先週末6日に、2004年3月期の第3四半期(2003年10〜12月)連結決算の発表が出そろった。国内のボーナス商戦、海外でもクリスマス商戦と、1年のうちでも最も売上高の集中する時期だけに注目を集めていたが、いわゆるデジタル家電関連への取り組みの違いが収益の明暗を大きく分ける結果となった。
明暗が最も鮮明になったのが、松下電器産業とソニーのケースだ。松下電器が6日に発表した10〜12月期の連結決算は、売上高2兆313億円(前年同期比5%増)、営業利益709億円(同8%増)、税引き前利益830億円(同69%増)、純利益242億円(同8%増)となった。この第3四半期の主な製品の売上高をみると、PDP(プラズマ・ディスプレイ・パネル)テレビが前年同期比48%増の410億円、DVDレコーダーが同21%増の533億円と、戦略製品が着実に成長した。売上高の増加で593億円、合理化で723億円の営業利益増益要因が発生、価格低下による731億円、為替の影響による224億円の減益要因を吸収して大幅増益となった。この第3四半期の好調な結果を受けて今3月期通期の連結営業利益は、従来計画の1500億円に対して1900億円(前期1265億円)に、税引き前利益も1200億円の計画に対して1600億円(同689億円)に上方修正された。
一方、ソニーの第3四半期の連結決算は、DVDレコーダーの新製品攻勢などによりエレクトロニクス部門の売上高が復調、トータルの売上高は過去最高を更新したものの、構造改革費用の計上と製品価格の値下がり、円高による売上高、利益の目減りから、売上高2兆3234億円(前年同期比0.7%増)、営業利益1588億円(同20.4減)、税引き前利益1578億円(同21.8%減)、純利益926億円(同26.2%減)と大幅減益を強いられた。今後、第4四半期(2004年1〜3月)以降もデジタル家電関連部門である程度の拡大は期待できるものの、構造改革費用の前倒し計上とゲーム部門の研究開発負担によって利益が圧迫され続ける構図は継続しそうだ。
パイオニアは、DVDレコーダー、プラズマテレビなど、同業他社に先駆けてデジタルAV(音響・映像)機器の強化に取り組んだ成果が業績面に表れている。今3月期の第3四半期の連結業績は、前年同期比8%増収の1998億円、純利益も15%増益の91億円と2ケタ増益を達成した。今3月期通期の業績については、従来見通しを変えておらず、経常利益410億円(前期比43%増)、純利益250億円(同55%増)と連続大幅増益の見通しとなっている。プラズマテレビ、DVDレコーダーなどのデジタルAV機器が売上、利益両面でのけん引役となりつつあることが大幅増益見通しの背景だ。
また、シャープの第3四半期の連結決算は、液晶パネルとその応用製品、電子部品の好調を主因に、経常利益で前年同期比25%増益と好調な決算となった。しかし、今3月通期の業績見通しについては、従来予想の営業利益1200億円(前期比20%増)、経常利益1100億円(同34%増)を変えていない。
一方、東芝の第3四半期の営業利益は140億円と前年同期比5.7倍の伸びとなったが、半導体事業の好調、液晶の黒字転換が確認された一方で、パソコン事業は赤字に転落した。ただし前四半期比での赤字幅は縮小しており、この点で市場関係者の見方は微妙に分かれている。強気派ではメリルリンチ証券が投資判断を「買い」に引き上げている。NEC、富士通の第3四半期決算に関しては、両社共にソフトウエア事業の収益が悪化している。
ただ、デジタル家電が好調に推移している企業についても死角がないわけではない。デジタルカメラではすでに、オリンパスや富士写真フイルムが今年度の販売台数の下方修正を強いられるなど企業間格差が広がっているうえに、カメラ付き携帯電話との競争も一段と激しさが増してきそうだ。
さらに、液晶テレビ、PDPなどの薄型テレビや、DVDレコーダーなどについても、メーカー間の競争が激化すると同時に販売価格が大きく低下して採算が悪化することも考慮しなければならない。
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