プロプライエタリかオープンスタンダードか--マイクロソフトの苦悩

David Becker(CNET News.com)2004年02月16日 10時00分
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 特許を取るべきか、取らざるべきか――それがMicrosoftの問題だ。

 過去20年にわたり、知的財産を次々と生み出してきたMicrosoft。これまでに取得した米国特許の数は3000件を超える。その一方で、同社を含むハイテク大手は、Webサービス市場などを拡大する手段として、オープンスタンダードの採用にも積極的に取り組んできた。つまり、標準の普及とプロプライエタリソフトの保護という2つの目的を同時に追求してきたのだ。

 多くのハイテク企業は、異なるコンピュータシステム間でデータをやり取りする手段として、XML(Extensible Markup Language)などの標準を採用している。XMLは構造化文書の作成やWebサービスの実現に利用される標準仕様だ。XMLの基本的な記述は公開されており、誰でも自由に利用することができる。しかし、Microsoftらが開発しているXMLベースのソフトウェアはそうではない。XMLデータの処理方法に関する特許は、取得済みのものにしろ申請中のものにしろ、増加の一途をたどっている。

 先月も、MicrosoftはXMLに関する特許を欧州やその他の地域で申請した。今回申請されたのは、圧倒的なシェアを持つWordでXML文書を作成する方法に関するものだ。アナリストや競合他社は、同社が特許を盾にライバルを市場から締め出そうとしていると主張するが、Microsoftは自社の知的財産を守るための措置だと反論している。

 その一方で、MicrosoftはOffice 2003で使用している独自のXMLスキーマの公開に応じている。

 調査会社Red MonkのアナリストStephen O'Gradyは、Microsoftの行動はハイテク企業のジレンマを表しているという。研究開発の成果を利益に結びつけたいが、標準ベースの技術を広め、相互運用性を実現するためには、ある程度自由に利用できるようにしなければならない。

 Microsoftのような本質的にプロプライエタリな企業は、オープン化と自社技術の保護という矛盾を抱えているとO'Gradyはいう。「両者のバランスを取るのは難しい。製品を市場に定着させるためには、その製品や仕様を支持してくれる大きなコミュニティが必要だ。しかし、自社の利益も守らなければならない」

 特にMicrosoftの場合は、排他的な態度を取っていると思われないよう、ライセンスのルールを慎重に定める必要があるとO'Gradyはいう。米国での独禁法訴訟は比較的穏やかな判決が下されているが、Microsoftはこのほかにも、競争阻害行為に対する訴えを数多く起こされている。欧州委員会(EC)はまもなく、Windows Media Playerに対する優遇措置を罰する決定を下す予定だし、RealNetworksも同じような内容で、10億ドルの賠償支払いを求める独禁法訴訟を起こしている。

 「特許を取ったからといって、Microsoftを責めることはできない。自社の技術が盗用されたり、不正流用されたりすることがないように、あらかじめ手を打とうとするのは当然だ。問題はその使い方にある。Microsoftが競合を締め出すために特許を使うなら、将来に禍根を残すことになるだろう」(O’Grady)

Microsoftの知財戦略

 オープン化と保護の二兎を追うMicrosoftの戦略は、同社が知的財産を収益源とする方針を明らかにしたことで、さらに複雑なものになった。昨年Microsoftは、IBMで知的財産のライセンスプログラムを重要な財源に仕立て上げた辣腕弁護士Marshall Phelpsを雇い入れた。また、ライセンスプログラムの拡大に向けた広範な取り組みの一環として、幅広く利用されている技術のライセンス提供を開始した。

 「これまでMicrosoftは特許を収益源にしようとはせず、基本的にはタダでばらまいてきた。しかし、今は知的財産を金に換える方法を真剣に模索している」とForrester ResearchのアナリストTed Schadlerはいう。

 Microsoftの事業開発担当ディレクターDavid Kaeferは、ライセンスプログラムの拡大を決めた理由の1つとして、訴訟費用の軽減と、IT産業、特にMicrosoftが成熟期に入ったことを挙げている。

 「我々は知的財産を協調的に利用する方法を熟考した結果、今回の決定を下した。これは他社を阻止するための戦略ではない。Microsoftは企業として成熟しつつある。我々は1年前と同じ会社ではないし、特許のポートフォリオも同じではない。我々は知的財産をこれまでよりも明確に、もっと成熟した方法で扱っていかなければならない」 (Kaefer)

 ビジネスコンピューティング製品に相互運用性が求められるようになったことも、今回のライセンス計画に一石を投じているとKaeferは指摘する。「これまでは独自のやり方で製品を開発することができた。他の製品との連携を考える必要もなかった。しかし、今は何よりも相互運用性が求められている。相互運用性を実現するためにはどうすればいいのかを考え、その処置の1つとして、知的財産の提供方法を明確にしたのだ」

 しかし、ライセンスや知的財産に対するMicrosoftのアプローチは、同社がオープンスタンダードを活用し、拡張するようになったことで、さらに複雑になっているとSchadlerは指摘する。

 Microsoftはソフトウェアの普及条件である標準の策定に取り組む一方で、自社技術からも利益を得ようとしているとSchadlerはいう。「Microsoftだけではない。大手ベンダーはみな、何を無料で提供し、何を有償にするべきかを見極めようとしている。しかし、その答えは状況によっても変わるし、日ごと、週ごとにも変わる」

XML推進戦略の狙い

 Microsoft、IBM、OracleといったIT企業にとって、XMLを推進する目的は2つある。1つはビジネスにおけるXMLの価値を証明し、XMLの採用を促進すること、もう1つは他社よりも優れたXML製品を提供することだ。

 「普及度の高い標準の場合は、優れたアプリケーションやツールを開発した企業が勝つ」と調査会社Directions on MicrosoftのアナリストMatt Rosoffはいう。「MicrosoftはOfficeこそ、XMLを扱うベストツールだと考えている。そして、Webサービスにもっとも適しているのは自社のプラットフォームだと豪語している」

 調査会社Summit StrategiesのバイスプレジデントDwight Davisは、Microsoftやその競合企業にとって、XMLなどの標準はスタートラインにすぎないという。

 「当たり前のことだが、オープンスタンダードは特定の企業を利するものではない。しかし、その標準に対応した製品のなかで、自社製品がもっとも優れていると主張することはできる。結局、企業が競うのは標準ではなく、その上に乗る機能だ。どの企業も、標準に準拠した魅力的なソリューションを提供しようと必死だ」(Davis)

 問題は、技術革新がどの程度保護されるべきかを見極めることだ。もちろん、XML標準そのものは特許の対象にはならない。では、いたって凡庸なXMLベースのデータ処理方法は保護すべきなのだろうか。すべてのXML文書にそれぞれカスタマイズされたユーザーインタフェースを埋め込むといった斬新なアイディアなどはどうだろう。

 「基本的なレイヤーについては、誰もが同じルールで利用できるよう、標準化を進める必要があるだろう。しかし、このソフトウェアの上にあるレイヤーとして、相互運用性よりも独自のソリューションが重視される部分が存在する。もっとも、それがどこにあるのかはまだ分からない」(Schadler)

 Davisはこう付け加える。「これは地雷原のようなもので、ベンダーはその場所を慎重に探る必要がある。今後低層のレイヤーでは標準に関する合意がなされ、上層のレイヤーではより専門的な機能が求められることになるだろう」

有償ライセンスは悪か

 今のところ、Microsoftをはじめとするハイテク企業は、まず特許を取り、利益は後で回収するという戦略をとっているようだ。現在、米国特許商標庁にはXML関連の特許が何百件も申請されている。その多くは認可されないだろうし、認可されたとしても商品化に結びつくものはごく一部だ。

 こうした特許のほとんどは、大企業が予防措置として申請したものだとDavisはいう。「なるべく多くの特許を取ろうとするのは、自己防衛の一種だ。それに特許を取ったからといって、必ずしもロイヤリティを請求するわけではない」

 XML関連の特許の大半は、Office 2003のXMLスキーマと同様に、ロイヤリティなしでライセンス提供されるとDavisは見ている。

 「いずれMicrosoftやIBMは特許を金に変える方法を見つけるだろう。しかし、標準をビジネスに利用するつもりなら、その標準をベースにした特許にロイヤリティを課すことはできない。各社は不本意ながらも、そのことに気づいているはずだ。そうした行為は政治的に許されない」(Davis)

 Office XMLの場合は、ライセンスを無料提供する意味があった。しかし、すべてのXML関連技術がそうとは限らないとKaeferはいう。「XMLに関しては、パートナーや顧客から公開を求める声が上がっていた。公開すれば、XMLの標準化と採用を促進できるという実質的なメリットもあった。しかし、今後は分からない。重要なのは、何が顧客とパートナーのメリットになるかだ」

 Kaeferはさらに、知的財産のライセンス提供は無償・有償に関わらず、相互運用性とオープンスタンダードを促進するという。

 「無償ならともかく、ライセンスの有償提供が相互運用性の促進に役立つことはあまり知られていない。しかし、この2つの選択肢がなければ、現在のような相互運用性は実現していなかった。知的財産から利益を得る方法がないなら、企業は標準化のプロセスに協力しないだろうし、ライセンスを提供することもないだろう」

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