年末を目前にした東京株式市場は、日経平均株価が1万円の大台を再び割り込むなど弱含みの状態に陥っている。ところが、こうした冷え込んだ相場環境をよそに、12月は1カ月間の新規上場企業が24社というIPOラッシュでヒートアップ状態だ。そのなかで、IT関連年内最後の人気IPOとして注目を集めているのがアプリックスである。果たして同社の上場は有終の美を飾ることができるのか。
アプリックスが東証マザーズに上場するのは12月17日。同社はパソコンを含む民生用電子機器向けソフトウエアに関する技術の研究・開発を手掛けるIT関連のベンチャー企業だ。最近の家電製品は多機能化、高機能化が一段と進み、携帯電話から冷蔵庫に到るまで、そのほとんどに小型コンピュータシステムが組み込まれているが、それを動かすために必要なソフトを開発しているのが同社だ。
さらにアプリックスは、その技術を応用した製品の開発・販売、また同社製品を搭載する機器の計画、立案、設計などを支援するコンサルティングも展開している。同社の開発したソフトを導入することで、家電メーカーは製品の開発期間短縮、コスト削減、出荷後の欠陥発覚による回収などのリスクの低減が図れるわけだ。
主要事業分野としては、携帯電話やAV機器といった家電機器の組み込みソフトを開発するES(Embedded Systems)事業と、パソコン対象のソフト開発を行うCS(Consumer Software)事業の2事業があり、売上高構成比ではES事業が全体の70%以上を占めている。ES事業は今後の成長にも期待が持たれており、前12月期に市場投入した携帯電話のJava次期バージョンに対応するソフトウエア「JBlend」は、携帯電話のみならずデジタルテレビなどにも搭載され、今年9月末には同ソフト搭載機器の出荷台数が3000万台を超えた。今後もニーズに合ったソフトをタイムリーに提供することが可能な開発体制を維持するとともに、それを元にした新事業の立ち上げに努め、業績成長を図っていくという。
外国証券のIT関連のアナリストは「アプリックスの公募・売り出し価格は、8日に仮条件上限の1株135万円と決まった。この135万円で試算した今期の予想連結PERは45倍と、決して割安とはいえない。しかし、携帯電話向けのソフト開発などでの成長性を考慮すると、成長期待でかなりの割高水準まで買われる可能性もある。さらに、中長期的には家電のネットワーク化が一段と加速することから、同社の活躍場面はさらに拡大することになりそうだ」としている。同社の類似企業としては、コア、ACCESSなどがある。
なお、アプリックスの2003年12月期の連結業績は、売上高38億9200万円(前期比18%増)、経常利益7億3300万円(前比は5億5100万円の赤字)、純利益7億3100万円(同6億400万円の赤字)と、大幅な黒字転換を見込んでいる。
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