バックアップにご用心

 テクノロジーの原理というと、大胆不敵な「ムーアの法則」を思い浮かべる人が多い。しかし、IT部門の人間なら、むしろ「マーフィーの法則」に共感するのではないか。この世界では、失敗の可能性があることはたいてい失敗する。

 情報セキュリティに関する限り、これは間違いなく正しい。仕事をきちんとこなしても――ファイアウォールを設定し、アンチウイルスの署名ファイルを更新し、サーバにパッチをあてても――たった一つの小さなミスでサーバはウイルスに汚染され、システム全体をリストアするはめになる。IT部門のバックアップテープを使えば、いつでもシステムはリストアできると思うかもしれない。もう何年もテープにバックアップをとりつづけているのだ。バックアップ/リストアのプロセスも、そのための技術も盤石に違いない。

 しかし、そうは問屋がおろさない。バックアップ/リストアは相変わらず、確実とはほど遠い状態にある。

 先日、我々は200名を超えるIT担当者を対象にアンケートを実施した。その結果は眉をひそめずにはいられないものだった。回答者のほとんどはバックアップを利用できると答えたが、4人に1人は20%の確率でバックアップ作業が失敗していると答えた。これが自分の銀行、住宅ローン会社、保険会社の話でないことを祈るばかりだ。作業そのものは完了しても、37%の回答者は本当にバックアップがとれているかどうかは自信がないと答えている。過去に何度も痛い目にあっているのだろう。

 一体、何が問題なのか。簡単にいえば、バックアップとリカバリには長い時間と多くの人手がかかるということだ。しかし、1980年代のロックバンドTalking Headsの曲にもある通り、それは「昔から変わらない(same as it ever was)」

 ぞっとするのはまだ早い。エンタープライズ市場では、半数以上のIT担当者が重要データの露出(exposure)を懸念または認識している。しかも、ほぼ3人に1人はそれが巨額の収入損失または業績の悪化につながる類のものだと答えている。

 業界の専門家は仮想化やユーティリティコンピューティング、シームレスなアプリケーション統合など、絵に描いた餅のようなITコンセプトを語るが、現実にはバックアップ/リストアすらまともにできていない。ゆゆしき事態には違いないが、人・プロセス・テクノロジーの三者を正しく用いれば、この問題も改善できるはずだ。

 最初にしなければならないのは、ビジネス要件に合ったバックアップ/リストアの仕組みを構築することだ。しかし、ビジネスアプリケーションのリカバリタイムの最適値を理解しているIT担当者は少ない。

 なぜなのか。業務部門の責任者とIT部門の責任者が、顔をつき合わせてバックアップ計画を策定する手間を惜しんだからだ。一般に、こうした話はアプリケーションが使えなくなってはじめて出てくる。業務部門の責任者は頭に血が上っているので、システムのリストアに4時間もかかったら客を失い、生産性は限りなく下がり、何百万ドルもの損失が出ると断言する。業務部門はなぜ、システムが突然死を迎える前に、余裕を持って対策を講じることができないのか。少なくとも私には理解しがたい。

 IT部門もしっかりと現実を見るべきだ。バックアップという重大な任務を新米スタッフに押しつける傾向があることも、この問題の一因になっている。まずはアプリケーションごとにバックアップのプロセス、管理者のスキル、テクノロジー、ツール、測定基準を見直そう。この一次検査が終わったら、その結果をもとに問題を特定し、解決策を練り、実装し、試験し、結果を測定する。まずは電子メールからはじめるのがいいだろう。今回のアンケートでは回答者の61%が、もっとも重大で、かつサービスの停止が許されないアプリケーションを電子メールと答えている。自社のメールプロセスをすぐに見直してほしい。大規模なシステム障害が発生すれば、その被害は役員室から湾岸の倉庫まで、あらゆる場所に及ぶのだから。

 最後に一つ。テクノロジーは飛躍的に進化し、「テープ一辺倒」の時代は過去のものになった。安価なディスクドライブの登場はテクノロジーの世界を一変させ、Disk-to-Diskバックアップ、仮想テープストレージ、タイムアドレス可能なストレージといった新しいソリューションを生み出した。

 こうした領域で活躍しているのは主に新興企業だが、ユーザーは気にしていない。IT部門はこの問題にうんざりしているので、大手企業が足並みをそろえるのを待つくらいなら、目の前にある新興企業のソリューションを喜んで受け入れるだろう。

 IT部門の根本タスクであるバックアップは深刻な状況にあり、企業のすべての構成員を危険にさらしている。しかし、2004年は始まったばかりだ。この問題の解決を今年の作業目標のトップに持ってくる時間はまだある。そうしないなら、CNET News.comにアクセスしてほしい。そこにはバックアップ/リストアにまつわる失敗や法規制の遵守に関するニュースが並んでいることだろう。責任追求訴訟がはじまるのは時間の問題だ。

筆者略歴
Jon Oltsik
Enterprise Strategy Groupのシニアアナリスト

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