デジタルテレビのコンテンツに関して違法コピーを禁じる規則に、異議を唱える訴訟が起こされた。複数の消費者団体によって起こされたこの訴訟では、米連邦通信委員会(FCC)が著作権の領域に不当に踏み込んでいるとして、槍玉に挙げられている。
American Library Association、Consumers Union、Electronic Frontier Foundationなどの各団体を含む消費者団体の連合が、デジタルテレビの違法コピー防止を狙って昨年導入された規則をめぐり、FCCを提訴した。同団体は先週、ワシントンD.C.の米控訴裁にはじめて書類を提出し、提訴の要旨を説明した。
FCCは、この規則の導入に際して、デジタルテレビの信号を受信できる全ての機器は「broadcast flag」をサポートしていなければならないとする決定を下した。broadcast flagは、デジタルのマーカーのようなもので、ある種の著作権保護機能が追加されていなければ、番組をコピー(録画)できないようにするもの。消費者団体によれば、FCCは著作権保護の分野に踏み込んだことで、自らの責任範囲から逸脱しているという。
「FCCの動きは同委員会の管轄から外れたものだ」と、Electronic Frontier Foundationの顧問弁護士、Fred von Lohmannは述べ、「この決定をサポートする十分な根拠があるとは思わない」と付け加えた。
broadcast flagに関する論争は、PtoPネットワークを利用したファイル交換をめぐる議論ほど派手なものではない。にもかかわらず、これが従来のエンターテイメント企業がデジタルの世界へ移行するにあたって、重要な問題となっている。
Motion Picture Association of America(MPAA:全米映画協会)や各テレビ番組製作会社は、映画や他のコンテンツの完全なコピーが簡単につくれ、オンライン上で交換できてしまうとすれば、自らが著作権を保有するコンテンツをデジタルテレビに移行することは、ビジネスの面から不可能だと主張している。
FCCでは「broadcast flag」を、地上波放送のコピー防止用手段と見なしている。ケーブルテレビや衛星放送ではすでに、ユーザが受信する信号が暗号化されており、簡単にコピーできないようになっている。
昨年11月に採択されたこの規則では、2005年7月までに、全てのデジタルテレビ用機器に「broadcast flag」のサポート機能を追加しなければならないと定められている。だが、それでも違法コピーを完全に阻止することはできないだろう。アナログビデオなどへのコピーや、ある種のコピー防止機能が付いた「承認済み」の機器へのデジタルコピーは防止できない。FCCは、この規則の目的について、違法なデジタルコピーが大量に配布されるのを防止することであり、個人使用を意図したコピーを止めることではないと説明している。
これに対し、消費者団体や市民権擁護団体は、この規則が個人に認められたコンテンツの利用権を侵害しており、自分の持ち物にあってしかるべき と考えられる機能を無効にすると反論している。
FCCが自らこの決定に関する他からの異議申し立てを聴取している間、法廷での審議は一時的に保留される可能性があるが、これは意見の分かれる問題の場合にはよくあることだとFCCの関係者は説明している。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向け に編集したものです。
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