これまで株式相場をリードしてきたデジタル家電関連などのハイテク株に、利益確定の売りが目立ってきた。ところが、その影に隠れてはいるものの、こうしたデジタル家電関連株よりさらに厳しい下げに見まわれているのが情報サービスセクターの銘柄だ。各社とも第3四半期(2003年4〜12月)の決算を発表すると同時に、2004年3月期通期の業績見通しを大幅に下方修正している。
NECソフトは1月26日、第3四半期(2003年4〜12月)の連結決算を発表すると同時に今3月期の連結業績見通しについて下方修正を発表した。それによると、売上高こそ前期比6.1%増の1205億円で据え置いたものの、経常利益は従来予想の82億円から47億円へと大幅な下方修正となった。同社が昨年4月の2003年3月期決算発表時に明らかにした2004年3月期の連結経常利益の見通しは100億円であったことを考えると、2度にわたる下方修正で経常利益予想は期初に比べて半分以下の水準となったことになる。
下方修正の要因についてNECソフトでは「(ユーザーの)値下げ要請は依然厳しい。不採算案件や電子政府・自治体関連の先行投資も利益を圧迫した」(広報担当)としている。ただ、準大手証券のアナリストは「上期の不採算案件発生時点ですでに、大幅な減額が想定されていた。不採算案件に関連して約6億円の追加コストが発生し、さらにはe-Japan II構想関連の開発コストの発生なども再減額修正の要因となった。問題なのは、中間決算発表時点の下方修正要因が、不採算案件の発生という一過性と判断できるものだったのに比べ、今回の下方修正はユーザーの値下げ要請や同業他社との価格競争など構造的な収益悪化によるという点にある」と指摘している。
NECソフトの株価は、昨年11月19日の安値2400円を起点に、その後順調な回復をみせ、今回の下方修正が引け後に発表された当日1月26日の高値3180円まで約2カ月間をかけて32%の上昇を達成していた。ところが、今回の下方修正を受けて株価は急落、わずか7営業日で元の2400円まで急降下している。
さらに、住商情報システムも28日に2004年3月期の連結業績見通しを発表した。従来見通しの売上高800億円が760億円へ、経常利益100億円が71億円へ、純利益54億円が39億円へとそれぞれ大幅な減額となった。同社では下方修正の理由について「企業が情報化投資に慎重な姿勢を崩しておらず、競争入札や相見積もり方式の導入で同業他社との価格引き下げ競争が激化したことが響いた。また、すでに受注済みの大型案件も、客先の事情で再検討・凍結・延期などが相次ぎ、これもマイナス材料となった」としている。
ただ、来期について同社では「今期に中断・延期されている案件が再開される見通しにあるほか、回復傾向が見える証券以外の金融や製造業向けの新規案件が活発化、トータルアウトソース統合提案の具体化などもあり、業績は回復過程に入る」と強気の見通しを示している。
しかし、外国証券のアナリストは「中長期で見れば有望銘柄としての位置付けは変わらない。しかし、受注単価下落の影響がどこまで続くか見えてこない状況では、株価は目先、調整局面を余儀なくされそうだ」としている。
このほかにも、日立ソフトウエアエンジニアリング、日本ユニシス、電通国際情報サービスなど主要な情報サービス企業の業績下方修正が相次ぎ、株価も軒並み急落している。したがって、この現象は、ほぼ横並びで期初の今期業績予想のハードルを高く掲げすぎた情報サービス業界に対し、予想以上に厳しいユーザーからの価格抑制圧力や同業の価格競争という嵐が襲っているということになりそうだ。
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