欧州議会は3月9日(現地時間)、論議を呼んでいた違法コピー防止法案を可決した。同法は、DVD偽造やオンラインでのバイアグラ密売など、著作権侵害行為の厳重な取り締まりを狙ったものだ。
大規模な営利目的の偽造取り締まりに主眼をおいた同法案に対し、各市民権擁護団体は土壇場での抗議活動を行っていた。これらのグループが懸念していたのは、音楽ファイル交換ユーザーなど一般のネットユーザーにも厳格な規定が適用される可能性がある、というものだった。
この土壇場でのロビー活動は、確かにある程度の影響を与えたが、ただしそれがどの程度のものだったかについては、今後の展開を見守る必要がある。欧州議会は、提案されていた営利目的の著作権侵害に関する規制に、修正案を付け加えたと述べている。
同議会のウェブサイトに掲載された声明には、「当議会は、主たる法律執行措置が、営利目的で行われた著作権侵害にのみ適用される必要があると規定する修正案に投票した。簡潔に言うと、これは誠実にふるまう消費者は(新しい規定に)該当しないということだ。例えば、通常は私的利用を目的に音楽をコピーする個人ユーザーには、罰則は適用されない」という。
だが、これだけでは、全ての市民活動グループの抱く不安を和らげるのに充分ではない。同議会のこの言い回しは、個人がターゲットとなる可能性を残しているというのが彼らの言い分だ。
同法が通過する過程を追跡してきた市民権擁護団体、IP Justiceのエグゼクティブディレクター、Robin Grossは、「(議会は)このような危険な指令を急いで通過させようとしたため、この内容には伝統的な市民権、公正さ、調和、釣り合いといった要素が全て欠如している」と述べている。
新しく決まった指令は、著作権と知的所有権(IP)に関わる法律の内容を、EU全体で統一することを狙ったものだ。まもなくEU加盟国が25カ国に拡大することから、現在このタスクはとりわけ重要視されている。
Business Software Allianceや国際レコード産業連盟(IFPI)などの団体は、同法にさらに刑事罰の規定を付け加えるよう働きかけていたが、今回は成功しなかった。知的所有権を擁護する各グループの統一団体は、今後も引き続きEU全体での著作権侵害に対する刑事罰の実現に向けて活動していくと述べている。
同法案には、ISPの記録を求める召喚状請求を許可する法執行機関の権限強化に加え、法廷での評決後に製品偽造者の資産を凍結させる権限など、厳しい民事罰則も含まれていた。
この法律は、2週間以内にEU各国の担当大臣の承認を得ると見られている。その後、EU加盟各国は2年以内に同法の規定を自国の法律に適用させなければならない。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向け に編集したものです。
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