場で同じ歴史を繰り返すことになると見る者もいる。これに対して、Appleは、iPodにWindowsとの互換性を持たせ、潜在市場を大幅に拡大するなど、過去の過ちを避けるためにいつくかの重要な方策を講じている。iPodの好調な売上に支えられ、Appleの第2四半期の利益は、前年同期の3倍に増加している。
しかし、それだけではまだ十分ではないと、RealのGlaserは言う。同氏は先頃Appleのやり方を皮肉り、ソフトウェアのライセンス提供に関してもっとリベラルな態度をとらなければ、Appleは旧ソ連のように崩壊への道を歩むことになると語っていた。この際に同氏は、iTunes Music Storeからダウンロード購入した楽曲の違法コピーを防ぐ「FairPlay」というApple独自のDRM技術の名を挙げ、これを公開するよう熱心に訴えた。
「Appleがこの方針を続けるなら、同社の(市場)シェアは下がっていくだろう」とGlaserは3月に開催されたPC Forumのなかで述べている。同氏は、顧客が「iPodを買ってみたが、楽曲を買える店が1つしかない。これは一体どういうことだ?まるでソ連じゃないか?」と思うにちがいないと発言した。
Realもまた自社独自のDRM技術を採用しているが、AppleのFairPlayやMicrosoftのWindows Media Audio(MWA)フォーマットに比べ、この技術は市場での普及が進んでいない。特に、Realのフォーマットをサポートしている携帯音楽プレイヤーはごくわずかしかない。さらに、iPodの売上好調で勢いづくAppleの影響から、RealNetworksは短期的な危機に直面しているとアナリストらは述べている。
Appleのこれまでのやり方を考えれば、AppleがRealNetworksと提携してMicrosoftに対抗するとの申し出を拒絶したというのも、それほど不思議なことではない。それが正しい戦略かどうかはともかく、AppleがRealと提携したり、核となる技術を簡単にライセンスするようなことはないだろうとアナリストらは予想している。Appleは自社の計画についてはコメントを差し控えている。
「1度技術を公開してしまえば、コントロールが効かなくなったも同然だ」とCreative StrategiesのアナリストTim Bajarinは述べ、さらに「(Apple CEOの)Steve(Jobs)はそんなことはしない。彼はAppleの運命を決定できなくなることはしないはずだ」と付け加えている。
Bajarinによると、ハードウェアとソフトウェアの両方を管理しているからこそ、Appleは他社のどこよりも良い音楽製品を提供できるというのがJobsの信念だという。「(Jobsが)この戦略から外れることはないと思う」(Bajarin)
教訓を学んだApple
もっとも、Appleは1980年代の経験から教訓を学んだようで、完全に一匹狼というわけではない。
Appleがこれまでに行った最も大きな方針変更は、iPodをMacだけでなくWindowsでも使えるようにしたことだ。これは、Appleが主にMacを売るための手段としてiPodを使う可能性をあきらめたことを意味する。同社はその後、iTunesジュークボックスソフトとオンライン音楽販売サービスもWindowsに移植し、同社の市場を大幅に拡大している。
Appleはまた、America Online(AOL)やHewlett-Packard(HP)と限定的ながらも提携している。AOLのソフトウェアのなかには、iTunes Music Storeへリンクが張られている。HPは「HPブルー」のカスタムiPodを販売し、また同社製パソコンにiTunesを搭載する予定だ。Appleは14日(米国時間)に行った電話会議のなかで、iTunesを搭載したHPパソコンが既に30万台出荷されていることを明らかにした。
Appleが手綱を緩める気になれば、同社はさらに多くの企業と提携を結べることは間違いない。しかし、Jobsは、少なくともいまのところは、同社の独自路線がどのようなリスクをもたらすにしても、そのことに不安はないようだ。
「これは確かにチャンスだ。しかしAppleにとっては、同社が有利に提携関係をコントロールできる(HPなどとの)契約の方が好ましいため、同社がこのチャンスに乗ることはないだろう」とGartnerのアナリスト、Jon Erensenは述べている。
Appleが手持ちの武器に固執するのには、それなりの理由がある。同社は前四半期に過去最高となる80万台のiPodを販売したが、これは同期に売られたMacの販売台数合計を上回る数字だ。また同社の音楽配信サービスもわずかな黒字となったが、そもそもAppleはこのサービスから直接利益を上げようとは考えていなかった。
Appleにとっては、ソフトウェア関連のパートナーを増やすことには何のメリットもないと考えられる。
「iPodの売れ行きがこれほど好調なのは、ハードウェアとソフトウェアやサービスとが非常にうまく統合されているからだ。そのためAppleにとっては、RealNetworksを含めた他社にiPodを解放し、互換性のあるソフトウェアを増やすことへのインセンティブがあるとは思えない」とTechnology Business ResearchのアナリストTim Dealは述べている。「iPodを買うような人たちには、使いやすさが重要なことは明らかだ。だとしたら、AppleがiPodに他社のソフトウェアとの互換性を持たせて、もわざわざ問題のタネを蒔くような真似をしたいと考える理由がどこにあるだろうか」(Deal)
また、RealNetworksには土産として持参できそうなものがほとんど見あたらない。
「RealNetworksにチャンスがあるとすれば、それはiPodのユーザーがApple以外のサービスを使えないことに不満を表すといった場合しか考えられないが、いまのところそうした声はあまり耳にしていない」とNPD Techworld のアナリストStephen Bakerは述べている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向け に編集したものです。
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