Googleは先週ウェブベースの電子メールサービスの提供を発表し、シリコンバレーのベンチャー・キャピタリストから再び熱い注目を浴びている。
一見、すばらしいアイディアのように思える。一銭も払わずに、1ギガバイトものストレージ容量を利用できるのだ。Googleはなんてユーザー思いなのだろう。それに引き換え、他社のウェブメールはあっという間に容量制限を超えてしまう。受信メールをこまめに削除しなければならない。
影響は他社サービスにも波及するだろう。私の読みが正しければ、MicrosoftとYahooも似たサービスを出すことになる。IPOを控え、目下マスコミの人気者となっているGoogleに負けないためには、そうするしか手はないからだ。
しかし、やんやの大喝采に気を取られてGmailの隠れたリスクを見落としてはならない。Gmailはタダではない。そこには別の形の「対価」が存在する。
文脈を分析するGoogleの広告システムは、使用頻度の高い単語を自動的に読み取って、関連性の高い広告を表示する。ウェブサーファーの心をつかむ方法を常に模索している企業にとっては、ひざを打ちたくなるような技術だ。あるユーザーが週末にテニスをしようというメールを友人に送ったとする。すると、Googleのシステムは文面のキーワードをもとにテニス用具の広告を表示する。
スポーツ用品メーカーWilsonのマーケティング担当者なら、よだれが出そうな話だ。しかし実をいうと、この種の技術革新ほど私をぞっとさせるものはない。
文脈分析型の広告システムは今に始まったものではない。検索サイトで「dominatrix(女王様)」と入力すれば、ハードコアなボンデージサイトの広告がずらりと表示されるはずだ。しかし、検索と電子メールでは話が違う。ユーザーはGoogleにそこまでプライベートを詮索されていいのだろうか。メールの中身を読むわけではないとGoogleは主張する。しかし、極端なプライバシー擁護論者でなくても、これが根本的にいただけないアイディアであることは分かるだろう。
ではなぜGoogleはリスクを負ってまで、このようなサービスを提供するのか。その理由はMicrosoftにある。
Microsoftはこれまで検索技術の分野で遅れをとってきた。検索機能はWindowsXPにも組み込まれているが、Windowsオペレーティングシステム(OS)の重要な次期バージョンLonghornには、これまでにない高度な検索技術を搭載することになっている。同社の幹部は出遅れたことを認めつつも、Googleをしのぐ検索技術を開発してみせると自信を隠さない。
Microsoftの虚勢に決まっている--そうかもしれない。しかし、OSを牛耳るのはMicrosoftだ。Googleではない。昔Windows Media Playerで聞いた曲や、何年も前に作った表計算ファイルも検索できるようになると豪語できる理由もそこにある。また、プライバシー問題で厳しい(そしてもっともな)非難にさらされた同社は、電子メールのプライバシーと検索のビジネスとなると、法王の威厳ではなくカトリック教徒の慎重さをもって取り組むだろう。そしてGoogleの弱みをつき、不当な比較に引きずりこむのは効果的な戦術だ。
Googleは検索サービスでは後発だったが、他社より優れたサービスを提供してトップの座に上りつめた。同じことがMicrosoftのインターネットブラウザや表計算ソフト、文書作成ソフトにもいえる。ここから学べる教訓は? いつまでも同じ技術が好まれるとは限らないということだ。
もし「軍拡競争」に持ち込まれれば、数十億ドルの研究開発予算を持ち、余裕を持って開発に取り組むことのできる企業に分がある。Googleの経営陣はそのことを肝に銘じて、もう一度戦略を見直し、大きな過ちをただすべきだ。さもなければ、すべては手遅れになるだろう。
筆者略歴
Charles Cooper
CNET News.com解説記事担当編集責任者
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