シャープは1月8日に恒例の年頭記者会見を開催し、社長の町田勝彦氏が液晶事業の売上高を2006年度に1兆円(2003年度比倍増)にする計画を明らかにした。これを受けて株価も上昇が加速して9日には一時1800円台を回復、昨年来高値の1833円(10月21日)に接近してきている。「液晶のシャープ」としてデジタル家電の勝ち組み街道を邁進しているかに見える同社だが、果たして本当に死角はないといえるのだろうか。
8日の記者会見で町田氏は、2004年度年の液晶事業の連結売上高目標を前年度比1.4倍の7300億円、液晶テレビの販売台数目標を同2倍の300万台と見込んでいることを明らかにした。そして、3年後の2006年度には液晶事業の連結売上高1兆円を目指していく。
この事業計画を推進するために、三重県で建設中の亀山工場が予定通り稼働し、この1月から大型液晶テレビの一貫生産を開始すると発表。さらに、需要が拡大していることから生産能力の増強を図り、8月からは同工場内に第2期生産ラインを導入する。これにより、マザーガラス(液晶回路を構築するガラスの面積)投入能力は1月稼働時の月産1万5000枚から同2万7000枚と約2倍になる。この2万7000枚は、26型ワイド液晶モジュール換算で約330万枚となり、総投資額は約1000億円に達する。
さらに、中小型液晶(システム液晶)では、携帯電話のカラー化率が2003年度の50%から2004年度は75%まで進み、需要台数が約3億9000万台と拡大することを背景に、3月から三重第3工場内にシステム液晶の第2期ラインを導入し、生産を開始する。これに伴い、システム液晶の生産能力は、携帯電話などに用いられる2型に換算して月産1220万枚になる。こうした増産で、システム液晶の売上高は、2003年度の約1000億円から2004年度は約2000億円、2005年度は約3000億円と見込んでいる。
シャープは9月中間期の決算発表時に、2004年3月期の連結業績見通しについて、従来予想の売上高2兆1500億円を2兆2500億円へ、経常利益も1000億円から1100億円へと上方修正したが、現状ではこの数値を十分クリアし、小幅ながら上乗せの可能性もありそうだ。
ただ、大型化や生産効率の向上を至上命令として、大規模投資合戦の様相を呈してきた液晶パネルビジネスの今後の競争の厳しさを指摘する声も少なくない。中堅証券のアナリストは「来年度の下期以降は、韓国、台湾をはじめとした国々で大型パネルの本格量産が一斉に立ち上がってくることから、単価の低下も予想される。さらに、大型化によるホコリの付着、短時間での液晶材の注入、大きさに対応したカラーフィルターの量産など、従来になかった問題が発生する危険性もある。また、先行している海外メーカーの実情からも、大型化による歩留まりの低下懸念があることも否定できない」としている。
継続が強いられる巨額投資に耐えられる体力と、画質など品質面での優位性、さらに生産効率の向上の三拍子が揃ってこそシャープが本当に大型液晶で世界の雄となる時が来るといえるだろう。
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