IBMは今年から来年にかけて、これまで何年も研究を重ねてきたソフトウェアの開発手法を商用ソフトの開発に導入することを計画している。
IBMのソフトウェアグループ戦略開発担当バイスプレジデントDaniel Sabbahは米国時間24日に、「アスペクト指向」と呼ばれるこの手法の利用に関して、英国ランカスターで開催されるAspect-Oriented Software Developmentカンファンレスで詳細を発表する予定。同氏はまたこの手法が商用利用にも耐え得るだけの信頼性を持つものであることを明らかにするという。
さらにIBMの複数の幹部が、アスペクト指向のソフトウェア開発に関する同社での研究の成果についてデモを行うと見られているが、その多くは現在オープンソース団体のEclipseが進めるプロジェクトを通じて開発されているものだ。
アスペクト指向のソフトウェア開発とは、開発プロセスにモジュール的なアプローチを採り入れて、プログラマが複雑なプロジェクトに簡単に変更を加えられるようにするというもの。このためのツールは、異なる機能をいっそう明確に区別することから、開発者がアプリケーションのある機能に影響を及ぼす変更を行うと、それが他の部分にも反映されるようになる。
たとえば、ウェブサイトの開発者は、企業内ポータルからのリクエストに応じて、パッケージ化されたデータベースからデータを集めるアプリケーションを構築できる。こうした機能の一部として、ソフトウェアエンジニアは監査目的のためにイベントの記録をログに残す追加のコードを書くことができる。アスペクト指向のツールを使えば、ソフトウェア開発者は、データベースの検索を行うコードに手を加えずに、ある一カ所にあるログ用機能を強化することが可能となる。こうした変更はそのアプリケーションのコード内にあって、ログを残すことが求められる他の部分にも反映される。
IBMはこれまで約2年ほど、社内のプロジェクトでアスペクト指向のソフトウェア開発手法を採用してきた。同社ではすでに10年以上にわたってこの手法の研究を進めているが、これを使うことで、プログラムの品質が大幅に改善され、プログラマがコードを書くペースも高速化したと、IBMソフトウェアグループで働くエンジニアのRobert Berryは述べている。
IBMによると、社内プロジェクトで経験したこの開発手法採用によるメリットが非常に大きなものであることから、同社ではこれを他の製品開発にも利用しようと考えているという。同社は、自社の最も人気の高いJavaプログラミングツール「WebSphere」に変更を加え、Javaプログラミング言語へ追加したアスペクト指向の機能拡張と連動させることを計画している。IBMは当初ApectJという名のプロジェクトを通じてJavaの機能拡張を開発していたが、このプロジェクトは後にEclipseに移管された。同社はいまでもこのプロジェクトに関する技術面の先導役を果たしている。
今後2年をかけて、IBMはある開発ツールを構築しようとしている。この開発ツールはAspectJ Java機能拡張と連動し、アスペクト指向のコンセプトを直接WebSpere Application Developerに組み込むものだと、Berryは述べている。
アスペクト指向のプログラミング手法に対して公にコミットすることは、IBMがこの技術の成熟度について、学術研究の段階ではなく、すでに商用アプリケーション開発に利用できるところまで進んでいると考えていることを示すものだ。商用ソフトの開発にアスペクト指向の技術を採り入れているメーカーは、いまのところIntentional SoftwareやJBoss Groupといったごく少数の企業しかない。
「我々はこれらのコンセプトが実現可能なものだと考えている。こうした開発手法を導入することで、本物の価値が得られ、また我々はさらに柔軟性を高め、プログラムの品質を向上できる可能性がある」(Berry)
アスペクト指向の開発手法が主流になるには、まずプログラマがこのテクニックや開発ツールの使い方に習熟する必要があると、アナリストらは指摘している。この点について、IBMでは「ウィザード」を用意し、開発者に対してアスペクト作成のプロセスについて学べるようにする予定だ。
「この手法を普及させるためには、ツールへのサポートが絶対に欠かせない」(Berry)
Berryによれば、今後2、3年の間に、各開発ツールがアスペクト指向技術をごく普通に統合するようになると予想しているという。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向け に編集したものです。
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